第8話傾向と対策
3回目:栄大道りを渡ろうとしたときに、法定速度を超した車によって後ろから衝突され青銅鋼が死亡。
5回目:キッチンが出火元になり、近所の女性1人が死亡。
28回目:病院で男性が死亡。
俺に与えられるヒントは夢をみる回数を重ねるごとに少なくなっていった。死因や現場だけが与えられることも珍しくはなくなった。しかし夢の中で檻に囚われた死亡宣告を受ける人の顔を毎回見ている。そのため顔だけで当人を確定させる手段はそれなりに身についている。ところが今回はそのクイズともいえるような作業が求められてはいない。求められているのは『こもりさんの様な人間』の推測とその対策だ。
ゆうかとの話合いでは俺の正夢をみる能力の希少性にひかれ、俺のような人間とは特別な能力を持つ人間が襲ってくると推測している。しかし例えば俺のように、これまで引きこもりだった人間に包丁で……という可能性も少なくない。そのためその可能性も考慮したい。
「どうしたの?こもりん」
「なんでもないよ」
腹をくくったせいか、頭が回る。
「やっぱりいい?」俺は考えていることを全て話した。これまでの夢の中で与えられてきたヒントと既にあげたように命を狙ってくる人間を特別な能力を持つ人間だけに絞らない方がいいこと、特別な能力についてだ。
「そんなこと初めて聞いたよ」初めて言うからねという俺の言葉を無視してゆうかは樹形図を描き始めた。命を狙ってくる者のことであろう「ターゲット」と書かれ三本線で分かれている。特別な能力を持つ人と引きこもり、もう一つはXと書かれている。これまでに挙げた俺の特徴の2つである特別な能力と引きこもりである可能性が高いが、ヒントが少ないことからそれ以外の俺と共通点を持つ人間をXとしたらしい。ところがゆうかには大きな疑問があるらしい。
「その正夢って本当にこもりんが自然とみているもの?」
「人の夢なんて他人に操作できるかよ」
「でもそもそも本当に正夢なんてあると思う?」
これまで見た夢のことを教えたにも関わらず、俺が今まで苦しみ、ひきこもりの原因である正夢の存在自体を疑いだした。虚言癖があるとでも言いたいのか。
「こもりんが嘘ついているとかそういうのじゃないよ。でもさ……落ち着いて考えたら正夢をみるって現実的じゃないよね?」
「いやでもこれまでみてきたんだし、ゆうかの親だって‼」
「それは分かっているよ。でもさ実は人間離れした能力持っているってまるで夢みたいな話じゃん」
「まずそこから考えようよ。こもりの正夢ってのが本当なのか」
まさかの展開だった。
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