第3話
そんな俺が、2月14日の日、登校すると
異変が起きてた。
ユーマが僕の背後から、
「おっはよ!シンジ!って、おまえ、それ、、」
下駄箱のなかを指差して、ユーマがわなわなと震えていた。
「ち、チョコじゃないのか!?
しかも、それ、市販のやつじゃなくて、
手作りチョコなんじゃないか!?」
「いやまさか、僕にチョコくれる女子がいるとは思えないよ。きっと何かの間違いさ...。
それか、僕への嫌がらせの釘入りチョコとかだよ」
「おまえな、漫画の見過ぎじゃないか。
そんな異物混入のチョコが身近にあったら
怖いだろ。とにかく、誰からだよ?
見てみろよ!はやく!」
「う、うん」
おそるおそる取り出すと、ピンク色の袋に
メッセージカードなるものが貼り付けてあった。
「シンジくんへ。林ユーコより...だって」
ユーマが一歩も二歩も後ずさった。
「ま、マジか...!?」
「やっぱり、おまえそれ、何かの間違いだろ」
「そうだよね。これ、もう一人の山吹くんへ
渡るべきチョコだよね」
そんなことを言ってたら、
主人公様が登場した。
もう一人の山吹シンジだった。
「お、陰キャくん。よく分かってんじゃねーか、自分の立ち位置をよ」
「つまりな、そのチョコは林ユーコが入れ間違えたんだ。本来は俺の下駄箱に
入るべきチョコが、俺と同性同名のおまえの下駄箱に誤って入っちまったと考えるのが自然だろ」
「うん、そうだよね...」
「寄越せ」
「え」
目線を下に落としてたら、山吹くんが、
チョコを奪い取った。
「あ、ちょっ....」
手を伸ばしたが、遅かった。
チョコは二度ほど宙を舞い、それから山吹くんの手で二度ばかりキャッチされた。
「じゃな...!!」
このあと、だ。
ドォン...!!
山吹くんが、誰かにぶつかってよろけた。
「ってぇ!なんだよ、俺の進路を塞ぐなよな、バカ!!」
「バカ、はこっちのセリフ!!
ちょっと山吹くん!チョコドロボー、してんじゃないのよ!」
「な...!?」
山吹くんがぶつかったのは林ユーコだった。
仁王立ちで林ユーコが続けた。
「チョコを入れる下駄箱を間違えた??
はぁ?自分に都合のいい解釈してんじゃないわよ!私はね、間違えてないのよ!
あんたじゃなくて、あんたの背後にいるシンジくんにチョコをあげたのよ!!」
「へ?」
「待て待て待て。どこに惚れた?
惚れるなら俺だろ?お金持ちだし、運動神経抜群だし、頭いいし!!」
「バカね。シンジくんと私とユーマくんは小学四年のとき同じクラスでね!シンジくんは、昔、私がふくよかで外見いじられたときに、性格の悪い女子グループの女子ボスに立ち向かって行って、そいつに頭突きを喰らわして先生に怒られたのよ!!」
俺はユーマと顔を見合わせた。
ユーマが、
「小四のとき同じクラス??俺ら三人??」と不思議顔だったが。
俺は思い出してた。
女子ボス頭突き事件。
確か、小四の春のこと。
俺は、転入生の体型を面白がる女子に頭にきて、
勢い余って頭突きを喰らわしていた。
俺は昔、今よか、太っていたから、
まるで自分が揶揄われたかのように感じて、
気が付けば、女子ボスに突進していた。
この事件後。
親の転勤が多い転入生はどっかまた転校してしまったが。
彼女の名前は、確かユーコだった。
苗字は確か山野井。
「山野井ユーコ!!」
ユーマも思い出したらしい。
ユーコに向かって叫んでた。
「うん、そう。痩せて昔の面影はなくなったけどさ。父親が再婚して名字は変わったの。
山野井から林、にね!」
「まさか、高校一年生でシンジくんやユーマくんに再会できるなんて、
思ってもみなかった。小学校の同窓会で
会ったら告白しようと思ってたけど。
随分と想いを伝えるのが早まったわ!」
「とゆーわけで」
林ユーコは、もうひとりの山吹シンジから
チョコを取り返した。
「受け取ってくれる?これ、手作りチョコ。
私の気持ち」
俺は、ガクンと膝が落ちかけた。
でも、なんとか、踏ん張って、
「ああ。ありがとう」と
その手作りチョコを受け取ったんだ。
ちらりと、主人公様を見たら、
滅茶苦茶悔しそうな顔してた。
まさか、陰キャに負けるとか。
つゆほども思ったことないんだと思う!
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