また新たな会話劇
フォロワーさんに好かれているロスですが、そうしたらこんな会話劇が生まれました。
KACお題「私と読者と〜」のネタからどうぞ。本人が楽しくてやっている代物+記録なので、「また内輪ネタ……」という方はスキップしてください。
如月芳美様との合作です。
「核弾頭はお前じゃないのか」
「殿下に言われる筋合いはないですね」
「お兄様が核弾頭なんてことはありません! 絶対ロスです」
「(このブラコンとシスコンは……)お二人とも兄妹揃って少しはご自分の破壊力を自覚してくれませんかね」
「あら、でもファンはシレア国とロスを天秤にかけたらロスを取るっておっしゃってるわ」
「そんなアホなことがありますか」
「お兄様は破壊してはいないわよ。惑わせてはいるけれど」
「妹が可愛くない兄がどこにいる」
「平均と比べてるんです」
「大体アホなんてファンに対して失礼じゃない」
「好意を素直に受け止めないと嫌われるぞ」
「その前に王族なんだから臣下と国を天秤にかけること自体に突っ込んでくださいよ」
星をも壊す勢いのロスの尊さらしい。そんな画像がシレアにも来たのだろう。
「ほら核弾頭じゃない。星が壊れてるじゃない」(星が壊れるほどの尊さ)
「いやこれ想像図ですよね」
「ロスの意外な力を見たな」
「のらないでください殿下」
さすれば鳥が騒ぐほどの殿下の発言である。シレアの時期君主は冗談にも気を回せるのである。従者相手にはよく言っている気がしないでもない(確認したところ、本編でも相当言っていた)。
「お兄様は鳥にも人気ねー」
「天然ですからね」
「なんの話だ」
「貴方の素行の話です」
一方、ハート付きで「ロス♡」と呼ばれるロス。なんと人気な男だろうか。喜ぶべきである。
「だそうだが、しばらく役目を変えてみるか?」
「いりません」
「うちの殿方たちは評判がいいわね。解るのだけれど。特にお兄様は」
「アウロラは私への評価が甘すぎないか」
「それ貴方が言う台詞ですか?」
「大丈夫よロスへの信頼は格が違うもの」
「おかげで存分に動けるよ」
「反省して下さい」
***ファンに呼ばれるロス***
「ねえロス、ちょっとウェスペルの世界に行ってきてくれない?」
「え、姫様じゃなくてですか」
「私も行きたいけれど優先順位ってものがあるでしょう。需要よ」
「希望で行けるものならあいつを」
「需要よ」
「そもそもいけるんですか」
「書籍化すればね」
「何の話です」
KADOKAWAさん、シレアだけで本編二作、番外編(シードゥスとスピカ主役が1、シードゥス主役が1、ロス主役が2、王女主役が2、お遊び多数所収。あれ? 殿下?)で本が三冊出せますよ(笑)。
「ロス、国外に仕事に行ってくれないか」
「殿下でなくて?珍しいですね。でもその間、近衛の訓練とかは」
「私と大臣で代わる」
「急務ですか」
「ロスが引き篭もりだと評判が立っている」
従者、シレアからフォロワーさんのところに出てこないと苦情が来ている。
「はい?」
「ひとまず料理長のために料理長と同じ顔の人物から四川料理とやらの情報も」
「どこですそれ」
「これが件の四川料理の」
「料理長そのままじゃないですか」
「それは本人の前で言わない方がいい。目印は得物だ」
「なるほど鉄鍋が深鍋になるんですね」
ちなみに斧のような包丁を持っているはずの営・業中。KAWASAKIバイクにライダーズ・ジャケットを羽織って颯爽と中央道を走る(か存じ上げないのでそういうイメージの)コードネーム矢場杉栄吉の師匠である。
「私も女性としてはお兄様は心配になるのよ。だってこんなに素敵でしょう?止まって振り返りたくなるでしょう?しかも丁寧だし頭はいいし優しいし剣も……」
「姫様……なんかもう突っ込む通り越して心配になってきました……」
それは九つも歳の離れた兄がそこまでの殿方ならば自慢したくもなろう。王女が生まれた時すでに賢い少年である上に、四六時中そばにいるのである。
「心配?なにが?」
「いや本当に殿下のこと好きですね姫様」
「仕方ないじゃない。やはり殿方はああでないと」
「ちょっと待ってください、あまりに理想が高くなりすぎるのも」
「ロスも大概、お兄様のこと好きよね」
従者本人、ああだこうだと文句を言いながらも否定しないあたりが微笑ましい。しかし大の男がそこまで素直になれないもので、嫌そうな顔になるのは必至である。半眼に引きつり笑いも浮かばない。
