キュア・オリジンワールド ~普通に生きてきた俺が何故か創造神から世界の救済をお願いされているのだが?~

@virtualove

プロローグ1

【普通に生きて普通に死ぬ】

俺は自分の人生もそこから逸脱することはないだろうと信じて疑わなかった。


・・・すまん、普通って言っても分からないよな。


 好きでもない、何の役に立つのかも分からない勉強に励んで大学まで進学し、自分の興味がある事業を行っている大企業への就職を目指すが最終的に就職活動を始めてから名前を知ったような中小企業に就職し、定年まで働いて寿命で死ぬ。その過程で友人や恋人を作り、時にバカなことをやったり、時に挫折をするのが普通の人生であり、俺の歩むであろう人生だと思っていた。


物語の英雄が歩むような奇怪で輝かしい人生は無縁なものだと思っていたんだ。


だから、現在進行形で目の前で起きている出来事を理解できなかった。


歩行者用の信号が青になった横断歩道を渡る1人の女子高校生。

そこに大型のトラックが猛スピードで突っ込んでくる。

女子高校生はスマホに夢中でトラックに気づいていない。


俺は既に駆け出していた。


「危ない!」


「え?」


ドン!!


視界が回転し、俺は勢いよく道路に頭をぶつける。


 自分の命より他人の命を優先するなんて

英雄のような行動を俺が選択するとは・・・


頭が朦朧とするなかそんなことを考えていると視界に女子高校生の顔が映る。

その子はどこかに電話をかけながら、誰かに指示を出している。


「今、救急車を呼びましたから。もう少し頑張って下さい。」


どうやら俺の命を救助しようとしているらしい。


とても綺麗だと思った。


サラサラしてそうな黒髪

猫のように大きな眼

全体的に整った顔立ち


「怪我はないか?」


「自分は今どんな状態なんだ?」


次々と質問が浮かぶがそれを声にすることはできなかった。


(こんなに綺麗な女性を救うことができたのだから

 俺の人生も捨てたもんじゃなかったな。)


そして俺は意識を失った。



Ж



「うん?」


何故か俺は目を覚ます。

(なんで生きてるんだ?死んだんじゃなかったのか?)


意味が分からないが

まずは体の確認 - 何処にも怪我はない

次いで周囲の確認ー 果ての無い白い空間が広がっている


「どこだここ?」


記憶にない空間に対して疑問をこぼすと涼やかな声で返答される。


「そうですね・・・

 あなたの世界で言う天国のようなものでしょうか。」


俺は驚いて声の聞こえた方を注視する。


「こんにちは」


この世のものとは思えない程の美貌を持った

金色に輝く髪とエメラルド色の瞳が特徴的な女性がこちらに顔を向けて

挨拶をしてきた。


読書をしていたのだろうか?

女性は椅子に腰をかけており、膝の上には閉じられた状態の一冊の本があった。


(さっき周辺を確認した時にはいなかったよな?)


「こんにちは?」


一先ず挨拶を返すと女性は笑顔になる。


「礼儀正しいのは素晴らしいです。カイム」


「それはどうも・・・って、どうして俺の名前を知っているのですか?」


「カイムは私の子供のようなものなのだから当然でしょう?」


「・・・」


頭が痛くなってきた。

なんなのだろうこの人は。

俺はあなたを見たことも聞いたこともないのだが?


「?」


頭を抱える俺を見て女性は首をかしげる。


「あの!質問をしてもよろしいでしょうか?」


このままでは埒が明かないと思った俺は意を決して声を掛ける。


「ええ、どうぞ。どんなことでも答えましょう。」


「あなたは誰ですか?」


「そういえば名乗っていませんでしたね。

 私はオリジン地球の元となる世界を創造した、

 いわゆる創造神といった存在です。」


この出会いは危険だと知らせるように遠くから警鈴が鳴った気がした。

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