エキセントリックなヤンデレお嬢様後輩からバレンタインのチョコレートをもらって食べたら意識を失ってしまい気がついたら無人島に監禁されていたトゥルーハッピーエンドなラブコメ

秋月一歩@埼玉大好き埼玉県民作家

エキセントリックなヤンデレお嬢様後輩からバレンタインのチョコレートをもらって食べたら意識を失ってしまい気がついたら無人島に監禁されていたトゥルーハッピーエンドなラブコメ


「うぅ……あ、あれ? ここはどこだ?」


 目覚めた俺は、異変に気がついた。

 輝く太陽。青い空。白い雲。ザザーンと打ち寄せる波の音。

 暑い、暑すぎる。じっとりと汗ばんだ肌に砂が付着している。


「……海……? 夏……?」


 俺が住む埼玉は今は冬だったはずだ。

 そもそも、埼玉に海はない。それがなぜこんなビーチに俺はいる?

 そんな俺の疑問に答えるように――俺の目の前に女子が現れた。


「先輩、先輩♪ お目覚めですか?」

「うぇっ!?」


 俺の目の前に現れたのは――裸族だった。

 いや、正確には……胸と股間部分に貝殻をつけた水着(?)なので全裸ではない。


 目の前のエキセントリックな格好の首から上だけは清楚可憐な黒髪ロング和風美少女は須藤可阿子(すとうかあこ)。俺の通う高校の後輩かつストーカーだ。


 なお、幼稚園の頃から可阿子にストーカーされ続けている。

 ストーカーされ歴12年目である。


 俺の周りの女子はいつも可阿子によって排除されてしまい、俺は可阿子以外の女子とほとんど話すことができなかった。女教師も例外ではない。

 なぜそんな無茶なことがまかり通るかというと、可阿子は富も地位も権力もある財閥の令嬢なのだ。


 そんな生粋のお嬢様がどうして庶民の通う保育園に入ってきたかというと……公園の砂場で遊んでいた当時の俺(当時5歳)に一目ぼれしたかららしい。


「先輩! これからはこの無人島でゆっくりと愛を育んでいきましょう! もうわたしたちの邪魔をする者はどこにもいません!」


「いや、待ってくれ。これは本当にいったい、どういうことだ? 俺は確か……おまえからもらったバレンタインのチョコレートを食べたはずだが……」

「超強力な睡眠薬入りです♪」

「そうか……」


 それだけで理解した。眠らされた俺は南の島に連れてこられたわけだ。

 富・地位・権力の使い方を絶対に間違っている。


「わたしは十二年も待ったんです! もうこれ以上は待てません! 先輩、わたしと結ばれましょう! さあ、まずはこの最高のロケーションでキスを!」


 がばっと両手を広げて砂浜を駆けてくる可阿子。

 だが、俺はそれを華麗にかわした。


「へぶしっ!」


 可阿子は砂浜に顔面から突っ込んでいった。抱き留めなかった俺に非はあるかもしれないが、抱きとめたが最後一気に既成事実までいきかねないので仕方ない。


「待ってくれ。だから俺はおまえのことは恋愛対象じゃないんだ」

「ひどい、ひどいですよ、先輩! わたしがここまで想っているというのに!」

「いや、愛が深すぎて怖いんだ。現に睡眠薬飲まされて無人島に連れて来られてるし」


 いくら美人でも監禁生活は勘弁だ。


「そもそも俺よりいい男いるだろ?」

「わたしは! 先輩じゃないと! だめなんです!」


 砂まみれになったまま鬼気迫る表情でシャウトする可阿子。

 色々と美人が台無しである。


「ともかく! わたしは! 絶対に! 先輩を! 逃がしません! そのための準備を! しっかり整えてきました! 見てください!」


 可阿子がガバッと手を向けた方角は、小高くなっている場所。

 そこには――家があった。真新しい白亜の別荘風建築物である。


「ここが先輩とわたしの愛の巣です! わたしの買い取ったこの島で! この新居で! ひたすら愛を育むだけの日々を送りましょう!」


 やっぱり富・地位・権力の使い方を間違っている。

 というか、可阿子は言動も行動もエキセントリックすぎて恋愛感情が湧かないのだ。


「…………先輩。…………ここまでしても、わたしのことを恋愛対象として見られないですか?」


 無言の俺を見て、可阿子の表情が曇った。

 いつも快活そのもので暴走している可阿子の泣きそうな顔。


 それを見た瞬間、罪悪感が芽生える。

 そして、俺はずっとこいつと真正面から向き合うことから逃げていたことに気がついた。


 まぁ、愛が深すぎて怖いというかホラーなのだが……でも、俺はなんだかんだで可阿子と一緒にいることが嫌いではなかった。そして、可阿子の泣きそうな顔を見るのがなによりも嫌だということがハッキリわかった。こいつには、いつまでも笑っていてほしい。


「……俺は、おまえにずっと甘えていたのかもしれない。でも、これからは……おまえを好きになる努力をする。というか、ひとりの女子として見る努力をする」


 今まではギャグキャラとしか見ることができなかった。存在自体がエキセントリックだったから。

 でも、これからは――。


「あらためて友達からよろしくな」

「いえ、彼女からよろしくお願いします!」


 燦燦と輝く太陽の下、俺は元ストーカーのエキセントリック美少女と普通の恋愛をするべく一歩を踏み出したのであった――。

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