第21話 悪魔との戦いから学ぶ。
怒り狂う悪魔を目前にした紅だが、他の者に比べて冷静であった。
窮地に陥った時でも冷静に居られる訓練を受けているからだ。
紅は冷静に悪魔を見て、考える。
悪魔は魔法を発動させる。炎が紅達に向けて放たれる。
「ふむ・・・火炎か・・・だが、火種になる物なしでは左程の射程にはならぬし、火力も落ちるだけ・・・コケ脅しだな」
紅は冷静に火炎を躱す。彼女の言う通り、ただ、放たれた火炎は広範囲に炎が吹き付けられているが、その火力は恐れるほどではなかった。
騎士達は炎に驚き、逃げ惑うが、紅はむしろ、身を低くして、悪魔に迫る。
そして、腰の革袋を手に取り、それを投げつけた。
革袋は悪魔の目前で悪魔自身が放った火炎に焼かれ、中身が飛び散る。
それは紅が混ぜた油袋である。数種類の油と火薬や燃えやすい物質が混ぜられており、それは一瞬にして燃え上がる。つまり、爆発したのだ。
悪魔は目の前で爆発が起きて、後方へと吹き飛んだ。悪魔の身体には火の点いた油が付着して、燃え上がる。
「ぎゃああああああ!」
悪魔が悲鳴を上げた。
紅は冷静にその様子を見る。
そして、再び、腰の革袋を手に取る。
放り投げられた革袋は倒れて暴れる悪魔の身体の上で広がり、中身が撒かれる。
それは粉であった。悪魔の身体に粉が降り注ぐ。
「くそっ・・・今度はなんだ?」
悪魔は粉を振り払おうとした。だが、その体に激痛が走る。
「ぎゃああああ!痛い!痛い!なんだ。どうなっているんだ」
悪魔は激痛にのたうち回る。
「ふむ・・・体は人や獣と変わらぬか。爛れを起こす毒が効いている」
紅はそう言うと、クナイを手にした。
「そろそろ、トドメが刺せるかどうかを確認させて貰う」
紅はのたうち回る悪魔にクナイを投げ込んだ。
クナイは悪魔の額に突き刺さる。
刹那、悪魔は断末魔の叫びを上げる。
激痛が彼の身体を走ったからだ。
「クナイの刃にはこの世界で悪魔に効果があるとされる魔草から抽出した毒が塗ってある。人間などには効果が無かったが、確かに悪魔には効果的のようだな」
紅は苦しむ悪魔を見て、効果を確認すると同時にクナイを次々と放る。
悪魔の身体には次々とクナイが刺さり、彼は地面を転がり、悶絶した。
だが、それでもまだ、死ぬようには見えなかった。
紅はエミールに尋ねる。
「エミール殿、悪魔はどのようにしたら死ぬのですか?」
「悪魔は死なないわ。受肉して、この世に出現しているけど、元は魔界と呼ばれる異世界の存在なの。だから、その器である肉体を破壊するしかない」
「なるほど・・・死なないまでも、動けなくするというわけですね」
紅は納得して、腰から更に革袋を取り出す。
「これが最後です」
紅が放り投げた革袋は悶絶する悪魔に当たり、中身をぶち撒けた。刹那、それは一瞬にして激しい青白い炎へと変わった。
炎に包まれて、悪魔は声すら出せなくなり、やがて、肉体は消し炭へと変わった。
「ふむ・・・鉱物の粉を燃やすと激しく燃えるものですね」
紅は冷静に悪魔の最期を見届けた。
彼女の時代には花火はまだ、左程の発達をしていなかったが、燃焼させる物によって、燃え方などが違う事を彼女は知っていた。
青白い炎を見て、エミール達は驚いた。それは魔法で放つ炎よりも遥かに強力な業火だったからだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます