第四話 梨恵との邂逅
その日の二時間目は体育だった。
雨が降っているので、体育館でバレーボールが行われた。
クラスメイト達がチームに分かれてボールを打っている。かけ声、ボールのはじける音――屋根から聞こえてくる激しい雨音。
球技にうちこむ
スレンダーではあるが、少女にしか見えない。しかも美少女の部類だ。緋色のリボンに留められたた黒いサイドテイルが、
あれが少年ということがあるのだろうか。
だが、
やがて授業が終わった。
やや駆け足で
梨恵はそれを追い、更衣室へ這入る。
少し急ぐように
「いちごちゃん、いつも急いで着替えとらん?」
「え、そう?」
「うん。いつも早めに更衣室這入ってる。」
「いや、私はそんなふうには思わなかったけど。」
「そう。」
何も――そこまで急ぐことはないではないか。
まさかそんなことがあるわけがないとは思っている。だが、あの態度は何なのだ。何か、触れられたくない別の理由でもあるのだろうか。
梨恵もまた着替え終わり、更衣室を出た。
教室へ向かい、渡り廊下を歩いていた時だ。
何者かから声をかけられた。
「
梨恵は顔を上げる。
見知らぬ教師がそこにはいた。口元に引かれた紅が大人びて見える。その姿は、かつて噂で聞いた女教師のイメージを連想させた。
「――はい?」
そして、「彼女」は――山吹は――そっと耳打ちをする。
「上原いちごさんをあまり疑わないように。日曜の午後に貴女が部屋でやったことは、データから消しておいたから。」
――日曜の午後にやっていたこと。
データとは何のことだ。
山吹は、一枚の小さな紙を梨恵に渡す。
「絶対に誰にも見られないようにね。」
それだけ言うと、颯爽と去っていった。
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