三巡目・後手
【三回目・僕】
目を覚した僕の視界に飛び込んできたのは爆弾入りのプレゼントボックスであった。
「う、うわぁぁあああ!!」
僕は悲鳴を上げて飛び上がってしまった。
爆弾は既に起動しているのだ。爆発するのではないかと思い、身を縮こませた。
──ところが、いくら待てども爆弾は爆発しなかった。そもそもアナウンスの声すら聞こえてこない。
「変だな……」
僕は恐る恐るプレゼントボックスの箱を開けた。
確かに、中には爆弾が設置されている。
──しかし、その配線が何者かによって切断され、解除されていた。
これでは爆発するわけがない。
それを見て、僕は恐ろしくなった。
──侵入者だ。
頭の中に浮かんだのは、侵入者の影だった。
「誰だっ!?」
僕は叫び声を上げた。
部屋の中を見回すが、誰の姿もない。
しかし、この配線を切った誰か──自分以外の何者かが確実にこの家の中には居るはずだ。
──他の部屋はどうなっているのだろうか。
他の部屋のことも心配になってきた。
思い立った僕は様子を見に行くために体を起こした。そして、扉を開けるべくドアノブを握った。
──チクリとその瞬間、指先に痛みが走って慌てた。
手を引っ込める。
指先から血が流れていた。
──何かが刺さったようである。
僕は舐めて止血をしようと、指先を口元へと運んだ。──が、寸前で思い止まる。
ふとトレイに乗った三つのコップが、視界の隅に入ったからだ。
コップにはそれぞれ、透明な液体、黒色の液体、黄色の液体が入っていた。
──なるほど、そういうことか……。
僕は瞬時に今の状況を理解した。
この三つの内の一つに、解毒剤が入っている──ということなのだろう。
ドアノブに毒針が仕掛けられていて、迂闊にも僕はそれを触ってしまった。
解毒するためには──正解の薬をこの三つの液体の中から選ばなれければいけないという訳だ。
勿論、三つ全てに猛毒が入れられているかもしれないが、時間は一刻を争うようだ。
こうして考えている間に、段々と目眩や吐き気を催してきた。毒の効果が表れてきたのであろう。
「早く、解毒剤を飲まないと……」
──僕は三つのコップを眺めた。
正直、見た目以外にヒントは何もない。
一口飲んでみて、猛毒であればお陀仏だ。暗号のメモや、選別するためのアイテムが用意されている訳でもない。
つまり、直感で選べということなのだろう。運否天賦──ハズレれば死ぬ。
「……これにしよう」
何の判断材料もない。単なる運任せである。
僕は並んだ三つの液体の中でも一番透き通った液体──不純物が少なそうなその液体が入ったコップを手に取って、縁に口を付けてみた。
どっち道、ハズレれば死ぬのだ。
コップを傾け、僕は豪快に液体を口の中に注いだ。
──ゴクッ、ゴクゴクッ!
どれくらいの量を飲めば良いのか。
容量が分からなかったので、僕はコップの中の液体を飲み干した。足りずに解毒が追い付かないのも嫌だったので飲み切ることにしたのだ。
それで、しばらく待ってみた。
──身体に変化はない。
「大丈夫、なのか……?」
どうやら上手く、解毒剤を引き当てることが出来たらしい。
そう安堵した──その時だ。
「……うっ!」
突然、胸が痛み出した。
喉が苦しくなり、咳き込んでしまう。
激痛に襲われて、僕は床をのたうち回った──。
引き当ててなどいない──選択肢をミスってしまったようだ。僕が飲んだのは解毒剤などではなく、つまり──毒。
毒──即ち、『死』。
残念ながら僕はもがき苦しみ、そしてそのまま意識を失ってしまったのだった。
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