番外編:人民委員会本会議場女子会
【27.覚悟を決めた女は強い】の直後、リント視点のお話です。
*)虫が苦手な方は御注意ください。
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会議前、ユッティが一方的に宣言したように、昼過ぎから応接広間は人間男性の出入り禁止となった。
リントとメルル、ウルリッヒが床に寝転んでいる。
「……なぜ、私が呼ばれているんです? 皆さんだけで、ゆっくりされれば良いでしょうに」
「そりゃあもちろん、あんたに、はっきり言っておきたいことがあるからよ!」
ユッティが
「この子を
「おっしゃる意味が、わかりません」
ティシャが、軽く
「
「そういう問題じゃないのよ! ジゼルも、なんか言ってやんなさい! 父親が、あたし以外の女に取られそうになってるのよ!」
「……ますます、意味がわかりません」
ひとしきり騒ぐユッティを
でんぷんを
ただ、
「まあ、先生の
ジゼルが謝罪して、父親の名前とユッティの関係を、かいつまんで説明する。ティシャが、少し意外そうな顔をした。
「
「ええ。現在は、そのようです」
「ちょっと! 本人を抜かして、適当に話を進めないでよ!」
「そ、そうですよ、ジゼル様。エトヴァルト様にだって、まだ望みは……」
「マリリちゃんっ? 余計なこと言わないのよっ?」
ユッティがやや慌てて、
ジゼルが、ふと思い出したように、
「そう言えば、今まであまり気にしていませんでしたが、先生の
「や、やめてよ。なに掘り下げる気?」
「少なくともお父さまが亡くなった時、先生は24歳で、48歳のお父さまとはちょうど倍の差ですよね」
「ユ、ユッティ様……?」
「いいじゃないの!
「おじさまとも、おつき合いされていた時期は存じませんが、計算すると14歳差です。先生が20歳以前と考えると、これは相当な年上好みに思っておりました」
「貴族社会じゃ珍しくないの! 金持ちのおっさんが、扱いやすい小娘たぶらかしたり
ティシャが
「私も先ほど、それを不思議に思いました。ニジュカ=シンガ様は、弟が聞いた話ですが、覚えている時から二十年くらい、とのことです」
「まあ、奴隷だったって聞いてるけど……それにしても、馬鹿っぽい数え方ね、あいつ」
「でも、それでしたら、むしろ年下ですよね? エトヴァルト様は、ええと……今、26歳のはずですから、大体同じでしょうか」
「ええ。これは、実に興味深い可能性が出てきました。ニジュカ様が、大変良い仕事をなさいましたね」
「あんたら……好き勝手言ってくれるわね、もう」
ユッティが
「それで、ここまでいじってくれたからには、自分達がいじられる覚悟もしてるんでしょうね?」
「そう言われましても……私には別に、
「今のところ、七、八人くらいは
「正確に数えてはいませんが、そんなものですね」
「で、どんな感じよ?」
「身体だけと言っても、いろいろな個性がございましたが……やはり、思い入れでしょうか。最初のお方が、一番、
ティシャがなにやら、
「マリリちゃんだって、
「し、知りませんよ、あんな奴のことなんか……!」
「……お兄さん、ですか?」
「そう。婚約してるのよ、この
「ユッティ様、そんな、
「大丈夫?
「心配無用です。とてもきれいで、
「ジ、ジゼル様まで、そんな……は、恥ずかしいですっ!」
ティシャが、初めて
勝ち誇った顔のユッティが、豊かな胸を張る。
「どうよ? とりあえず男だけを相手に、浮気もしてないんだから、あたしが一番まっとうでしょ!
「意外と、返す言葉がありませんね」
「はい……自分を、
「皆さん、御経験が豊富なようで、
心底どうでも良さそうに、ティシャがため息をついた。
「まあ、経験で言ったら、ネクシャラさんには全然かなわないけどね。今さらだけど、どうせならネクシャラさんにも来てもらえば良かったかしら。マリリちゃんと、ついでにカザフーも喜んだろうし」
「そんなこと、ない……わけでは、ない……ですが……」
「マリリはともかく、あの
ジゼルの口の
本人が言うところの複合的な
ふと、ティシャが
「先ほどもお名前が出ていましたが……その、ネクシャラ様というのは、どのような方なのですか?」
ジゼルとマリリが、目を見合わせる。二人がなにを言うより早く、ユッティが口を
「ペルジャハルの旅芸人の座長で、夜のお仕事もしてる美人さんよ。カザフーも、あんなしかめっ
ティシャが、
なかなかの光景に、ジゼル達が
「そうですか……。まあ、そういうことも……あるのでしょうね……」
少し離れて、ジゼル達が顔を寄せ集めた。
「ねえ……どう思う? あれ……」
「どう、と言われましても……他に考えようが……」
「あ、あり得ませんよ! おかしいですよ、絶対!」
マリリが、器用に小声で叫ぶ。
もう一度、三人そろって、こっそりティシャの顔をのぞき見る。
「あたしが言うのもなんだけど、どうしてクロっちや
「可能性、としましては……お
「だとしても、こじらせ方が
好き勝手にささやく三人を見もせずに、残った
珍しく三人ともが
「少し仕事を思い出しました。下がらせてもらって、よろしいでしょうか?」
質問のような形だが、答えなど聞いてもいない。
「ウルリッヒ」
昼寝していたウルリッヒが、呼ばれて起きるや、忠実な従者のようにつき従う。
応接広間を出て行く一人と一匹を見送って、また三人が顔を見合わせた。
「あれ……放っといても良い、のよね……?」
「まあ、お
「ええと……ウルリッヒが、
リントとメルルは、半分ほど目を開いたが、すぐに昼寝に戻った。いい加減、こんな状況には慣れたものだった。
なんとなしに、ジゼルもマリリも、ユッティまでが言葉少なに、残された
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本編の引きがシリアスでも、やっぱりやります。
誰が待っているのかわかりませんが、恒例の下ネタ全振り番外編です。
楽しいです。
ユッティの年齢差ネタは、いつか突っ込まなければ、と思っていました。
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