第44話 束の間の休息
悠貴達が魔王領へ帰還して3日が経った。
「どうしてこうなった…」
悠貴は現在首都バベルより、北西へ100キロ程行ったところにある、温泉宿の温泉に浸かっていた。
何故悠貴が温泉宿に居るのかを知る為には、前日の夕方頃まで遡らなければならない。
「参謀様、バルバ様、防衛部隊の配置、完了致しました!」
「ご苦労。見張りの連中に、引き続き警戒を怠るなと言っておいてくれ」
「はっ!承知致しました!」
「次の奴、報告してくれ」
「防衛拠点へ送られる兵糧に関してですが…」
悠貴は魔王領へ帰還し魔王やバルバ達と色々と話した後、対ロゼ王国に用意された部屋で、未だロゼ王国に潜入しているシュリからの情報を基に、バルバとアレコレ対策を講じる。リース以外のグリオスの隊長へ、作戦内容の説明。レガレスとアルゴ、ファニスの3人と打ち合わせ。侵略予定地、侵略されそうな村や町を予測、防衛部隊の編制等を行っていった。
「失礼致します」
報告に来た魔人族の兵士が部屋を出たのを確認した悠貴は軽く溜息を吐いた。
「ユキ殿、大丈夫か?」
「問題ない。それにもうすぐロゼ王国の連中が攻めてくる。それまでに出来ることは全てしないといけないからな」
「だが、もう3日も働き詰めているだろう?」
「バルバ、それはお前も同じだろ?」
「いや、我は途中で休ませてもらっていたぞ」
「そうだったか?まぁ、俺は昔から寝ずに色々やる事が多かったから、数日徹夜したところで身体に影響は出ないから安心しろ」
「だとしてもだな……そうだユキ殿」
「いきなりどうした?」
「ユキ殿、温泉は好きであるか?」
「は?」
そして、次の日悠貴はバルバとレイリスによって、魔王領にある最高級の温泉宿へ拉致された。
◇
「おいバルバ。悠長に温泉に浸かっている暇なんて無いだろ。さっさと魔王城に戻るぞ」
温泉から出ようとしたらバルバが慌てて止めに来た。
「待て待てユキ殿!明日はロゼ王国軍の侵攻開始予定日。出来る限りコンディションを整えておかないといけない。だからこそユキ殿には、ここでリラックスしてほしいのだ。それにユキ殿の補助に就いている士官の3人が今、代理として頑張ってくれているから心配しなくていいぞ」
「そうだぜユキ。それに魔王城に戻ったところで、レイリス様かバルバ隊長がここに連れ戻すから魔力の無駄になるから大人しくゆっくりしとくのがいいんだぜ」
「そうですぞ参謀殿」
……仕方ない。暫くここでのんびりしておくとしよう。
が、ここには俺とバルバ、アルゴ、レガレスしかいない。軽く作戦会議しておくか…
「そういやバルバ。俺が作った例の物は無くしていないだろうな?」
「アレであるな。もちろん無くしていないぞ。この間捕らえた人間の女性が、我の元へ勇者と共に来た場合使えば良いのだな?」
「それで良い。奴等が行っていた決起会で、勇者達はお前や俺にぶつけてくると言っていたからな。その時に使ってくれ。上手くいけば面白いものが見れるぞ」
「それは本当かい悠貴!?」
「うおっ!?」
「じゃ、邪神様!?」
俺の隣にいきなり現れたのは邪神ズワルトだ。相変わらず俺のすぐ傍で隠れているんだな…
「上手くいけば、だズワルト。それより、ここは温泉だ。服脱いでから入ってこい」
「さ、参謀殿、突っ込むところがそこであるか……」
「アハハ、ごめんごめん」
ズワルトが、何らかの魔方陣を構築すると、一瞬でズワルトが着ていた服が消え去った。そしてそのまま温泉に浸かった。
「ふぅ~、久々の温泉だよ」
「そ、そうですか……」
「話を戻すぞお前ら」
「ユキは相変わらずマイペースだなぁ……」
それから約30分程雑談を続けた。内容はロゼ王国にいる二つ名持ちの冒険者と不知火嘉音、勇者達についての情報。ロゼ王国軍の警戒すべき人間の情報。その他、魔王領内に事前に仕掛けておいた
「ユキ殿、我等はもう上がるぞ」
「ユキのぼせるなよ?」
「後でまた話しましょうぞ参謀殿」
「あぁ、また後でな」
そう一言ずつ言うとバルバ達は出て行った。ズワルトは話している途中で何か用事を思い出したのか何処かに行ったから既に居ない。
