第87話 談笑。
「いたた」
道中に拾っていた木の枝で作った焚火を前にアレンは頬に痛みを感じて擦る。
「ほんと何があったのよ?」
「いやー……」
心配そうな表情でリナリーがアレンの肩に手を置いて問いかける。対してアレンは表情を曇らせて言葉を濁した。
「アレンもスービアに何かされたの?」
「アレンが悪いんだぜ!」
リナリーの問いかけに、アレンではなくスービアが答える。スービアはまだ機嫌が完全に治っていないのか、少しむくれながら会話に口を挟んできた。
「そうなの? アレンが何かやったの?」
「んー……よくよく考えると何も」
リナリーの問いかけに、アレンは自分のしたことを思い返したようだ。
思い返してみて自分の非が分からなかったのか、首を傾げる。
「突然、あんなことをやっておいてよく言うぜ!」
まだ機嫌の直っていないスービアが再び声を上げて口を挟む。そして、そっぽを向いた。
「……アレン? あんなことって何?」
アレンに問いかけたリナリーの声から一、二度ほど温度が失われていた。
「俺はスービアを真似しただけなのに……」
「そ、そうだけどよ」
「それにスービアがもっと強引にやった方が良いって言ったから」
「だけど、事前に相談ってもんが必要だぜ」
「それじゃ、強引じゃないじゃん」
スービアとアレンの会話聞いて、訳が分からないと言った風に困惑し首を傾げた。
「どういうことよ」
「あのよー、焚火を調理に使うから少し離れてくれるか?」
串に刺さった肉や野菜を大量に持ったホップが現れたところで、会話が一旦終わった。
「おう、この肉柔らかくて……このタレもうまいぜ」
「美味しい……」
スービアとリナリーが串に刺さった肉や野菜を食べながら、料理が美味しいと口々に言っていた。
「な、ホップの料理の腕はなかなかのもんだろ? あ、むにゃむにゃ」
アレンも手に持っている串に刺さった肉にかぶり付く。
「そんな褒めても何も出てこないからな。この焼けた野菜も甘くなっていると思うぜ」
褒められている当のホップと言うと照れた表情で野菜の刺さった串を手に取ってアレン達に勧めていた。
「本当に美味しいわ、こんな設備がない場所でよく……アレンが最初、料理が美味いから連れて来たって聞いた時は頭がおかしくなったかなって本当に心配してけど」
「リナリー、何気に失礼なことを言う」
リナリーの言いように、ムッとした表情でアレンが木のコップに注がれた水を一口飲んだ。
「ごめんなさい。やっぱり考えが甘かったわね」
「……」
「魔物の領域でクエストをこなすにはもう少し人がいるわね。襲ってくる魔物が多いから大変だもの」
「最低でも四人、いや五人は欲しいところだなぁ。ほんと大変だし」
「そう。五人……じゃ、あと二人は必要なのね」
「アレ? もう頭数に入れられている?」とホップがボソッと呟いたのを流して、アレンはリナリーにニヤリと笑って見せた。
「しかし、リナリーに人を見る目があるのかな? それに掛かっているけど……大丈夫かな?」
「う……できるわよ」
「そうか、変なヤツを連れて来られても困るからね?」
「……」
「ちなみにリナリーには冒険者で友達とか居ないのか?」
「いるじゃない。アレンが」
「いや、俺以外ね」
「……む、じゃ、アレンにはいるの?」
「いるじゃん。そこにホップが」
「ぬぬ……いやいや、昨日知り合ったばかりじゃない」
「まぁ、そうだけど、ゼロとイチはだいぶ違うと思うけど」
リナリーとアレンの会話を食事しながら聞いていた、スービアが愉快に笑った。
「カカ……どっちもどっちだと思うぜ。まぁ、リナリーとは俺が仲良くしてやってもいいぜ」
「それは間に合っているわ」
スービアの提案に対して、リナリーはフイッと顔を背けて素っ気ない態度を取った。
「やっぱり、リナリーはつれねーなぁ」
「ハハ」
アレンが笑う。それにつられるようにホップも笑い出した。そして、リナリーもスービアも笑い出して、それから談笑しつつ食事したのだった。
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