「誤解を誘う物言いはやめて下さい」
「文字通りよ。いつも一緒にいるし」
「側近の仕事です」
「お兄様のお仕事減らそうとするし」
「放っておくと睡眠削るでしょうあの人」
「そうやって心配してるし」
「だから」
「ずるいわ二人して」
いいなぁー、と全く人の言うことを聞いていないこの王女、残念ながら王子とそっくりなのだ。仕方ない、兄妹だもの。隣の国へ行けば二人揃って「本当に王族ですか」と言われ、それぞれ側近と下男に叱られるのである。
ただしまだ王女はいい。女の子らしく、すぐご機嫌になれる魔法の品もある。むくれる王女を宥め、ロスが「喉乾きません? お茶にしましょう」と誘ってみれば、すぐに賛同してくれるからしめたもの——のはずだった。
「料理長。姫様が理不尽にご立腹なので何か甘いもの下さい」
「なぜロスが頼みに来る。殿下は」
「あの二人が一緒になったら疲れるだけでしょう俺が。とりあえず機嫌治るから甘い物」
「待て。今は米とやらと野菜を高温で炒めねばならん」
「それ何ですか」
「夢の中で作っていた料理だ」
中華飯店、営・業中さん、料理長の夢の中に出張。料理長、それは
「料理長、例のものはでき……ロス、ここで何をしておる」
「大臣こそ」
「いや、なんだ、その、夢の中で……そんなことはどうでもいい。姫様がいたく機嫌を損ねておられるようだが、なにか身に覚えはないか?」
「ですからその機嫌を取ろうと……」
「無駄話なら外でやらんか。ここは神聖な厨房だ!」
夢を見たのは貴方か大臣! と突っ込みたいが、その刹那、なにやら空を切る音を耳にしてロスは反射的に身を斜めに傾けた。するとロスが体を動かしたのとほぼ同時に肩の横を細長いものが高速で通り過ぎ、次の瞬間には目の前にいた大臣が額を抑えて呻く。
「あの大臣…火傷してません?」
横を見れば、銀のお玉が調理場の石床の上で、まだなお左右に揺れている。
「ロス…なぜよけた」
「誰だっておたま飛んで来たらよけます」
「私に当たったではないか」
「私のせいですかそれ⁉︎」
「あのー姫様が茶菓子はって……」
「ほれシー君」
「っ……!!」
あるなら初めから出せよ! 口元まで出かかった言葉を飲み込み(今度は刃物が飛んできそうだ)、ロスが睨みつけたいのを我慢して間口に立った下男のシードゥスを見上げると、その後ろから涼しい声がかかる。
「ああシードゥス、いい。これは私が持っていくから」
「殿下」
「料理長、少し多いのでシードゥスとロスに分けても?」
「お好きなように」
「殿下、先に申し上げた議定書の件はどうなされました」
「あれなら無駄を全部切った。教会領管轄の老中だろう。数世代前の慣習に拘泥していて要領が悪過ぎる」
「しかしあの老中が殿下の案に反対を示すのは目に見えて」
「気に入らなければ若造とでもなんとでも言うがいいさ。ただ今の時勢に合わない。合わない以上変える。少なくとも今日はあれと議論する気はない。というわけで私も休憩に入る」
「殿下、それはつまり
「大臣の方が付き合いも長いしやり合うのは慣れているだろう。先ほど大臣にも休めと言われたし、ロスも心配してくれているみたいだし」
そうしてカエルムは整った顔を柔らかな笑みに崩し、よく通る声で言った。
「というわけだから私はもう今日は妹と茶でもいただくから。何か意見があるなら確実に私を納得させる別策をまとめて明日の朝の会議に出せと伝えてくれ」
遠目から見た巷の娘ならその場で我を忘れそうな笑顔であるが、蘇芳の瞳が笑っていない。
場にいる全員を硬直させ、カエルムは茶菓子の載った盆を手に去っていった。
その足音が聞こえなくなったとき、シードゥスのぽつりと漏らした言葉が調理場の石壁に響く。
「で、殿下が姫様のご機嫌を直していく、とこう言うわけですね……?」
どこまでもいいところどりの兄である。
*営・業中さんとは:如月さんが作ってくださった料理長そっくりの中華飯店の店長さんです。イラストが見たい方はTwitterへ。
*「矢場杉栄吉」とは:ゆうすけさんの一声から始まったリレー小説に巻き込まれた人物であります。その異名を一時的に自称してくださった心優しき中華の達人は、街の印刷屋さん、えーきちさんです。
一緒に遊んでくださってありがとうございます。
注:本編はシリアスです。
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