第169話 タケル 対 テラスネーク

テラスネークは自分の分身を吸収して100倍の力を得た。

その姿は人間の女であるが、瞬き一つで致命傷になるほどの素早い攻撃をしてくるのだった。


俺は即座に闘神化アレスマキナ神眼を発動。俺の瞳は赤いオーラをまとう。これで、蛇が起こすどんな些細な仕草も見逃さない。次の攻撃に備える。


アスラは右腕を吹っ飛ばされていた。

地表に流れ落ちる血が痛々しい。早く治療をしなければ出血多量で死んでしまう。


まずは、亜空間に収納した心の城ハートキャッスルを呼び出して、仲間の魔法でアスラを回復させることが先決か……。

しかし、そんな時間を奴がくれるとは到底思えない。仲間もろとも攻撃の対象になってしまうな。

ならば、まずは、テラスネークが今どれほどの力なのかを把握して、そこからチャンスを探ろうか!


「アスラ、少し堪えてくれ」


「フン! 俺のことなんか気にするな! 自分のミスでこうなったんだ」


「必ず助ける」


アスラは傷口の痛みに耐えながら、ほんの少し顔を赤くした。

きっと、よほど辛いのだろう。顔を赤らめるほどなんて。


「少しの間だ。堪えてくれ」


「……バ、バカが。お、俺とお前は蛇を倒す目的が同じなだけで協力者じゃねぇ!」


「……同じ、神の子じゃないか」


アスラは益々、顔を赤くした。

やはり相当の痛みがあるようだ。



「バ、バカ野郎! くだらないこと言ってないで、早くあの蛇女をぶっ倒しちまえ!!」



俺一人でやれるかどうかわからんが──。



「ああ! やってみる!!」



俺は地面を蹴って飛び出した。



「ほほほ。勇敢ですねタケル・ゼウサード。 集中コレクトの力がどれほどのモノか試させてもらうわ」


取得した最強の力を自慢するように笑う。どれほどの力でも、比較対象がいなければ無意味に近い。彼女にすれば、俺に試せる今がその時。もっとも楽しい時間である。


「お前の遊びに付き合っている場合じゃないんだ」


テラスネークの指先が光る。


蛇光弾か!

今は神眼を発動中だ。だから見える。


それは奴の指先から放たれる光りの弾だった。その光りは蛇の頭を模しており、俺に向かって猛スピードで向かって来る。一発でも食らえば体の部位は吹っ飛ぶ。しかしな……。俺には無敵の城がある!



心の城ハートキャッスル フォート!!」



城の壁は蛇光弾を見事に弾いた。

その数3発。


「ホホホ、硬い城ですね」


俺は目の前の城を追い越すほど飛び上がり、右手にもう一つ城を生成する。

それをそのまま振り下ろした。



心の城ハートキャッスル 攻撃アタック!!」



しかし、テラスネークは難なく避ける。



「フン! こんな攻撃、当たらなければ意味がない! スキル蛇神化スネクマキナ 蛇神速!」


蛇神速は俺が使う神速と同じ技である。

奴は蛇神の力を借りて超スピードで移動する。しかも、今は通常の100倍の威力。彼女にとってはあくびが出るほどにぬるい。


すぐさま、俺に向かって蛇光弾を放った。


「さぁ、次はかわせるかしら?」


今度は5発である。


俺は目の前に城を出してガードする。城の壁は攻撃を弾くも、地響きが後ろまで伝わって来た。


む! こんな揺れ、今までに感じたことがない!


城は蛇光弾を防いでいたが、大きく揺れる城に眉が動く。


何発保つのか……。


「ホホホ。硬い硬い。ではもう5発ならどうでしょうねぇ?」


連続の蛇光弾。通常の100倍と化しているが、テラスネークは悠々と撃ってきた。



ドンドンドンドンドーーーーン!!



再び防御。しかし、城の揺れは凄まじく、10発目には大破した。



ドガガガガァアアアアアアアアアアアアン!!



「あら、10発目には壊れるようね」


石積みの壁は崩壊し、あちこちに飛散する。そして、その隙間を拭って蛇光弾が飛び出した。


「残念ね。もう1発用意していたのよ」


「ク!」



速い!

心の城ハートキャッスルが間に合わない!



「神腕!!」



瞬時に腕を闘神と化して防ぐ。



ドゴォオン!!



蛇光弾は俺の腕に命中。大爆発が起こった。



「ぬぅッ!!」



そのまま50メートル吹っ飛ばされる。


んぐ!

凄まじい威力だ! ガードできるのは精々1発が限度。次は無い!


それは着地と同時、瞬きするほどの瞬間。俺の眼前には蛇光弾が迫っていた。


「あは! 念押しの1発」


「なっ!?」


もう一発か!

とてもガードが間に合わない!



このまま喰らえば跡形も無く爆死。

五体は破裂し、再生は不可能。


油断し過ぎた!


流石の俺でも対策する時間が無さ過ぎる。







終わった……。






ギュゥウウウン!!






突然の横風。

何かが通り過ぎたような、空間を刮げ取ったような感じ。


風………………………!?


いや違う──。






「吸ってくれたのか……」






目の前の蛇光弾は跡形もなく消滅していた。

風上を見やるとそこにはアスラがいた。

右肩からポタポタと滴り落ちる血液をよそに、その体はしっかりと大地を踏みしめる。残った左手で神の創時器デュオフーバを力強く持ち、穂先をこちらに向けていた。




「吸えるのは1発が限度だ!」




「ふぅう……」安堵のため息とともに感心する。


流石はアスラだ。

片手を失ってもフォローしてくれるなんてな。





「ありがとう、アスラ!」





アスラはまたも顔を赤くした。

やはり、相当傷が痛むようだ。



「れ、礼なんかいらねぇ! そんなことより、この状況を打開することを考えやがれ!」


「お前のフォローのおかげで、良い案が浮かんださ」


テラスネークは俺達を観て余裕綽々よゆうしゃくしゃくで笑っていた。


「ホホホ。今のは危なかったわね。あなた達の命もこれまでかしら?」


アスラを見やると、肩の傷口から血がダラダラと流れ出ていた。


早く治療をしなければ出血多量でアスラが死んでしまう。


奴と戦う度に 真実の答えリアルアンサーの情報が少しずつだが手に入る。

さっきの一戦でも十分に情報を掴めたと言っていい。


テラスネークはニタニタと笑う。


「…………俺達を舐めるなよ。その薄ら笑いが消えるほど、後悔することになるぞ」


「あはは! タケルでも強がりを言うのですね!」


「そんな風に見えるか?」


「……ふん。私の圧倒的優位さは変わらない」


「それは、どうかな?」


さぁ、反撃開始だ!

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