ある意味休暇、ある意味、修羅場
4日目の朝、やはり家族で一番先に目が覚めた。服を着替え、スマホを見る。
「何々?まだ夕刻の神隠し事件、昨日より盛られているではないか!」
怒気は強めの言葉にしたが、叫んではいない。子供は起きてはいない。セーフ。
そういえば、夕刻の神隠しの当事者とは言っていなかった気がする。ツイッターに、
”夕刻の神隠しで消えた家族は俺達です”
と、書き込んでおいた。これで
そして、妻が起きた。
「あ、二郎、おはよう。今日も早いのね」
「おはよう
妻は服を着替え、身支度をする。そして、しばらくすると、
『あ、ぱぱ、まま、おはよう』
ん?
んんん?
「おい、
「んー、私が意味が分らなかったから、多分、そうだと思う」
何と!うちの娘、4日目にして現地語を覚え始めた!うちの子順応性高い!そして、賢い!
『ぱぱ、まま、おはよう』
息子の
「ハナちゃん、フウ君、私が分らないから家族だけのときは日本語を使ってね」
「「はーい」」
そして、昨日と同じように、今日も討伐練習だ。今日は、昨日の作戦会議の通り、東門の外のちょっと強い敵と戦うことになっている。
道中、
『
一番厳しい目を持つと思われるカーライルにそのように褒められた。正直思ってもみなかったことだ。これ、誇ってもいいよね?ヤッフー!
夕方まで討伐練習をして、城に戻る。風呂に入って夕食にして、そろそろ作戦会議をしようかというとき、
『勇者様とそのご家族様、王より伝えたいことがございます。謁見の間へお越し下さい』
着替えてメイドの案内で、謁見の間へ行く。
『勇者様のおなーりー』
俺たち家族は、謁見の間へと入っていく。
『勇者様とそのご家族、頭をお上げ下さい』
王の許しを得たので例を解除する。
『昔の召喚の資料を見たところ、勇者様方の国では、人が消えたら大騒ぎになるのだとか。それは本当ですか?』
代表して俺が答える。
『はい、本当です。我々は、こちらに居ましても、祖国との通信手段を持っておりますが、我々が居なくなったことで、国中を巻き込んで、大騒ぎになっているようです』
『ふむ。本当であったか』
王、ジョルダンはしばし考え、
『では、そなたたち勇者様とそのご家族は、明日、一度祖国に戻り、身辺整理をしてまいれ。期間は明日1日。期限が来たら、そなたらを再び強制的に召喚する。異論はあるか?』
『いえ、ございません』
『では、明日1日は祖国に里帰りを許すものとする。それでは、例の物を』
王の従者から1人1人にブローチが渡される。
『それを目印に召喚をかける
『王よ、お伺い致します。魔王討伐にはどれくらい期間がかかるとお思いですか?』
『年単位で期間がかかるものと思われる』
『分りました。それではそれを踏まえて身支度します』
パティーメンバーには、作戦会議はまた後日することを伝え、謁見の間を後にした。
客室に戻り、着替えた後、子供たちを寝かせ付けて、
「
「それなら私は子供たちの手続きに走るわ」
「マスコミに見つかったらどれくらい時間を取られるか分らん。見つからないようにな」
「うん。分ってる」
夫婦間でちょっとした会議の後、就寝することにした。
*
次の日、日本で着ていた服に着替えて、ブローチを付け、あの召還時に初めに来た場所へ、キャンピングカーごと乗った。あのときは薄暗かったし、車からあまり降りなかったので分らなかったが、地面には複雑な魔法陣が描かれている。
『それでは今日1日里帰りをお楽しみ下さい』
あのときのように灰色のローブを着た人達に囲まれた。彼らは何やら呪文を唱えているようだ。
そのうち、視界が
気付けばあの日、寄ろうと思っていたパーキングエリアの駐車スペースに停まっていた。
「あなた、帰れたのね」
「ああ、帰れた」
それから車を運転し、自宅にキャンピングカーを停めて、
「俺は辞表を書いて会社に提出してくる。子供たちの面倒を見させてしまって済まない」
「いいわよ別に。それじゃ、私も忙しいからあなたも気をつけてね」
それから自室で辞表を書き、スーツに着替え、会社に向かうのであった。
「いきなり何の連絡もなく休み、いきなり辞表か!君は会社を何だと思っているのかね!」
部長にこってりと
会社を出てすぐ、妻に電話した。
「
「ううん、こっちは大丈夫。あなたは家に戻って例の買い物をしてちょうだい」
俺は家に戻ってキャンピングカーに乗り、ここら辺で一番大きなキャンプ用品店に向かった。
*
景色が歪み、灰色のローブを着た人達に囲まれた。あぁ、ザガンガに戻って来たのだなぁ。
俺はすぐさま、妻よーし、
『身辺整理は済んだかな?』
『えぇ。しかし、あちらに
『無理をさせて済まない』
王への帰国の挨拶を済ませ、パーティーメンバーを集めて作戦会議をすることにする。
『私は、このまましばらく東門で鍛えてから次に移るのが得策ではないかと思うのです』
俺は、ジョルダンの意見を受け入れ、しばらく西門を出たところで戦闘経験を積むことにした。
そして数日後、家族は徐々に討伐練習にも慣れ、パーティー全体が、次の、もっと強い魔物の居る場所へ移ることにした。
『次の場所は、城から少し遠く、野宿することになります』
ジョルダンはそう言った。
『分っている。そのために我々も準備してきた』
城の従者にしばらく城下町から離れることを伝えると、薬草やら魔力回復やら薬類をしこたまもらった。
次の日、身支度を調え、朝食後、
『車を回してくるのでここで待機』
と、パーティーメンバー全体に伝え、車を回してきた。
『
『ジョルダン、着いたら言ってくれ』
助手席のジョルダンに声をかけ、お目当ての場所まで走る。
『この辺りならいいでしょう』
そこは街道から離れ、森のほど近く、一応、草原である。俺は、草原に何故かぽつんとそびえ立つ大きな木の下に車を停め、皆を降ろした。
『それではまず、野営の準備をしてから狩りに向かおうか』
俺たちは車のルーフからテントを取り出し、組み立てた。そして、寝袋をルーフから取り出し、車の中へ放り込んで鍵を閉めた。石をひろい集めて簡易かまどを設置し、野営の準備は終わりとした。
『たき火の
そして、「私が足を引っ張るわけにはいきません」と、家族以外で戦闘に慣れていないステインが、討伐練習に参加を表明し、日が傾くまで討伐練習をし、日が傾いた頃に
食事を終え、まだ夏の暑い盛り、寝袋は
『女性と
家族以外のパーティーメンバーにはやれ夜番だとか警戒心が足りないとか言われたが、とりあえず、今日は夜番はナシ。
こうして、初めて野営で眠るのであった。
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