第37話 修行。

 地下通路の先で見つけた青い屋根の屋敷でアレン達が暮らし始めて三日が経った。


 青い屋根の屋敷の周囲には広い空地があって、今はそこにアレン達が集まっていた。


「さて、今日からお前らを強くするために……本格的に稽古をつけて行くが覚悟はいいか?」


「「「「はい!」」」」


 ホランド達はアレンの前に四人並んでいる。


「うむ、では最初に何をするかだが……まずは準備運動した後にランニング」


「ランニングですか?」


 ホランドが首を傾げて問いかけた。


「あぁ、ランニングだ」


 十分ほど準備運動をしていくと、アレンはホランド達に視線を向けて問いかけた。


「さて、準備はいいか?」


「「「「はい」」」」


「元気がいいな。最初はゆっくり行くかな。ちゃんと着いてくるように」


 アレン達は走り出した。



 アレン達が青い屋根の屋敷の周囲にある堀の周りを走り出して一時間後。


「ほら、ユリーナ、頑張れ」


 アレンは最後尾のユリーナに声を掛ける。もうへとへとで息も絶え絶えのユリーナはフラフラと走っていた。


「ふ、ふすん、アレンさん。もう……」


「頑張れ。今時、魔法使いも動けるようにならんと」


「そう言われても……はぁはぁ……うっぷ」


「……仕方ない。じゃあ、ちょっと休んでいろ。十分だぞ?」


「……わかった」




 走り出して一時間半後。


「ほら。リン、頑張れ」


「はぁ、はぁ」


 アレンが声を掛けるも息も絶え絶えのリンは返事することもできずにいた。


「もう少し早く走らないと走っていることにならんぞ?」


「限界……」


「踏ん張れ」


「無理……」


「仕方ない。休んでいいぞ。十分だけな」


「う……わかった」






 走り出して一時間五十分後。


「ホランドにノックス、頑張れ」


「もう……」


「ダメッス」


 ホランドもノックスも、汗だくでもうフラフラだった。アレンは懐から古びた懐中時計を取り出して、時間を確かめる。


 ちなみに古びた懐中時計は屋敷の中を捜索した時に見つけたものであった。


「男の子だろう。もう少し。あと十分くらいだ。頑張れ」


「うっぷ」


「はぁはぁ……まだ十分ッスか」


「まだランニングしかしてないから、へばってらんないぞ?」


 アレンはそう言って、ホランドとノックスの前を後ろ向きで急かすように手を叩く。


「そんな……」


「え……まだあるんッスか?」


「何を弱気なことを……本来は今の二倍くらいは走るペースを上げて、最低でも二時間は走り続ける体力を身につけて欲しいところだぞ?」


 アレン達は現時点でフルマラソンのトッププロが走るほどの速度を維持して走っていた。それよりも早く走ると言ったアレンに、ホランドとノックスは驚愕した表情を浮かべる。


「そんな……今でも十分に早いと思っていたのに……」


「二倍の速さで……最低、二時間ッスか?」

 

「そうだ。強くなるなら最低でもそのくらい出来ないと。体力は強くなる上での土台みたいなもんだからな」




「「「「はぁ……はぁ……」」」」


 ランニングで疲れ切ったホランド、ノックス、リン、ユリーナは地面に倒れていた。


「まぁ……初日だからな、ちなみに本来は……それぞれの武器の訓練を一時間。その後に魔法の訓練を一時間やる予定だ」


「ま、魔法の訓練は最後にやるんですね」


 ホランドがアレンを見上げて問いかけた。


「あぁ……あえて、疲れて集中しにくい状態で魔法の訓練は行う」


「あえて?」


「そうだ。魔法を使えるようになればわかると思うが、すごい集中力が必要になる。ただ、魔法を使わなければいけない状況というのは非常時が多い。つまり、いついかなる時にも魔法を使える集中力を維持できる精神力を身に付けることに繋がる」


「はぁ……なるほど」


「それで聞くが……この後休憩にするか。それとも武器の訓練一時間と魔法の訓練一時間をやるか?」


 アレンは立ち上がって、ホランド達を見ながらそう言ったのだった。


「「「「……」」」」


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