第46話 ケンとリカのところで
「えぇ、ケン君のこれからの就職などの事についてご相談を伺いに参った次第です」
ガタイの良い男の1人が続けて言う。
「奥様、我々は各学校からの情報を集めております。 その中で民間企業に就職される前や進学前に提案させていただいたりしております」
母親はいきなりのことで意味がわからない。
ただ、怪しい感じはするが、悪い感じはしないことは確かだった。
母親がどう応対して行こうかと考えているところだ。
ケンが帰宅する。
「母さん、ただい・・」
!!
ケンは即座に理解した。
普通の連中じゃない。
一体なんだ?
まさか家族に何かしたのか?
テツさんがもう大丈夫だと連絡をくれたばかりだ。
それなのになんだこいつらは・・。
一瞬でそれらのことをケンは考える。
ケンの帰宅にガタイの良い男たちが振り返る。
軽くうなずくと、男の1人が話しかけてくる。
「君がケン君だね。 今、お母様にもお話していたのだが君の進路について情報を持ってきたのだよ」
男はそういうと、急いで胸からネームプレートを出しながらケンに近づいて行った。
小声で言う。
「ケン君、君のお母様は何もご存知ないようだな。 我々も君の就職や進路の情報提供を持ってきたと言っている。 話を合わせてくれないか」
ケンはその言葉を聞き少しホッとする。
そして、母親に向かって言葉を出す。
「母さん、心配しないで。 この人たちは学校に行く前に僕のところに来た人たちだよ。 前に国に提出していた意見書が良かったみたいなんだ」
ケンの言葉を聞き母親の緊張が解ける。
ホッとすると身体から力が抜けたようだ。
ストンとその場でしゃがみ込んでしまった。
!
ケンは急いで母親の元に行く。
「だ、大丈夫かい母さん」
「え、えぇ、いきなりだったから驚いたわ」
「そりゃそうだろうね。 でも安心していいよ、問題ないから。 それに少しこの人たちと学校へ戻って話をしてくるよ」
ケンは母親を起こし、玄関まで移動させた。
「ケン、夕食までには帰って来るわよね?」
「もちろんだよ。 そんなに時間はかからないと思うから。 行ってきます」
母親はケンの背中を見ながら思う。
大きくなったものだ。
ついこの間までは、ママ、ママって一緒に買い物や散歩に行ってたのに・・。
それが国から関心をもたれるような意見書まで書けるなんて。
私の学生時代よりも遥かに頭いいわね。
◇
ケンは母を背中に、ガタイの良い男たちと歩いて行く。
少し歩いたところでケンが言葉を出す。
「あの・・いきなり僕の家に来られても困るのですがね」
男たちは軽くうなずいて答える。
「ケン君、すまなかった。 我々も仕事で動いていたものだから・・君の家族のことを深く考えなかった」
「で、僕に何の用があるのです? 確か、テツさんが解決したと言ってましたが・・」
「実はね、そのテツ君の魔法を見た人が君たちの能力も見ておきたいと言っているのだ。 これからの諸外国とのためにね」
ガタイの良い男の言葉を聞き、ケンが立ち止まる。
君たち?
「まさか、リカのところにも行ったのではないでしょうね」
ケンが少し強い口調で聞く。
「い、いや、まだだ。 君のところに来た後で行くつもりだった」
ケンはその言葉を聞き少しホッとする。
「そうですか、良かった」
ケンは考える。
リカが単純に追い詰められたと思ったら、こいつら無事では済むはずもない。
それにリカはそれほど上手に応対もできないだろう。
また相手の嘘を見破るスキルがあると言っていた。
こいつらの言葉との整合性が取れないとリカが暴れるんじゃないか?
「さて、これからどうするつもりですか?」
ケンは男たちの顔を見て言う。
「あぁ、君たちが良ければ今からでも我々と一緒に行動してもらいたい」
男が言う。
時間は16時前。
ケンが少し考えていると、男たちが言う。
「ケン君、君とリカさんの学校のことなら問題はない。 我々の方で調整しよう」
・・・
断ってもどうせいずれは同じことになる。
それに学校に圧力がかけられるくらいだ。
自分達の家族がどうなるかわからない。
ケンはそう思うと男たちに言う。
「わかりました。 ではリカに連絡を入れますね」
ケンはリカに電話をして今の内容を伝える。
・・・・
・・
『うん、わかった。 今からケンのところへ行くね』
リカから電話を代わってもらい、ケンがリカの母親に事情を説明した。
リカの母親からは「さすがケン君ね。 ありがとう、リカのことこれからもよろしくお願いするわね」などと言われてしまった。
返答に困るが、いつものことなので軽く聞き流す。
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