番外編:居残り者の好機
【13.泡沫の夢にございます】の直後、リント視点のお話です。
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シュトレムキントの格納庫で、ヤハクィーネが最終調整を終えた。
想定される戦場は、
それぞれ
「二人とも、めかし込んでいますね。素敵です」
まだ、
「バララエフ様とお食事とうかがっておりましたので、遅くなられるかと思っていましたわ」
「あと一言多ければ、抜きましたね。見切りの達者な
「状況はどうなっていますか」
「ラークジャートは
「男性同士のことは、最後までお任せして、見極めるしかありませんね。先生の方はいかがでしょう」
「先ほど、ニジュカからの
「……それはまた、興味深い状況ですね。
「理解が難しいが、状態は近い。ネクシャラから
「……それもまた、興味深い状況ですね。他人をとやかく言える立場ではありませんが、なんだか、のけ者にされた気分です」
ジゼルの口の
「ジゼリエル様。それならば、と言うのも
「なんでしょうか」
「シュトレムキントの外部端末に、私の身体を御使用頂いていることは、お話ししたと思います。あの身体の本来の意識は私と同化していますが、より強い
「リントとは、少し状態が異なるようだな」
「はい。何体か試行して、
ヤハクィーネの言葉の
共通した無表情と不自然に無駄のない動きから、ヤハクィーネ自身であることがわかる。これを集団で見ている整備兵達は、いささか気の毒だった。
五人とも30歳を超えるかどうか、
ジゼルが口元を手で隠して、なにやら良からぬ目になった。
「ヤハクィーネ様。あの、もしかして……」
「ユーディットから聞き取りましたジゼリエル様の
「むしろ印象通りで、なんの問題もありません。奴隷売買と言うか、
「文脈が理解できないが」
「お喜び頂けて嬉しいですわ。病気がなく健康であること、機能が正常であることも、事前確認しております。それだけに、相互管理はお忘れなきようお願いします」
「重要ですね」
「よろしければ、順に試用なされても結構ですわ。持論になりますが、体臭や肌触りなどで、ある程度の相性は認識できるものかと」
「
ジゼルが、
「あなたの御意見はいかがですか」
「繰り返すが、文脈が理解できない」
「なんですか。言わせたいんですか。仕様がありませんね」
こほん、と
「シュシュを見たでしょう。あなたの、新しい外部端末を選考しているのですよ。いずれ手合わせを重ねて、戦闘人員としての行動も期待します」
「理解した」
リントがいないので、とりあえず光学情報を確認する。
「外観を基準とするなら、筋肉はともかく、骨格強度は成人後の
「
「正しい認識だ。
「
「それでは、今夜のところは、こちらの身体を提供致しますわ。同調は、機体に触れればよろしいのでしょうか?」
「充分だ。こちらで調整する」
指定した黄色人種の男の手が、リベルギントに触れる。生体情報を読み取り、思考信号、視覚を始めとする感覚信号を同調させる。
本体、リント、ヴィルシャに加えて同時制御は情報処理の負荷が大きいが、幸い、リントとヴィルシャは就寝している。
機体も待機状態として、男との情報連結を主軸にする。正面、視線を少し下げた位置にジゼルを見た。
生体機能の
行動の全てを自分で指示するところが、リントの場合と異なっている。なるほど、ヤハクィーネやシュシュの無表情が理解できた。
「同調は完了した。管理制御に問題はないが、人間として自然な反応を示すには、習熟と経験が必要と考える。ジゼル、指導を頼む」
「
「文脈が理解できないが」
「それでは、私はこれにて失礼致しますわ。
「お
これだけ文脈の主語と述語と目的語が抜け落ちていて、どうやら意思の
将来的に独立行動が期待されているのだから、習熟に努力しなければならない。考えてみればユッティからも、よっぽどの努力が必要、と言われていた。
四人の船員と共にヤハクィーネが退出し、格納庫にはジゼルと二人になる。
正確にはメルデキントも待機しているが、積極的に発信するでもない。ジゼルが、
「こうして人間として向き合うと、名前を呼びたくなりますね。リントとは区別しましょう。希望があれば言ってください」
「では、ベルグと名乗ろう」
「立派な名前ですね」
「リベルギントからリントを差し引いた残りだ」
「なるほど」
ジゼルが笑って、手を握ってきた。人間の皮膚で感じる
「それでは部屋に参りましょう、ベルグ。私も一日活動しましたので、まずは汗を流したいですね」
「同意しよう。フェルネラント帝国人の風習として、入浴の重要性は理解している」
「本来男女は別ですが、この際、一緒に済ませましょう。身体を洗って差し上げますよ」
「必要ないが」
「そう遠慮なさらず。正直に言って、いろいろと確認してみたいのです」
「了解した」
文脈の理解は、もう
メルデキントの方から、ため息のようなものを感知した。恐らく背景誤差だろう。
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前作の第二章:番外編からの遠大な伏線回収、ハーレム爆誕です。
少しの照れもなく、ほくほくしているジゼルに、ヒロインとしてそれもどうなのか、と思わないでもないですが……。
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