第71話 ホソード・ファン・ガラード侯爵。

 ここはサンチェスト王国の宰相であるホソード・ファン・ガラード侯爵の屋敷の地下に造られた秘密部屋。


「うむ……この紅茶はなかなか」


 その秘密部屋ではホソードが一人、ソファに座ってティーカップに入っていた紅茶を楽しんでいた。


「ケシケシ……それにしても人間とは扱いやすい動物ですね……おっと」


 ホソードが不意に笑うと、顔が不自然ほどに歪んで口元がビリビリと裂けてしまう。


 口元の裂けた目からは黒い肌が覗いて見えた。


 ティーカップを近くにあったローテーブルに置くと、裂けてしまった口元を手で押さえた。


「おっと、しまったな。この皮は大事に着ていようと思っていたのに……」


 口元を押さえていたホソードの手の平から黒い霧が現れる。


 その黒い霧で裂けていた部分に触れると修復されて元のホソードの顔へと戻った。


「ケシケシ、フレンリーが言うにはサンチェスト王国……いやここら辺一帯の国は火龍魔法兵団さえ潰せば……すぐにでも押し潰すことができるということでしたな」


 ホソードは再びティーカップを手に取って、紅茶を一口飲んだ。


 そして、ティーカップの近くにあったローテーブルに置くと、同じくローテーブルに置いてあった紙がまとめられた資料を手に取って、視線を落とした。


「それにしてもサンチェスト王国に比べ国土や兵の規模が三倍あると言われる帝国の侵攻を百人足らずの兵団がすべて止めていたと言うのは信じがたいところではありますね」


 資料に書かれていたある項目を目にしてホソードの目つきが鋭くなった。


「そう、アレンは我が友を殺したカーベル・スターリングの部下だったのですか……であるのなら、惜しいことをしました。私が直接殺したかったですね」


 ホソードは資料を捲って、興味深げに資料を読んでいった。


「彼は本当に国民の英雄となっていたんですね。あぁ、ベロウスのブタさんは身分や種族だと言っていましたが、結局は英雄に嫉妬したのでしょうか? なんとも滑稽ですね。ブタさんは逆立ちしても英雄にはなれないと言うのに……まぁ、ブタさんのことなんかより英雄を捨てた国がどのようになるのか」


 ホソードは口元を歪めて笑う。


 そして資料を投げるとその資料は黒い煙に包まれて消えてしまった。


「ケシケシケシ、人がいっぱい……いっぱい死んでくれるといいですね……そして、魔王……ロブルア様の復活もケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシケシ」






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