1人になった俺は少しばかり涼もうと、湯から身体を出し、足だけ湯に浸けたまま腰掛ける。
そのまま5分程涼んでいると、背中に誰かが抱き付いてきた。
「何してんだレイリス?」
「もー!少しはテンパりなさいよユッキー!」
抱き付いてきたはレイリスであった。お前は一体何してんだ……男湯だぞここは…
どうしたもんかと考えていると、更に2人増えた。
「ユキ、髪と身体洗って?」
「隊長達はもう居ませんね。フフフ……」
増えたのはシエスとファニスだ。
「お前ら、ここ男湯だぞ。どうなっても知らんからな俺は」
「今日はあたし達の貸し切りだからね。それに、宿屋の人に今日だけ混浴にしてもらえるよう頼んだのよ。だから問題無いわ!」
ドヤ顔しながら言い切ったレイリス。因みに全裸だ。
「あっそ。シエス、髪なら洗ってやる。あっちに行くぞ」
「分かった」
湯から上がり、身体を洗うスペースへシエスを伴い移動する。
「ちょ、あたしも!」
「わ、私もです!」
シエスを風呂椅子に座らせ、湯の出る魔道具を使いながら髪を洗い始める。台に置いてあるシャンプーみたいな液体を手に付け、軽く伸ばした後シエスの髪に付け、馴染ませていく。
「ん……やっぱりユキが髪を洗ってくれるのは良い」
「そうか?」
「ユッキー、シエスの次はあたしよ」
「最後は私ですユキさん!」
「洗ってやるから少し待ってろ」
シエスの髪を洗い終わるとレイリス、ファニスの髪を続けて洗ってやった。途中身体も洗ってくれと言われたので、望み通り洗ってやった。
「ふあ~、ユキさんの手付き、とっても素晴らしかったです!」
「だよね~、ユッキーの手は神の手だわ!」
「抱いてもらっている時も同じ感じなのですか!?」
「その時はもっと凄いわよ。特にゴニョニョ……」
「……いいなぁ、わ、私もしてほしい…」
「何言ってんだこいつ等…」
「ユキもっと抱き締めて」
「あぁ……」
ここ数日魔王城に缶詰になっていたせいか、シエスがいつもより積極的だな…
と、ここで、猥談が終わったのか、俺の腕の中に収まっているシエスの姿を見たレイリスとファニスが声を上げた
「シエスってばずるい!あたしも!」
「私もお願いします!」
「おいこら、危ないから飛びついてくるんじゃねぇ」
それから約1時間後に温泉から出た。部屋に戻ると、バルバ達がいきなり「大丈夫だったか?」と訊いてきた。何故大丈夫か訊いたのか判らなかったが、大した理由じゃないだろう。
さて、仕事を再開しないとな……
◇
温泉宿で束の間の休息を取った悠貴は再び魔王城へ赴き、明日から始まる防衛戦の準備の最終チェックを行っていた。
「仕込みの魔方陣はOK、各防衛予定地への人員、兵糧、武器、魔道具の輸送もOK。俺の部隊、バルバの部隊の準備も一通り終わっている。一先ずは大丈夫か……」
「やぁ、悠貴。準備は順調かい?」
「ズワルトか。最低限の準備は終わっている。イレギュラーな事が起きない限りはおそらく問題無い。まぁ、そのイレギュラーが起きた場合は俺の部隊で対応する予定だが……」
「それを聞いて安心したよ。取り敢えず僕は、あの人間の女がどんな顔をするのか楽しみにしておくよ」
「あぁ、楽しみにしておけ。(近くに不知火が居たらどうなるかは判らないけどな……)」
「うんうん、それじゃあ僕は戻るね。仕事も程々にしなよ」
「余計なお世話だズワルト」
「アハハ、それもそうだね。君は幼少期からずっと1人で頑張っていたもんね。それじゃあまた明日」
ズワルトが消えると、悠貴は小さく呟いた。
「幼少期の俺を知っている…まぁ、知っているから何かある訳でもない。仕事するか……」
再び1人になった悠貴は、テキパキと作業を進めていった。
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大変お待たせしてしまい申し訳ございませんでした。
全てはエルデンリングが悪いのです。あのゲームのせいで執筆活動をサボっていました。
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