第21話
二十三、
〈とりかえばや〉ーー。
「さすがに詳しいな」
マルガの
ふん、とマルガはそっぽを向いた。
「
そういって、ボルを指差す。
「〈黒夜党〉の
「元、
「〈
ラムルが目顔で訊ねると、ボルは顔をしかめた。あまり話したい風ではなかったが、渋々説明をし出す。
〈
「ーーおれは〈夢繰り〉をつかって、〈黒夜党〉の引き込み役をしていた。
「……」
ラムルも、ボルの詳しい来歴は初めて聞くようだった。ボルは続ける。
「
マルガの異能力は、アクバから助けてもらったときの様子で薄々気付いていた。彼女は
「
マルガが柳眉を逆立てて身構えた。タルガ
「もう沢山だ! そこまでにして貰おう。いがみ合っている間などないのだ」
ラムルが割って入ったが、逆にマルガに食ってかかられた。
「偉そうにお言いでないよ、旦那。
「口がすぎるぞ」
ボルが気色ばむが、マルガの
「
サラは思わず唸った。マルガの指摘は鋭いものだった。ラムルに聞いたのだが毒殺は本来、判別するのが困難な暗殺方法らしい。天然自然の毒物は、入手が容易な上に種類とその投与方法は多様で、いかなる種類の毒がどのような手段で用いられたのかを特定するのは不可能に近いのだ。そしてガイウスの死が太守
ラムルが考え考え答える。
「アルキン殿に探りを入れてもらったところによるとーーアルキン殿には
「出来過ぎた話だな」
ボルが言う。
「まさしく。だがいずれにせよ、それで毒飼いは事実だと判断が下されたわけだ」
「それじゃあ、それはいいとしよう。だが殺し方はともかく、アクバって奴はそんな大それた陰謀をめぐらす相手なのか? だって旦那たちを襲った〈
ボルが訊く。
「そこが一番の難問だな。とにかく上つ方の利害関係は複雑怪奇だ。それこそ事情通のアルキン殿に聞かねば」
茶碗を
「前太守の
「
マルガが、
「ザビネさんは、なにを知ってしまったのかしら」
サラが口にした疑問に、ラムルが答えた。
「アシド家を恐喝していたのは間違いないようだ。そして殺された。それだとアシド家が
「アシド家は自らお上に訴え出ています。まさかあの家の者が殺したとも思えないけど」
そうサラは言ったが、よもやそれすら
ボルがため息をついた。
「それでこれからどうするね、旦那」
「うむ。まずジクロとジナさん救出する手立てを考えるのがひとつ。アクバの身辺を洗う線がひとつ。あとはハーリム医師の行方をたどる線がひとつ。この三つを考えておる」
「ハーリムがまだ生きていると思う?」
サラが訊く。
「確信はないがね。ただ、ガイウス様は剣によって害され、ザビネは
「やっぱり、ハーリム医師だけは自分の意思で逃げ出したということ?」
「ああ。だからハーリム医師を見つけることで多くの疑問の答えが出る、と思う」
そこでだ、とラムルが懐を探った。折りたたまれた紙片を取り出す。
「これは、ハーリム医師の隣人の
ハーリム医師を探すにあたってラムルは、人相書きを描かせたらしい。
「ガスコン殿の紹介の町絵師に頼んだのだ」
「それで、この絵の顔なんだが……どうも見覚えがある気がするんだ……何か思い当たることはないかい、サラ?」
それは
じっと見つめているうちサラの脳裡で火花が散った。目の前で、似顔絵の輪郭と記憶の中の人物の輪郭とが重なった。頭が熱くなり喉がカラカラになった。
「どうした?」
ラムルが訊いてくる。
サラはこの顔を
「そうか!」
サラの話を聞き終えてラムルは、強く頷いた。
「東門付近を迂回すれば、バソラ邨を目指せるなーー」
道は決まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます