とうとう怪異を閉じ込める匣を手に入れた。

 それを少年期、長期休暇の際に滞在していた別荘の更に山奥に棲んでいた山女に渡す。一族からすれば小さい方らしい。好きな物を入れてくれと言えば素直に受け取ってくれた。純朴な性格は大層気に入っているが、それだからこんな底意地の悪い人間に捕まるのだ。コンコンと匣の中から緊張感のないノックが聞こえる。暇潰しになる物を入れてなくてごめんな、新しい家に着くまでもう少し辛抱してくれ。

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