自己愛

第1話

私はたくさんの人に愛されてきた。

親に愛された。

友達に愛された。

でも唯一、私自身には愛されなかった。

私が憎い。

汚くて、醜くて、

存在価値のない私が憎い。

かわいいね。

賢いね。

好きだよ。

どんな褒め言葉を言われても、

満たされなかった。

信じられない、嘘だ。

私はそんな存在じゃない。

もっと醜くて、矮小で、

どうしようもない存在、

それが私。

だから本当の意味で私が愛されたことは、一生で一度もなかった。

あの人に会うまでは。

あの人は私をマゾ豚と呼んだ。

ゴミと呼んだ。虫ケラと呼んだ。

そう言って私をめちゃくちゃに痛めつけた。

あの人の前でだけ、私は本当の私でいられた。

そしてそんな私を深く愛してくれた。

大好き。大好き。

あなたの前にいるとき、私は心が満たされます。

あなたのためなら死んでもいい。

あの人は私をとことん惨めにしてくれます。

そんな私をみて、あの人は本当に楽しそうに笑うんです。

あの人が喜んでくれるなら、あの人の目の前で、大きな苦しみの中果てたっていい。

そう思うんです。