第164話 万事休すか!
<テツ>
俺もそろそろ疲れてきた。
何度突っ込んだだろうか?
ディアボロスをかすめそうだが、当たらない。
だが、動きを封じてはいるようだ。
しかしなぁ・・その場で突きを繰り出しても無謀な感じがする。
速度と威力、それの連続攻撃くらいしかこの魔族を抑える方法を俺が思いつかない。
バカの一つ覚えだが、取りあえず有効なようだ。
俺が方向を変えてディアボロスに突っ込んだ時だ。
!!
俺の足に何か半透明のようなモヤというか手というか、そんなものが絡みつく。
俺の動きが鈍ってしまった。
ディアボロスがその瞬間を見逃すはずもない。
ディアボロスの魔剣が俺目掛けて突っ込んでくる。
俺がやっていた攻撃方法を、今度はディアボロスがやろうというのか?
あの黒い魔剣・・当たったら痛いだろうな。
痛いのは嫌だな・・。
ん?
俺って超加速のスキルを発動していないぞ。
なんでこんなにたくさん考えていられるんだ?
・・・
これって、死ぬ瞬間の・・。
クッ!!
俺の身体に魔剣が刺さりそうになった時だ。
ガキィーーン!!
ディアボロスの魔剣と俺の間に壁が出来ていた。
いや、正確には盾があった。
!!
「なに?」
ディアボロスが驚く。
急いで辺りを見渡す。
こんな盾を持っている奴はいなかったはずだが・・。
レオやアンナは同じ場所でジッとしている。
クララにしても動いていない。
すると、声が聞こえて来た。
「危なかったですね、テツさん」
「うん! やっと私たちもお手伝いできたわね」
俺もその声の方を見た。
!!
ケンとリカだった。
ケンが歩きながら俺の方へ近寄って来る。
ディアボロスも魔剣をそっと降ろし、ケンたちを見ている。
「テツさん・・言いたいことは山ほどあります。 俺たちにも一言欲しかったなぁ」
ケンが微笑んでいる。
「そうそう」
リカもうなずく。
「で、その剣を持っている奴が悪玉ってわけですか」
ケンがつぶやく。
ディアボロスが笑う。
「フフフ・・何が起こったかと思えば、エサが増えただけか」
ディアボロスの言葉を聞きながら、リカが話す。
「嘘は・・言ってないわね」
ケンが思わずリカを見た。
「リカ・・あのなぁ・・」
「だって仕方ないでしょ。 そういうスキルなんだから」
俺は思わず笑ってしまった。
「ハハハ・・リカさんらしいや」
「あ~! テツさんまでまたバカにして・・」
「いや、そういうわけじゃないよ・・とにかく助かったよ、ありがとう」
俺の言葉にケンたちが微笑む。
「えへへ・・」
「はい」
俺はディアボロスからゆっくりと距離を取り、ケンたちのところへ近づいていく。
ディアボロスは動かない。
「ケン君、あの盾、凄いね」
俺は思わず聞いてしまった。
「はい、僕の宝具です」
ケンの言葉に合わせて小声で俺はつぶやいた。
『ケン君、あの魔族を倒すのは難しいようだ。 だが、仕掛けはセットしてある。 とにかく動けなくなるはずだ。 だが、それを発動するには3秒・・いや5秒は集中する時間がいる』
俺がそこまで話すと、ケンがディアボロスを見ながらうなずく。
『えぇ、わかっていますよ。 時間を稼げばいいわけですよね?』
もはや俺に言葉はない。
この集団の中では、俺に次いで強いのはケンたちなのは間違いない。
『すまない・・頼む』
俺がそう言うと、ケンとリカはにっこりとしてうなずいた。
「テツさん・・その言葉を待っていたんですよ」
ケンが答えるとリカも言う。
「そうですよ、私たち同志じゃないですか」
「リカさん・・ありがとう」
「え? リカ・・同志って言葉知ってたのか?」
「ケン・・後で時間もらうわよ」
リカがムッとした顔でケンを見る。
俺は集中し始める。
1秒も無駄にできない。
「リカ、行くぞ」
「うん」
ケンとリカがゆっくりとディアボロスに向かう。
「フン・・虫けらが」
ディアボロスからドス黒い雰囲気と言葉が漂う。
ケンが片手を挙げると盾がケンの腕に戻って行く。
ディアボロスがチラッと俺を見つつ、ケン君たちに集中する。
リカがディアボロスに向けていきなり発砲した。
リカの武器はどうやら銃のようだ。
ドン!
ドン、ドン、ドン!
ディアボロスは魔剣で自分にヒットするであろう軌道を逸らせる。
「あっれ~、あの魔族凄いね」
「リカ、そんなことはわかっている」
ケンがそう言うとディアボロスに向かって足を速めた。
3秒経過。
俺は目を閉じ、意識を集中させている。
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