第143話 サラの後任
◇
<サラを撃ったヒットマン>
任務を終えてとある場所に来ていた。
「完了した。 残りの報酬をいただきたい」
ヒットマンはそう言いながらマイクロSDカードのようなものを取り出す。
事務所では3人の人間がいた。
ヒットマンからカードを受け取った人間がポータブル機器にSDカードを差し込む。
・・・
映像が映し出される。
サラを撃つシーンだ。
プシュ、プシュ、プシュ・・・。
サラに銃弾が撃ち込まれるシーンが流れていた。
そしてゆっくりと静かにドアが閉じられる。
映像はそこで終わっている。
「ふむ・・任務は完了したわけだな」
ヒットマンはその声にうなずく。
「だが、死体を確認していないな」
!
ヒットマンは少し驚いた。
映像を見れば確実にわかるはずだ。
間違いなく急所を撃ち抜いている。
しかもご丁寧に3発の追加の止めもした。
「その映像では不満か?」
ヒットマンが聞く。
「いや、間違いなく標的は倒れているだろう。 だが、彼女は何か特別な能力を使うと聞いている。 確実に死んだことがわからなければ・・」
声の主は話していて可笑しくなったのだろう。
「フフ・・すまない。 これでは確実に死んでいるな。 疑ってすまなかった」
そう話すと首を動かす。
声の主の横の人物がアタッシュケースを開け、中身を確認する。
ヒットマンはそれを見てうなずく。
アタッシュケースが閉じられてヒットマンに渡された。
ヒットマンはそのままドアを開けて部屋を出て行く。
ドアが閉じられて事務所に残った3人の会話が始まる。
「彼女は死んだだろうか?」
「間違いなく死んでいるな」
「最後に胸に3発も銃弾を撃ち込まれている。 これで死んでいなければゾンビだ」
「フフ・・それもそうだ」
・・・
・・
仕事を終えた後の脱力感だろうか。
自然と笑いが出る。
ホッとしていたところへ電話が鳴る。
プルル・・。
1人の携帯が鳴っていた。
「はい、何か? うむ・・そうか・・わかった。 ご苦労だったな、ありがとう」
携帯を閉じて周りを見渡す。
「サラが亡くなったそうだ。 今、ペンタゴンの中で知らせがあったらしい。 後任にはサラのお世話をしていた女性が付くという」
「そうか・・これで我らの政党も復活するわけだな」
「うむ・・今までしんどい思いをしたからな。 またスポンサーも戻って来るだろう」
・・・
・・
楽観的な会話が飛んでいた。
◇
<国務長官の事務所>
幹部たちが招集されていた。
「君たちに知らせなければならないことがある」
そう言葉を出し、一同を見渡した。
そして続ける。
「サラ君が不慮の事故で亡くなった。 先ほどのことだ。 隠しても仕方ないので正直に言うが、暗殺された。 それもこのペンタゴンの中でだ」
国務長官の言葉にザワザワと騒ぎ出す。
「まさか・・」
「誰かユダがいるのか?」
「彼女は死なないんじゃなかったのか?」
「いや、人間だろ?」
・・・
・・
国務長官以下、数名しか真実は知らされていない。
ただ超人的な身体能力の持ち主くらいにしか知らされていなかった。
体操選手か何かだろうと皆が勝手に推察していただけだ。
「えへん・・そして仕事をそのまま放置するわけにもいかない。 そこでだ。 彼女を紹介しておこう」
国務長官の言葉に、黒髪のスレンダーな身体の女の人が出てきた。
「アリス君だ。 サラ君の身辺のお世話をしてくれていたのだが、彼女が後任には適任だと思ってね」
アリスと呼ばれた女の人が微笑み挨拶をする。
「アリスです。 サラのことは気の毒に思います。 彼女の意思を受け継いでいきたいと思っております。 よろしくお願いします」
みんなが注目をする。
「おぉ、美人だな」
「おい、それって差別発言だぞ」
「あぁ、すまない。 だがきれいな黒髪だ。 光っている」
「うむ、日本のアニメのようだ」
「うん・・僕もそう思っていた」
・・・
・・
サラのことなど忘れて、目の前の女の人の話題になっていた。
言うまでもないだろうが、サラが変装した姿がアリスだ。
魔法で視覚情報を変化させている。
テツたちが見れば笑っただろう。
パッと見た目にはわからないが、違和感を感じるはずだ。
注意して見れば、魔法を施していることがわかる。
もっとも写真やカメラで判別することはない。
それにサラよりもレベルが高くなければわかるはずもないものだ。
サラはレベル28。
◇
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます