第161話 ディアボロスと対峙



「フフフ・・無駄な話は必要ないか。 それでどうするのかね? まさかと思うが、私と戦おうなんて思っているのではあるまいな?」

ディアボロスが聞いてくる。

俺たちを見渡して言葉を続ける。

「見たところ、テツとその女・・それ以外は戦う意思すらないではないか。 無論、全員と戦っても今の私に勝つのは不可能だろうがな」

「どうかな・・やってみなければわからないという言葉がある」

俺が言うとディアボロスが笑う。

「フフフ・・その言葉は無意味だな。 前に出会った時にはわからなかったが、今の私はより強くなっているのだよ。 強力な魔素を得たものでね」

俺が不思議そうな顔をしたのだろうか、ディアボロスが笑いながら話す。

「今の私は気分がいい。 これだけの供物が集合しているのだ、間違いなく魔王の喉に届くだろう。 テツたちのお仲間かな・・テンジンという人物の魔素は吸収できなかったが、他の帰還者は喜んで私に協力してくれたよ」

ディアボロスの目が赤く光る。

「な、何?」

俺は思わず驚いた。

なんでディアボロスからテンジンの名前が出てくる。

いや、わかっている。

こいつがテンジンを殺ったのだ。


俺は冷たいのだろうか。

ディアボロスにテンジンがやられたというのに、腹が立つわけではなかった。

その言葉だけを聞いていた。

アリスだけが逆上したようだ。

気持ち悪さよりも、激しい怒りが勝ったのか?

「き、貴様ぁ!! 貴様がテンジンを殺したのか? こ、このぉお!!」

アリスがゆっくりと起き上がろうとする。

・・・

見るからに無理だ。

アリスでは戦えない。

俺はゆっくりと歩いてアリスの傍に行く。

「アリス・・戦えば吸収される。 この場でいるんだ」

俺はそう声をかけ、ディアボロスを見る。

「ディアボロス・・俺も戦いたくはないが、引けない時というのがある。 今がその時なのではないだろうか。 お前に吸収されるくらいなら死を選ぶ。 それに・・」

俺はそう言って、ホーリーランスを取り出した。

その瞬間、ディアボロスの顔つきが変わる。

真剣なまなざしで俺の武具を見る。

「なるほど・・宝具か・・」

ディアボロスと俺の間に、妙な緊張感が走る。

クララは微笑みながら俺の傍に来る。


戦闘は俺がメインだな。

クララがどう動くのかわからないが、俺を援護してくれそうだ。

後は・・ダメだな。

動かれるだけ邪魔になる。

「アンナ、レオ、アリス・・その場で防御に徹してくれ。 その方がディアボロスに対して牽制になる」

俺の言葉に皆がうなずく。


ディアボロスは思っていた。

人間は追い詰めれば自爆する。

あまり追い詰めすぎてはいけない。

せっかくの獲物だ。

失うのは惜しい。

さて・・戦えるのはテツとあの女くらいか・・。

後はどうということはなさそうだ。

特にテツさえ倒せば、もはや食事タイムだな。

テツの魔素は惜しいが、他の全員分をいただければ余りあるだろう。

・・・

よし!

ディアボロスはそう決意すると、テツを見つめる。



<テツ視点>

ディアボロスの雰囲気が変わったぞ。

俺はホーリーランスを構えると息をゆっくりと吐く。

ふぅ・・。

ダッ!

脇を絞って一直線にディアボロスを貫く。

無駄な動きはないはずだ。


ディアボロスも驚いたようだ。

俺のホーリーランスがディアボロスの頬をかすめる。

俺はそのままランスを引きつつディアボロスの躱した方へ軽く振る。

ディアボロスの額をかすめる。

俺はランスを持ち直すとディアボロスを見た。

何とかなりそうだ。

俺がそう思った瞬間。

ディアボロスの顔からは余裕が消えていた。

そして、額と頬から血がにじみ出ていた。

だが、すぐに回復。

前言撤回!

これは厳しい戦いになりそうだ。


<ディアボロス視点>


なるほど・・あの宝具、危険というわけか。

だが、問題あるまい。

所詮は人間。

ディアボロスは自分のアイテムボックスから黒い剣を取り出す。


「テツ、あの黒い剣は危険だわ」

クララが教えてくれる。

アリスたちは動けないままだ。

「あぁ、何となく嫌な感じがする」

俺はディアボロスを見つめながら答える。


「テツよ・・貴様の経験値は惜しいが、仕方あるまい。 死ね」

ディアボロスがそう言葉を出すとアリスたちの方へ移動。

!!

「し、しまった!!」

俺は超加速を発動する。


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