ココロノカケラ〜壊れた青年の物語〜
八浪 凛
プロローグ
俺はいつだってこの世界が良いとは思ったことがなかった。
それでも茜空や原始的な土地での夜空はとても綺麗で人間の醜さや自分の小ささに悲しくなり、それでも心を癒してくれる。
今、見上げてるこの青空もすごく素敵だと思う。
他人を信じられなくなって犯した罪や売り言葉に買い言葉で躊躇なく行動に移せる俺は、人として壊れてるんだろう。
「いやぁぁぁぁ〜〜〜」
「おい、誰か救急車呼べよ」
「あれはもう助からねえだろ」
「うっわぁ、ヤバいって。写メ撮ってアップしよ」
「可哀想に。まだ若いみたいだけど」
「こんな人通りのあるところで公開自殺とかマジ迷惑なんだけど」
「通り魔じゃないだけマシじゃね?」
そう、他人は目の前で人が死にかけてもどこかテレビを観ているような感覚で現実を見てる。
あぁ〜、やっとこの腐った世の中からおさらば出来る。
ここまでやらかしたんだ。地獄ってのはどんなものか見て来るとするかね。
冷めたように考えてそこで意識が途切れる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
気付いたらどこかの草原に立っていた。
コンクリートジャングルに邪魔されることなく空がよく見えてとても綺麗で吹く風が気持ち良くてこれが地獄なら死ぬのも悪くなかったなってそう思わずにはいられなかった。
「初めまして。
不意に声を掛けられた。その方向を向くとこの世の者じゃないくらいの美女がいた。
「どうも。俺が死んだのは覚えてるのであなたが死神ですね?お迎えありがとうございます。こんなに素晴らしい場所が地獄なわけないですよね。さぁ、地獄まで案内してください」
「まず自己紹介からさせて頂きますね。私はデーヴィ。死神ではありません。ですが貴方の性格からして地獄への案内をする者だと思って頂いて結構です」
「そうですか」
「反応に困る返事ですね。単刀直入に言わせて頂きます。貴方にはある世界に転生して頂きます」
「へ〜、それで?」
転生かぁ〜。確かに地獄だな。
「貴方は、自分の親を追い込み倒れる原因が自分にあり、親が死んだことを自分の責任だと思っていますね?その結果、周りに言われた売り言葉に買い言葉の末、包丁で自らを滅多刺しにして自害をしました」
ゆっくり俺は頷く。
「なのでその罪を償うと言う名目で一岡蒼亮さんの記憶と人格のまま転生して頂きます。転生するに従い、特典を贈らせて頂きます。いかがなさいますか?」
「転生するにしてもその世界に必要なのは俺の魂だけですよね?記憶と人格は必要ないんじゃないですか?消して下さい」
「言ったじゃないですか。罪を償うため、と。これは罰ですよ」
そういうとデーヴィは、ニコッと笑う。
死神じゃないと言う割には、キツいことを言う。
「特典ってどんなのですか?」
「転生先では科学が無く、代わりに魔力や魔法、スキルといったものがありますね。よく転生物の物語みたいなものです」
もう一気に面倒になって来た。転生したら速攻、死ねるようにしよう。転生物の定番と言えば、魔力枯渇は死の危険があるというものだ。それでいこう。
「へ〜、それで?」
「希望のスキルをプレゼントしようと思います」
自爆スキルが良いかもなぁ〜。
けど却下されそうだ。まぁ〜どうこうしたって死ねるわけだし早々に魔力枯渇でジ・エンドが面白そうでいいかも。いちよ、保険も兼ねて刃物も所望しよう。
「ん〜適当で後、刀をお願いします」
「いいのですか?」
「適当でいいです。魔法とかがある世界なら当然、魔物がいますよね?なら戦う武器があれば事足りると思うので」
「なるほど、わかりました。では適当に見繕って武器と一緒に進展します」
「ありがとうございます。では、もう結構なので送って下さい」
「わかりました。それでは二度目の良い人生を」
美女がそういうと俺の身体は光始め消えていく。最後に俺は空を見上げてその光景を目に焼き付ける。
生まれてすぐに死ぬつもりだからきっと空を見るのもこれが最後になるであろう。
さぁ、死んできますかね。
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デーヴィは、蒼亮が無事に転生することを確認するとボソリと呟く。
「蒼亮さん。貴方は、罪を犯したと思っていますがそんなことはありません。この世界でその壊れた心をゆっくり治して大切なものを思い出して満たして下さい。だから、そう簡単には死なせませんからね」
女神は、叶うかどうかもわからない一人の青年を思い、願うのであった。
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