第154話 アメリカ



車はそのまますぐにディアボロスの前に出て停車。

大きな男が車から降りてくる。

全員覆面をしている。

合計5人の男たちがディアボロスを囲む。

「金を出せ」

5人組の男の中の1人が言う。

ディアボロスは黙って見つめている。

「おい! 言葉がわからないのか! 金を出せと言ってるんだ!」

大きな男は荒々しく声を大きくして言う。

ディアボロスは黙ったままだ。

「ほんとにこのおっさんなのか、えぇ、ベン!」

「おい! 俺の名前を呼ぶな!」

「チッ! おらぁ、おっさん金だよ、金!」

男の中の1人がそう言って銃を向けたまま片手を伸ばす。

!!

片手を伸ばした男は何が起こったのかわからない。

自分の腕の肘から先が消えていた。


「な、なんだ?」

腕が消えた男がつぶやく。

「おい、どうしたんだ?」

横にいた男が声をかける。

「う、腕が・・俺の左腕が・・ないんだ・・」

男の声に、聞こえた者達がその男の方を見る。

!!

「マ、マジかよ・・消えているぞ」

「な、なんだ? どういうことだ?」

それが最後の言葉だった。

声を出した男たちは服を残したまま消えた。

銃が自由落下で地面に落ちる。

ゴト・・。

!!

その服の横をディアボロスが歩いて行く。

続けざまに2人の男たちも、服を残したまま消える。

それぞれの服がヒラヒラと地上へ舞い落ちた。


ディアボロスから10ドルをもらった大きな男、ベンはただ立ちつくしている。

「な、何だ? 消えた?」

ディアボロスは何も言うこともなくベンの傍に来た。

そっとベンに触れる。

次の瞬間、ベンも服を残したまま消えていた。

ディアボロスは何事もなかったかのように歩き出す。

「さて、この先に魔素の持ち主がいるようだが・・」


<テツたち>


テツたちを乗せた航空機は、何事もなくアメリカに到着していた。

ケンたちは既に到着をして、学校の行事予定通りに動いている。

まさか俺たちの近くで学校行事が行われるとは、偶然と呼ぶには出来過ぎている。

だが、そういった偶然は起こるべくして起こるともいう。

どうせ人間の把握できるシステムには回答はない。


ケンたちはワシントンD.C.を見学するらしい。

ペンタゴンなんてその南方すぐだからな。

俺たちのすることは神崎の業務調整に従うだけだ。

とはいえ、ディアボロスの捜索が目的だが。

今の所、そんな魔素は感じない。


俺たちは街を散策している。

神崎はペンタゴンでのサラの後任に面会する手続きを取っている。

30分ほど時間ができた。

俺は歩きながら聞いてみた。

「クララ、妙な魔素を感じるかい?」

「う~ん・・感じないと言えば感じないし、妙な感じと言えばあるようなのよ」

「え?」

俺は驚く。

「ほ、ほんとか、クララ。 俺には全くそんな感覚はないけど・・」

「うん・・何ていうのかな・・喉のところに何か引っかかっているような感じなの。 これが危険なものかどうかわからないのよ」

クララが難しそうな顔をして答える。

「で、その感覚ってのはどこで感じるんだ?」

俺は続けて聞いてみた。

「それがね・・そんなに遠くではないのよ。 はっきりとはわからないけど、北の方ね」

クララがぼんやりと答える。

俺はその言葉を聞きながら考えていた。


どうする?

すぐに移動した方がいいのか?

いや、サラの後任に会うのがまずは目的だ。

そんなことを考えていると、俺の携帯が鳴る。

神崎からだ。

『はい、佐藤です・・えぇ・・はい、わかりました』

俺は携帯を切ると、クララの方を向く。

「クララ、神崎からだったよ。 面会できるんだって」

「あ、そ」

「・・ペンタゴンって、あれだろ? 俺たちその近くをウロウロしていたから・・じゃ、行こうか」

俺は建物に指を向けてつぶやいていた。

クララはつまらなさそうな顔でついてくる。


神崎の案内で施設の中に入ることができた。

大きな建物だ。

俺たちは、ただ神崎について行く。

俺は建物の規模や設備に驚いていた。

・・

やはりアメリカ。

何でもビッグサイズだ。

戦争に負けたことがない豊かな国、そのイメージのままだ。

完全におのぼりさん状態になっている。

向こうの世界でも王宮などに行った時はこんな感じだったな。

いくら強くなっても、元が元だ。

まるで神崎のお手伝いさん状態に見えたんじゃないか?

クララは平気で歩いているし。

そうこうしているうちに神崎がある部屋の前で止まる。


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