第1節

畦道を自転車で走り抜ける、我ながら器用だと思う。田んぼを抜けて道路に出ると、雲の隙間に青が覗いた。くすんだ赤の郵便ポストが少しだけ光を放っていた。夏が迫っている。


今日、学校から進路調査票が渡された。皆口々に希望を語り、進学やら就職やらで悩んでいた。俺は誰かに聞かれるのが嫌で、そそくさと教室を後にする。第一希望欄には「東京」とだけ記していた。


尖っている。恥ずかしい奴だ。でも、そんなことは気にならないほどに東京に惹かれている。東京には自分の望む景色があることを予感しているから。


  


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る