第38話
「ヤローども! 下がんな!」
声を張り上げて、前に出る。
「セイラじゃねぇか!」
バルボ・フットが目をまるくしてアタシを見る。
前線にこいつがいるのは助かった。
「丁度いい、兵を退かせな。ここからは聖女様の戦場だよッ!」
「んだ、そりゃ? だが、まあテメェのことだ、策があんだろ」
「んなもんないよ。正面から叩き潰す。消し炭になりたくなきゃ、アタシの後ろにいな!」
アタシの言葉に頷いて、バルボ・フットが青色の発煙筒を投げる。
後退の合図だ。
傭兵と騎士たちが下がっていくのを確認して、例の声を呼び出す。
『──神罰執行器官、展開。
アタシの背後に、でかい光の輪が形成される。
天使の頭についてるのと一緒の奴か? でかいけど。
それが高速で回転して……アタシの中の何かを加速させ、螺旋させていく。
「気合入れていくよォッ!」
溢れる力を視線に乗せて、こちらに攻め来る魔王軍の先頭を横薙ぎにする。
着弾、爆発、炎上。
人間様をご機嫌に攻め立ててくれた魔王軍の先鋒が尽く焼け落ち、消滅する。
その光景は、勢いづいた魔王軍の足を止めるには十分だったようだ。
「セイラ、大丈夫ですか?」
「大丈夫さ。さぁ、次いくよ!」
二度目の
『
背後の輪っかが割れ落ちて、膝の力ががくんと抜ける。
たった二発っきりで救えるものか!
もっとよこしな!
『要請受諾。天輪再構築開始。リソースシステムの効率化をはかります』
「早くしな!」
謎の音声に文句をつけていると、二つに割れた魔王軍の中央から何かがすごいスピードで迫ってきていた。
蒼い肌に三つの目、二つの口を上下に持つ異形の魔人だ。
「好機とみたりィ……! 我は魔王軍四天王が一人……」
「──徒花と散れ」
あわやというところで聞こえたのは、チンっという鍔なりの音。
「僕の聖女に触れないでください。それは、僕のものです」
エルムスが躁静谷かに告げるが、名も知らぬ四天王にはもう聞こえてはいないだろう。
何せ、とっくに首が落ちてる。
「エルムス、アンタ強かったんだね……。ていうか、司祭様が剣を振っていいのかい?」
「もう、聖職者ではないので」
にこりと笑ったエルムスが、再び身構える。
一振りごとに剣を仕舞うなんて、変な剣術だ。
『再構築完了。
「よくわかんないけど撃てるんだろ? さぁ、押し返すよ!」
アタシは再び天輪を回して、『神敵』を視界に捉えた。
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