→扉や窓を破って脱出する・その二

 結論から言うと、六種類全てのドライバーを探し当てることが出来た。

 台所の鍋敷きの下に星形、流しの皿の下に四角形、椅子の裏にテープで貼り付けられていたのが三角形、ドアの側面に丸形、玄関の靴箱の奥に二重丸、スリッパの中に六芒星──が、それぞれ隠されていた。

 隠されていたというには随分と分り易い場所にあったが、探す側からしてみれば有り難い。

 少し時間を掛けただけで六種類のドライバーをコンプリートできた私は、それらを携えて台所へと戻ってきていた。


 脱出するために、鉄格子を固定しているネジを次々と外していった。


「よしっ!」

 全てのネジを外し終わると、鉄格子も自然とその場所から外れ落ちた。

 後は、釘で固定されたベニヤ板をどうにか引き抜か、破壊するだけである。


──どこだ? どこにある?


 気持ちがかなり焦っていた。

 ベニヤ板を叩き割るのでも良かったが、そんな発想は頭の中に浮かばなかった。

 釘抜き──そもそも、どんな形をしているのだ?


 私は再度、玄関へと向かった。

 靴箱の中に工具入れを見付けたのを思い出したのである。中を見てみると──釘抜きを見付けた。


──急がないと!


 私は走った。

 玄関から台所へと走り、釘抜きを使ってベニヤ板から釘を引っこ抜いた。釘は容易く取り外すことが出来た。

 焦りはあったが、一本一本確実に、ベニヤ板から釘を外していく。

──やがて、支えを失ったベニヤ板は床へと落ちて倒れた。


「やった!」

 私は思わず歓喜し、声を上げた。

──これでようやく外に出られる!

 ぱっかりと開いた口から外が見えた。ここが何階であるかも分からない。そう言えば、高層階という可能性もあるではないか。

 しかし、爆弾の爆発に巻き込まれるくらいなら、落ちて死んでしまった方がずっと良い。


 私は窓に手を掛けた。

「え? あれ……?」

──ところが、意味が分からない。何故だかそれ以上、進むことが出来なかった。

 まるで見えない壁でもそこにあるかのように、私が前に進むことを阻んだ。

 両手で力任せに何もない空間に手をやって押してみる──ビクともしない。

 状況を理解することが出来ず、私は困惑した。


「どうなってるんだよ、これは!?」

 確かに窓は開いているのに──脱出口は目の前にあるというのに──脱出することは不可能であった。


 私はガックリと項垂れて、床に膝を付いた。


 今更、他の脱出方法を探すことなど出来ない。

 爆弾を止めようにも時間がなかった。


 最初から爆弾を止めることに尽力を注いでいたなら、結果は変わっていただろう。

 私の選択は、どうやら誤りであったようだ。


 私はどうして、こんなところに居るのだろう──。

 結局、その理由は分からないまま、私は終わりを迎えることになる。


『……ピッ、……ピッ、……ピッ……プツンッ!』


 タイムリミットの時間が告げられたのと同時に、辺りは激しい光に包まれた。

 プレゼントボックスに仕掛けられていた爆弾が爆発したのだ。

 爆風で壁は吹き飛び、家の中は火の粉に包まれた。


──こうして運命に抗うことはできず、私の生涯はここで幕を閉じたのであった。

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