第2話 百巡目のデッドエンド その1

 断続的に地震が起きていた。

 平地林の、木々の葉を散らす不協和音が否応なく緊張を高めてくる。わたしは下草を踏みしめ、腰をやや屈めた体勢で揺れに耐えていた。


 くそったれ。思わず地の自分を表層化させてしまう。

 年頃の少女としての、自らを取り繕う余裕などないのだった。


 また、揺れた。

 天を衝く巨人が大金槌で大地を打ち据える、そんな衝撃が。


 一体これで何度目なのかもう覚えていない。


 先ほど受けた地震の震度は四か五だろう。

 落ちてきた葉が、するりと首筋に滑り込んできた。しかしわたしはそのままにした。九月の残暑ではない、嫌な汗が全身を覆うのを感じていた。


 ここは奈良県葛城市、万葉集にも出てくる金剛山地北部の二上山そのお膝元。

 私立桐生学園、日本ミスカトニック大学付属、ミスカトニック高等学校が――


 


 いや、わたしはその学園の生徒ではないので、断言まではしない。

 だが、しかし地域住民としての記憶のうちに、この場所が『そこ』であることを知っているのだった。


 視界には、限りなく平地林の広がる、得体の知れない未開の地。

 仮にGPSが使えるとして、地理的に表すなら、奈良県葛城市と同一の場所。

 あるはずの学園が存在せず、代わりに、全面に林が延々と続いている。


 だが、今は。

 今は!


 そんなものに目を向けることこそ無意味だった。


 脂汗がダラダラと流れ落ちる。単純に、暑いからであればどれほど良かったか。

 この、嫌な汗の正体は、純粋な恐怖による、身体の本能的反応だった。





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