第15話 依里子、朝食づくりに奮闘する
遠くで何か音がする。うるっさいなあ、なに、この音は―。
断続的に聞こえてくる音から逃れるように寝返りを打ち、さらにしっかりと布団を抱え込んだところで、その音は、不意に激しさを変える。依里子はびくりとして目を開き、その音の正体に気付いて愕然となった。
「マジか」
それは、自分がセットした目覚ましのアラーム。不意に激しさを変えた音は、これ以上寝たら後が無いことを告げるモードのそれであった。つまり今、自分は寝坊して失敗するかどうかの瀬戸際にいる―。うーみん、予言者かよ!
慌てて起き上がろうとして、体が思うように動かないことに気がつく。
「マジか」
この感覚には、覚えがある。本当に来た。筋肉痛だ…。
あの全身運動と見紛う掃除をした後に、そんな予感はしていた。終わったときには腕がだるく腰がばっきばきに凝っていた。ああ、あれで肉体的にかなり疲れて、加えて、昨夜のチャットと朝食のための下調べ。なんやかんやで、寝た(というか、寝落ちした)のが3時近かったんだった…。って、こうしちゃいられない!!
***
「あたたたた…」
痛む体を叱咤しつつどうにかこうにか起き上がり、身支度をして台所に向かう。
2本の重たい棒のような両腕を使っての調理は、結構な重労働となった。
でも、ここはびしっと決めなければ。和食? 気が利いているわ、こんなきちんとした朝食の用意ができるなんてすごいわ、私が教えることなんて何も無いわ、朝食は全部任せて安心ね―そうやって、ばあさんが認める範囲をだんだん増やしていって、この家の主導権を握れば、いろいろやりやすくなるってもんよ。
「まずは、ご飯をセットして。それから味噌汁用の出汁ね」
うーみんのアドバイスに感謝! エプロンをして、戸棚の扉を開いた。
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