第83話 クソウの帰国



「ったく、このスケベ! 私の胸ばかり見て・・日本人って変態なのかしら?」

サラが少しムッとしている。

俺は日本男性の名誉を挽回しなければいけない。

「サ、サラ、それは差別だ! 日本人じゃない! 俺がスケベなだけだ。 それに見てみろ! テンジンだってサラの胸を見ているぞ!」

「な、な、何を言っているのであるかテツ殿・・拙僧はそんな・・」

テンジンはそう言いつつも、チラっとサラの目を見る。

・・・

「テンジン・・あなた、聖職者のはずよね?」

サラがテンジンをにらむ。

俺はテンジンの方を見ないようにしている。


「ふぅ・・まぁいいわ。 私がブラジャーをつけないのがいけないのよ。 でもあれをつけると窮屈だから・・」

サラが自分の胸を確認していた。

移動しながらのサラの胸・・これは男にはたまらないはずだ。

・・・

「サ、サラ。 スポーツブラって言うのがあるはずだが・・」

俺がそこまで言うと、また殴られた。

「知ってるわよ、そんなこと!」

サラのヘイトが俺に向いたので安心したのか、テンジンがホッとしていたようだ。

「二人とも、北京が見えて来たでござるよ」

テンジンが話題を変えていた。

俺もテンジンも助かった感じだ。


<クソウ>


クソウは日本に到着していた。

到着する前に、既に連絡は入れてある。

航空機を降り、首相官邸に向かっていた。

車の中で行政官と向かい合わせだ。

「君・・佐藤君だが、今頃は中国にいる帰還者と接触できたのだろうか?」

クソウが聞いていた。

「閣下、それはわかりませんが、おそらく大丈夫ではないかと思います」

「ふむ・・そうだな。 何せあの高さから平気で飛び降りれるような連中だ。 我々もこれからの世界地図の変更を要求されるだろう。 忙しくなりそうだ」

クソウの言葉を行政官はうなずきながら聞いていた。


クソウは官邸に到着。

マイペースでニッカやスカが集まっている場所へ向かう。

扉の前にいる人がクソウの接近を見て扉を開ける。

クソウが軽く片手を挙げて中へ入って行った。

「おはようございます」

クソウが笑顔で挨拶する。

「おはよう、クソウ君」

ニッカが言葉を出す。

スカもうなずいている。

「クソウ君、聞いているよ。 よくやってくれているようだね。 ただ独断が過ぎないか?」

ニッカの嫌味が早速振舞われた。

「ニッカさん、問題ありませんよ」

クソウは慣れているのだろう、平気だ。

「まぁ我々は特に気にしていないが、他の政党の連中がね・・君がその能力者を独占し過ぎているのではないかというのだ」

クソウはニッカの言葉を聞きながら思っていた。


この世界状況の中で、まだ派閥の事を言っているのか。

それに帰還者の情報を知ったのはつい最近のはずだ。

まだ知らない連中が大半だろう。

さすがのクソウでも呆れていた。

私などは佐藤の能力を目の前で体験し、一度は死んだようなものだ。

そんなバカな内部勢力争いなどをしている暇はない。

他国は能力者を軍事戦力として既に実戦配備だ。

それにお隣は国が崩壊するかもしれない事態だ。

その情報すら入っていないのか?


クソウは確認する。

「ニッカさん、まぁそれはおいおい相手とバランスを取りながら考えましょう。 それよりも中国のことですが、何か情報が入っていませんか? 私が出かけていたドイツの情報では内乱が発生したと聞いてますが・・」

「うむ。 私のところにも入って来ていたが、軍が出動したそうだ。 それも大規模の勢力でだ。 既に鎮圧されたんじゃないのか?」

クソウだけが目覚めていた。

この人たちは今までの美味しいものの味が忘れられないのかもしれない。

「ニッカさん、その出所は向こうの情報機関ですか?」

「クソウ君、何か疑っているようだが問題ないよ。 所詮は今までと同じようなガス抜き程度のものだろう。 我々が口出しすることではないよ。 それよりもその能力者のことを教えてくれないかね?」

ニッカがニヤッとして言葉を出す。

クソウは頭を切り替えた。

もはやこの人たちと同じ世界を見てはいけないと。

「はい、能力者ですが、我々の国でも1人だけ見つかっています。 その者を連れてドイツに行ったのですが、ドイツでは2人の能力者がいました・・」

クソウは咄嗟に、日本の学生たちの存在は隠蔽した方が良いと判断した。

佐藤のためではない。

ニッカたちに話せば、そのまま中国などに筒抜けとなる。

さすがの私でも、学生を売って身の安泰を得たいとは思わない。

それにこれはむしろ逆だ。

日本が世界に対して有利に立てる時代が来たのだ。

こんな小国に3人もの能力者がいる。

ニッカたちは知らないだろうが、能力者に近代兵器は通じないと佐藤が話していた。

それに、あの一瞬の間に動ける佐藤。

あんなことをされたら、暗殺などは防ぎようがない。

しかも完全犯罪だ。

それに魔法などもある。

もはや時代が激変したのだ。

・・・

・・

クソウはニッカたちには、その能力者はもの凄い身体能力の持ち主だと説明したに過ぎない。

おそらく詳しく説明しても理解はできないと判断したのもあるが。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る