第42話 冒険者ギルド。
アレンはゴードに言われた通り、冒険者ギルド会館に入るとまっすぐ進んでカウンターへと向かった。
カウンターには妙齢の女性……お姉さんというにはなんか違う女性が座っていた。
一見、アレンは子供に見えるが、中身は結構いろいろ経験を重ねた大人である。
もちろん、こういう場合なんといえばいいのか、すぐにわかる。
「あのお姉さん。聞いてもいい?」
「なぁに、何でも聞いて?」
妙齢の女性はお姉さんと呼ばれたのがよほど嬉しかったのか、上機嫌でほほ笑んだ。
「えっと、お姉さん」
「うんん、お姉さんがなんでも答えるよ? ゆっくりでいいから教えて?」
「うん、ありがとう。優しいお姉さん」
「やさ……もう、照れるじゃない」
「えっとね。お姉さん。今日は冒険者ギルドのカードっていうヤツを作って……ここで、この鳥を売れる? ……そのやり方を教えてくれる?」
「わかったわ。ギルドカードね。……ってガーホ鳥ね? その鳥……もしかして、僕が捕まえたの?」
「うん。罠を仕掛けたら、捕まえられたんだ」
「そうなの。安心して、お姉さんがちゃんと高く買い取るように言っておくから、一羽銅板二十枚は出せるわ」
「高く? ありがとう、父さんに頼まれた。塩と小麦がいっぱい買えるかな?」
「ふふ、おつかい、偉いわね。じゃ、さっそくギルドカードを作ろうと思うんだけど。貴方……文字は書ける?」
「えっと、字はあんまり書けないんだ」
「そうね。字が書けない人は結構いるから気にしないで……名前だけ教えてくれるかな? 自分の名前は分かる?」
「自分の名前は分かる。アレンだよ」
「そう、アレンね。あと年齢は分かるかな?」
「うん、十二歳になったよ」
「そうなのね。わかったわ」
妙齢の女性は銀色のプレートを取り出して、アレンの目の前に置く。
その銀のプレートの中央には透明な石が埋め込まれている不思議なカードだった。
アレンは興味深げに銀のプレートを覗き込んだ。
んーサンチェスト王国の冒険者ギルドではこんなカードは作らなかったはずだが……?
何か魔導具的効果のあるカードなのだろうか?
銀のプレートに興味が湧いたアレンは妙齢の女性へと視線は向けて、銀のプレートを指さしながら問いかけた。
「お姉さん。これはなに?」
「これが冒険者の持つギルドカードよ。冒険者としての証明書になると同時に、どんなクエストに挑戦してきたかとか、クエストの依頼人からの評価とか、どんなものいつどれくらい売り買いしたか登録して管理するためのものよ」
「へぇ、そうなんだ」
登録して管理……。
アレだな。火龍魔法兵団団長の証の個人版みたいなものかな?
あの火龍魔法兵団団長の証は団員の脱退や入隊を管理するのだったはず……。
死んじゃったりすると知らせがくる不吉な魔導具だ。
えっと、確か……他にも機能があったはずだが何だったかな?
しばらく黙って銀のプレートを見つけていたアレンに妙齢の女性が問いかけてきた。
「そんなに珍しい?」
「あ、うん。初めて見たよ。なんかよく分からないけどすごいんだね」
「ふふ、それでね。今からアレンの情報を登録するために、銀のプレートの中央にある透明な石に向かって血を一滴垂らしてくれる?」
「血を?」
「そうよ。ちょっと痛いけど」
「大丈夫だよ。カリ……」
アレンは自身の親指をカリッと噛んで血を流すと、銀のプレートの中央に埋め込まれた透明な石に血を一滴垂らした。
「自分の指を噛むなんて……痛いでしょう? 針を貸したのに」
「あ……そうなんだ。けど、すぐに治るから大丈夫だよ」
「大丈夫ならいいんだけど。 じゃ……私は登録作業をするから、貴方はちょっと待っててくれる? いや、それより、貴方から見て左の方に買い取りする場所があるから、そこでガーホ鳥の鑑定を先にしてもらったら? ギルドカードは今作っているって伝えればやってくれるわ」
「うん、ありがとう。お姉さん」
邪気のない笑顔を浮かべたアレンは妙齢の女性に頭を下げて、その場を離れる。
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