第10話 神聖術魔法



ふぅ・・って、いったい俺の能力を何に使っているんだ!

超加速に魔法・・こんなはずではないはずなのに。

俺は自分に突っ込んでしまった。

ゆっくりと俺は移動していく。

俺の後ろの方で、俺を撮影していた奴が何か叫んでいるのが聞こえた。

俺ってバカだろう。

はぁ・・いったい何してるんだ?

妙な脱力感に襲われる。

おっと、ラーメンでも食べたいが新型コロナが気になる。

まだ平気で暖簾をくぐって飲食店に入れないよなぁ。

まったく・・妙なウイルスを拡散させてくれたものだ。

・・・

!!

そうだ。

この新型コロナを消せばいいんじゃね?

たかがウイルスじゃないか。

神聖魔法か回復魔法で解消できるんじゃないか?

東京都くらいの範囲だったらとりあず問題はない。

俺はそんなことを考えてみた。


ダメで元々だ。

そう思うと、自分のホテルに戻ろうとした。

・・・

誰かつけてきているな。

さっきまではいなかったのに。

誰だ?

俺は集中して、俺をつけてきている人のところまで近づく。

超加速のスキルを使っているので、周りの時間は止まっているようなものだろう。

俺をつけてきている奴。

これって、あの警察官の若い方じゃね?

・・・

まだ俺の容疑が晴れてないのか。

面倒だな。

これからの行動には注意しないとな。

俺はそう思うと、元の位置に戻って集中を解く。

そのまま何ごともなかったかのように自分のビジネスホテルへと戻って行った。

俺はビジネスホテルの入り口を通過して、自分の部屋まで戻る。

俺を尾行していた警察官は、ホテルの外で待機しているようだ。


ここでウロウロしたらまずいな。

俺は上着を脱ぎベッドに横になる。

まぁ、あの警察官は放置でいいだろう。

さて、新型コロナウイルスだ。

何が有効なのだろう。

回復系の魔法をかけると、回復はするがまた同じ病気にかかってしまうかもしれない。

それに、意味なくいろんな病気の人が回復して大混乱だ。

人にはそれぞれ運命がある。

俺が誰でも彼でも、できるからといって回復させてはいけないと思う。

そんなことは嫌と言うほど味わった。

だからと言って簡単に見過ごすこともできなかったが。

・・・

俺は頭を振り、余計な思考を振り払う。


今はウイルスの排除だった。

神聖系の魔法なら、浄化するイメージで可能だろうと思う。

どこかを起点に大きな半円形のドーム型魔法を行えばいいだろう。

どこがいいだろうか?

う~ん・・・!

あるじゃないか。

スカイツリー、これに魔核を埋め込んで・・いや、もしスカイツリーが倒れたらだめだな。

この近くに埋め込んで半径100㎞くらいの神聖結界を作ればいいだろう。

そうすれば半永久的にこの地域に入って来るウイルスや毒などが無害化される。

誰にも気づかれることはない。

わかるはずもないからな。


俺はそんなことを漠然と考えていた。

アイテムボックスから魔核を取り出す。

ピッと魔核に情報が表示される。

レベル31:ゴーレム。

この魔核があれば、万年単位でこの地域は安全になるだろう。

どうせ無茶苦茶あるんだ。

こんな時に使わなくてどうする。

まぁ、レベル40を超える魔核はもったいない気がするのでやめておこう。

後は、あの警察官が消えてからだな。

俺は少し心が軽くなったような気がした。

別に偽善を行うからではない。

人の役に立つという感覚とも違う。

何だろう・・霧が晴れて行くような、自然と朝日が昇るような、そんな清々しい気持ちが沸き起こっていた。

・・・・

・・

同じようなルーティンを繰り返して2~3日が経過。

なかなかあの警察官のマークが外れなかったからだが、ようやくいなくなったようだ。


時間は22時。

俺は集中して移動をする。

超加速のスキルを使って、ビジネスホテルから出る。

ホテルの自動ドアが反応しないので、手で開けなければいけない。

グッと俺が通れるだけ広げると、一気にスカイツリーの方まで走って行った。

すぐに到着。

スカイツリーの足下あしもとの道路を少し歩き、最適場所を選ぶ。

「よし、ここがいいな」

俺はそう思うと、ゴーレムの魔核をその地面にうずめた。

俺は右手を地面に当てて、目を閉じる。

ウイルスなどの有害なものを排除するイメージをしながら神聖術魔法を発動する。

『バニッシュ』

俺の手のところから白い光が溢れて、急速に広がって行く。

一気にその光の膜が大きくなり、見えなくなった。


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