第170話 リミッターを外した技

テラスネークの蛇光弾は恐ろしい技である。速度、威力共に1発当たれば即死級。その攻撃は無敵の城、心の城ハートキャッスルでさえ10発しか防げなかった。


「だが、言い換えれば10発は耐えれるんだ」


時間にすると3秒程度。

1つの城で3秒耐えれる。


神の武器は、手に入れるた瞬間から頭の中にその使い方がイメージされる。

だから、俺もアスラも直ぐに使えたのだ。だが、その限界値は知らない。

つまり、心の城ハートキャッスルをどこまで出せるのか、予想できないのである。


城は自由に作ることができた。

俺のイメージで大きさを変えることが可能。

作った城を亜空間に収納して、また出すこともできる。

しかし、それが何個までできるのかわからないのだ。


それはきっとテラスネークも同じだろう。

この感覚は神の武器を持つ者に共通しているはずだ。

現に奴は真実の答えリアルアンサーで増やす自分を100体に絞っていた。

どこまで増やせるのか検討がつかないのだ。お互い、使用限度にリミッターを掛けているのである。

おそらく、神の武器を使い過ぎるとなんらかのペナルティが課せられるのだろう。そんなイメージが頭の片隅にあるのだ。



「さて、どこまで俺の身体が耐えてくれるのか、試してみるか」



テラスネークは明らかに楽しんでいた。

有り余るパワーをどう使おうかと考えを巡らせる。



「フフフ……。そうだ。少し動いてみましょうか」



気がつけば、その蛇は残像であった。

既に、凄まじい速度で移動していたのである。


今は神眼と神聴力を常時発動している。

そのおかげでアレが残像であることも既に見抜いていた。


それは一秒にも満たない。俺の前に影を作る。

テラスネークは眼前に現れていた。

奴は100倍の神速を使っているのである。その速さは神の子の常軌を逸していた。


「さぁ、遊びましょう! タケル・ゼウサード」


遊ぶだって?


「断る! 俺にそんな時間はない!!」


アスラが出血多量で死ぬかもしれないのだ。そんな猶予は微塵もない。


「フフフ。今は尻尾がないのです。だから平手打ちで代用しましょうか。スキル蛇神化スネクマキナ  蛇尾ん打じゃびんた!」


彼女にとっては軽い一撃である。

しかし、俺にとってはとてつもなく重い。

その平手は空気の摩擦で炎が宿っているようだった。



バヂィィイイイイインッ!!



テラスネークの攻撃は俺のクロスした両腕に当たった。

それだけで電気がショートしたような稲妻が走る。



「うぐぅぅうううッ!!」



100メートル吹っ飛ぶ。


攻撃を予想して既に神腕を発動していたが、それでも受ければこの威力である。

今の軽い一撃で骨にひびが入った。


すぐさま体勢を持ち直す。




ズザザザザザァーーーーーーーーーーーーー!!




砂煙を上げて着地する。



「ふぅ……」と軽い嘆息。

「リミッターを気にしている時間はないな……」


蛇は嬉々として俺に向かってきた。



「ホホホ! 最高ですよタケル・ゼウサード!! これだけの力を持ってしても、お前は壊れない!!」



やれやれだ。絶賛されても嬉しくはないな。

それに──。



「遊んでいる暇は無い。と言っただろう」



俺はテラスネークに手をかざした。






心の城ハートキャッスル フォート!!」






現れたのは前代未聞の巨大な城。その高さは雲を超える。

その中にテラスネークを閉じ込めた。





「限界を超えて作った心の城ハートキャッスルだ。しばらくゆっくり回復させてもらうぞ」





俺はすぐさま亜空間から仲間を収納していた城を出す。

アスラの仲間が収納されていた城と俺の仲間の城。

そして、それら2つを瞬時に解除し、その場にいる全員を新しく作った城に収納した。


仲間達は亜空間を通じてテラスネークとの戦いを観ていた。

アスラの仲間、賢者の女は泣きながら叫ぶ。


「タケルてめぇこの野郎!! アスラ様をこんなに傷つけやがってぇええッ!!」


アスラは言いにくそうに目を閉じた。


「ヤンディ。タケルは俺を助けてくれたんだ。この腕は俺のミスに過ぎん」


「す、すぐに回復しますからね!! キィィイイ! 私だったら命に変えてもアスラ様をお守りしたのにぃいい!!」


やれやれ、あのヤンディとかいう女賢者。相当アスラにご執心だな。


俺が呆れていると妻達は俺に抱きついた。



「タケルさん良かったぁ!!」

「タケル様、心配しましたぁ!!」

「師匠! 無事でなによりある!!」



俺は顔をゆがめる。



「っうッ!」



妻達は大混乱。

賢者シシルルアは血相を変えた。


「大丈夫タケル? どこか怪我をしたの!?」


「ああ、少し腕をな。骨にひびが入っている」


「すぐ治すわ! リリー一緒にやりましょう!」


シシルルアと僧侶リリーは即座に俺の腕を回復してくれた。

リリーは心配げに眉を寄せる。


「テラスネークはもう出てこないんですか?」


今、最も重要な話だな。説明せねばならない。





「与えられた時間は50分だ」




みんなは目を見張る。

リリーは汗を垂らした。



「ご、50分したらテラスネークは、あの巨大な城から出てくるのですか?」


「そうだ。だから、その間に回復をして、奴を倒す計画を立てなければならない」



みんなに緊張が走る。

そして、50分という時間に対して疑問が生まれていた。



「よし、説明しようか」



みんなは俺に注目する。

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