第41話 クリスト王国。
ルーシーの言う通り、ルーシーを送り届けたフーシ村から歩いて三十分もしないところに、リンベルクの街があった。
リンベルクの街は山と森の間に隠れるようにある。
高さ八メートルの防壁に囲まれているので全容は分かりにくいが、都市と言って良い規模の街であった。
ただ、国の首都……王都と言われると、小さいと規模だと思われる。
アレンはリンベルクの街の入り口へと近づく。
すると、そこには門番の兵士が居てアレンへと話しかけてきた。
「坊主、どうした?」
「えっと……父さんにリンベルクの街で塩と小麦粉を買ってくるように言われて」
アレンは子供を装っているのか、言葉が少し拙い感じで門番の兵士の問いかけに答えた。
実際にこの世界では田舎に行けば行くほどに、子供の言葉の習熟度は低いのが当たり前で、門番の兵士も特に変に思っていないようだ。
アレンの作戦としては近隣の農村の子供として街に入り込もうとしていた。
「そうか、坊主……身分証明書は無さそうだな。それは冒険者ギルドか商業ギルドで作ってもらうとして……とりあえず、入街税の銅板五枚は払えるか?」
「えっと、お金ない」
「あのな。じゃ、どうやって塩と小麦粉を買おうとしているんだ? お前の父親無茶苦茶だな」
「えっと、これを売ってお金に……今日、罠で捕まえた鳥です」
アレンは紐に結んで吊るしていた五羽のガーホ鳥を門番の兵士に見えるように前に出した。
ガーホ鳥を見た瞬間、門番の兵士は目を見開いて驚きの声を上げる。
「うお? それはガーホ鳥じゃねーか。お前よく捕まえられたな……しかも、五匹。これは驚いた」
「……えっと、一羽あげるから、街に入れて?」
「お、そう来たか。んーガーホ鳥をくれるっていうなら……俺は構わないが。ガーホ鳥は売ると一匹少なくとも銅板十五枚はするんだ。さすがに、交換レートが俺に有利過ぎて申し訳ないな」
「あ……じゃ、この鳥を売れる場所まで連れていってほしい」
「んー本当にそれだけでいいのか?」
「それでいい、これ」
アレンはガーホ鳥を一羽、縄から外すと門番の兵士の目の前に突き出した。
「わかった。ちょっとそこで待っていろ」
門番の兵士が頷いてガーホ鳥を受け取ると、一旦、門の中に入っていった。
一分ほどして、再び門番の兵士がアレンの前に姿を見せると、アレンは門を通された。
門を入ってみるリンベルクの街は、高い建物が密集するように並んでいる。
そして、視線を上げると白く美しいお城が街の真ん中に鎮座していた。
その城を中心にして、街が形成されているようだった。
「すごい綺麗」
「ハハ、そうか? 確かに初めて見るなら驚くよな。あの城……あの城には俺達の王様が住んでいるんだぞ」
「へぇーそうなんだ、王様が……」
「そうだ。あ、そういや、坊主名前は?」
「アレン」
「アレンか。俺はゴードだ。それでどうする? 冒険者ギルドか商業ギルドで身分証を発行してもらわなきゃなんだが、どちらがいい? あ、ガーホ鳥の買い取りを頼むなら冒険者ギルドの方が都合がいいか?」
「冒険者……うん、そうだね」
「わかった。まぁ、塩と小麦粉を買うだけなら関係ないだろうが、冒険者ギルド会館に付くまで街の中を案内してやるよ」
「ありがとう」
「あそこの武器屋と防具屋はなかなかいい品揃えだ。それから、あそこの宿屋は安くて、出てくる料理が美味い。あそこのでっかい建物が図書館な。それで、あそこの食堂だ。料理もうまいが、ルシャナというそれは凄い綺麗な……ってこれはアレンには早いか。じゃ次は……」
アレンは門番の兵士……ゴードが街中を案内してくれながら、冒険者ギルド会館と言うところに連れて行ってくれた。
「ここが冒険者ギルド会館だ」
「大きい……」
「そうだな。じゃ、俺の案内はここまでかな? あとは冒険者ギルド会館に入ってまっすぐ進んだところのカウンターに座っている姉ちゃんに話を聞いて、身分証明になる冒険者ギルドのカードを作って。それから、そのガーホ鳥を売るんだよな。値切られるなよ。ガーホ鳥は最低で銅板十五枚だからな。高いと銅板十八枚はするから」
「ありがとう」
「おう! こっちこそ! ガーホ鳥ありがとな!」
アレンが礼を言うと、ゴードは軽快な笑みを浮かべながら去っていった。
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