引用(松尾 剛行 著書より抜粋)

本書は、2018 年 12 月 24 日時点の Westlaw、第一法規、TKC、判例秘書(50 音順)に掲載されている名誉毀損に関する裁判例のうち、インターネット上の名誉毀損実務において参考になると考えたものを厳選して掲載している。



以下、抜粋



特に、インターネットの発達により、これまで発信手段をもたなかった一般 私人が発信の機会を得たことは重要である。もちろん、発信の機会があるとい っても個別の投稿が多くの人に「読まれる」とは限らない。しかし、多種多様 な事実や意見が公開され、それが公的な討論の対象になり得るということの意 義は決して小さくないだろう。インターネット時代には、マスメディアによっ て濾過された後の意見のみが公開されていた時代よりも、「質の低い 9) 」情報の 数が必然的に増えることにはなるものの、(上記のような、意図せず「炎上する」 事案とは異なり)無名の一般私人の調査結果や意見が、その内容のよさからス ポットライトを浴び、多くの人の意思決定に影響を与えることも場合によって はあり得るという意味で、一種の「思想の自由市場」が出現したことの意義は 否定できないだろう 10) 。  このような背景を踏まえ、インターネット上の名誉毀損においては特に表現の自由の保障と名誉権の保障との間の微妙なバランスをいかにとるかが特に重 要な問題となってくるであろう。そのバランスのとり方によっては、極端な場 合には、インターネットが誹謗中傷も野放しの「無法地帯」になるかもしれな いし、逆に、名誉毀損と指弾されることによる萎縮効果のため、思っているこ とを自由に表現できなくなり、「思想の自由市場」が消滅するかもしれない。 その意味で、双方のバランスを探る営為は非常に重要である。



引用元


https://keisobiblio.com/wp/wpcontent/uploads/2019/02/internetmeiyokison2_tachiyomi.pdf


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