第43話
『救世ツール物質化に必要な触媒を検索……最適触媒を発見。当該触媒を現界キーに設定──〝勇者〟専用救世ツールを出力』
お守り代わりに手に握り込んでいた欠けた銅貨が、熱を放ちながら別の形に変化していく。
ああ、わかるとも。これも『愛』だ。
教皇の婆さんが、アタシたち二人に力を貸してくれると言っている。
込められた願いと祈りが、救世のカタチを具現化していく。
「エルムス、これ……使えよ」
手に現れたのは見たこともない形の剣。
ゆるく湾曲した鞘は頼りない細さではあるが、ずしりと来る。
「これは……!」
受け取ったエルムスが驚いた顔をしている。
しかし、得物を手にしたその姿は妙にしっくり来ていて、エルムスの為にあつらえたものだというのはなんとなくわかった。
「これで、僕はまだ戦える……!」
「聖職者がそんな物騒なもん持っていいのかい?」
少し冗談めかして聞くと、エルムスが笑って答える。
笑っているのに、妙に鬼気迫るものがあって少しばかりびっくりしたけど。
「今更ですし、それに……今の僕はアルフィンドールとしても戦場に立っています。これがあれば、何だって斬ってみせますよ。魔王だってね」
心強い言葉に前向きになる。
一人じゃないってことに、心が躍る。
いや、エルムスだけじゃない。
今この瞬間も、アタシ達が立ち上がるのを信じている者がいる。
それがアタシの心から溢れる力となって、体中を満たしていく。
「──いくよッ!」
天に向かって視線を投げる。
イメージだ。神罰は邪なるものだけを打ち貫き、焼き落す。
そう、この場にいる者たちはまさに神の使徒であり『愛』の守護者──『人』だ。
「いっけぇぇぇーーっ!」
光輪をフルに回転させて
それはわかれて広がり……まるで燕のように舞いながら魔王から剥がれ落ちた汚れを貫いていく。
「聖女殿!」
「嬢ちゃんか!」
「すごい……!」
「押し返せ!」
絶望が溢れ始めた戦場に、希望と戦意が満ちていく。
「エルムス・アルフィンドールが推して参るッ!」
雄々しい名乗りをあげたエルムスが戦場を駆けて行く。
それに追随しながら、アタシは天輪を回す。
身体が軽い。天輪に皆の想いが集まって、束になって回転していく。
アタシ達の背に向けられる視線一つ一つに、希望と背負うべき『愛』を感じる。
「小癪な!」
魔王の放った蛇の群れをひと睨みして焼き切る。
さらに加速したエルムスの背中を見送って、アタシは大きく息を吸い込む。
ここで、エルムスの活路を開いてやる。
エルムスと一緒なら、もう何も怖くないのだから。
天輪を回し、螺旋となって収束していく力を口腔へと集める。
「な、なにを……!?」
「これがッ! 『愛』だ! クソ野郎ッ!!」
まるで竜の吐くブレスのように、アタシは口から
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