第159話 心の城


〜〜タケル・ゼウサード視点〜〜


アスラは俺を睨みつけた。


「貴様、どこに行っていた?」


「神の武器を授かっていた」


「フン……。もしかして、その城や、あのデカイ城も武器の力なのか?」


「そうだ」


「フハハハ! 城を出すのが、神の武器なのか!? くだらん力だな! まぁ、住む場所には困らんかぁ、ククク」


俺は笑った。




「お前は、俺に勝てない」




アスラは眉間にシワを寄せた。



「フン! だったら俺を止めてみろ!!」



アスラはアリアーグの民に向かって手をかざした。同時に大地から鋭い神樹が生える。数千人を串刺しにするつもりである。奴の持った神の創時器デュオフーバの先端は、俺の方に向けられていた。闘神化アレスマキナが発動すれば、瞬時に吸い取る算段である。


やれやれ。もうその攻撃は通用しないんだ。


俺は表情を変えず、アリアーグの民に向かって手をかざした。



ドシーーーーンッ!!



現れたのは全長30メートルを超える城。その中にはアリアーグの民が全員収納されていた。

向けられた神樹槍は城壁によってベキベキとへし折られる。



「な、何ッ!? デュ、神の創時器デュオフーバで力が吸い取れないだと!?」



アスラは身体中から汗を飛散させた。



「何物にも影響を受けず、存在する城……」



俺の呟きにアスラは汗を垂らす。



「な、なんだその力は……?」


「維持神ブラフーマ様に会って、俺の心を武器にしてもらった」


「お、お前の心を武器に!?」


「みんなを護るという、絶対に揺るがない俺の心だ」


「みんなを護る……そ、そんな武器があってたまるか!! 武器は人を殺す物だぁあッ!!」


アスラは神樹を使って大きく空へ飛んだ。


俺の集めた兵士達は、10万人だけリリー達と共に城の中に収納されていた。残り40万人は、まだ外である。

アスラは、外の者らに向けて神の創時器デュオフーバを振るった。それは何十回と続く。ブォンブォンと風斬り音が鳴り響く。それと同時にいく十もの斬撃波動が発生。40万人の兵士達へ向かって飛んでいった。その波動は1つだけでも街を壊滅させるほどの威力である。


「殺してやる! タケルも、その仲間達も、皆殺しだぁぁああッ!!」


俺は微動だにせず、40万人の兵士達に向けて手をかざした。



ドシーーーーン!

ドシーーーーン!

ドシーーーーン!

ドシーーーーン!



50メートルを超える、大きな城が4つ建つ。その中に全ての兵士は収納された。

城は、その強固な城壁でアスラが出した斬撃波動を全て打ち消した。



「な、何ィイイイ!? お、俺の攻撃を打ち消すだとぉおおお!?」



アスラは再び俺の前へ立った。

汗をダラダラと流す。


「お、俺の神の創時器デュオフーバが効かない。あの城の力を吸うことができない!!」


「どんな力にも屈しない。難攻不落の無敵の城だ」


「だ、だったらお前を殺してやるッ!!」


アスラは俺に向けて神の創時器デュオフーバを振るった。凄まじい斬撃波動が俺を襲う。


だが……。




「 無 駄 だ 」




俺は瞬時に城を出して、その斬撃波動を打ち消した。城の高さは20メートル。俺はその天辺に立った。





「俺に与えられた神の武器。その名は、心の城ハートキャッスル!」





俺を見上げたアスラは汗を飛散させた。


「ハ、心の城ハートキャッスルだとぉ!? ふ、ふざけた名前をつけおってぇ……。し、しかし防御ばかりでは武器と言えん! それは防具だ! 攻撃を受けるしか能の無い防具だぁぁあッ!!」


心の城ハートキャッスル フォートはあらゆる攻撃を跳ね返し、護る」


俺は右手を天に掲げた。


「そして、心の城ハートキャッスル 攻撃アタックは最強の攻撃だ」


その真上には全長20メートルほどの城がゆっくりと回転しながら浮いていた。



「アスラ、俺の攻撃を止めてみろ」



アスラは神の創時器デュオフーバの穂先を上空の城に向けて光らせた。



「クソ! 吸えない! あの力を吸うことができない!!」



俺が右手に力を込めると、城は更に大きさを増した。






「俺は護ると宣言した。みんなを護ると言い切った──」





城は更に大きさを増す。





「俺の心を、俺の想いを──」





母さんも父さんも、お前がいなければ死ななかった!



 




「 止 め て み ろ ア ス ラ ァ ァ ア !! 」







俺が腕を振ると、心の城ハートキャッスルはアスラ目掛けて飛来した。

それは巨大な隕石が落ちるように、空気の層を打ち破る。

アスラは絶叫した。





神の創時器デュオフーバァァア! あの力を吸ぇええええええッ!!」





城は何ものにも影響を受けず、速度を増してアスラに向かった。

アスラはこの事実に何も考えられない。やがて城の影が全身を覆うと、その受け入れられない現実にただ呟くだけ。



「な……なんだ……と……」



神の創時器デュオフーバの輝きは虚しく、アスラは城の下敷きになった。






ズシーーーーン…………。






俺は仲間を収納している心の城ハートキャッスルを解除する。

同時にアスラの賢者が俺に向かって攻撃魔法を撃ってきた。



「アスラ様の仇ィイイイ!! ドラゴフレアァァァァアッ!!」



賢者の女が、炎を模した龍の魔法を放つ。

俺はすぐさま片手を上げた。



心の城ハートキャッスル フォート



ズシーーーーン!!



現れた城で魔法を防ぎ、その中にアスラの仲間達を閉じ込めた。


「出せぇ!! タケル・ゼウサードォォオオオ!!」


城は力を強めることで外に出れないようにできる。

指をパチンと鳴らすと、城はそのまま亜空間に消えた。


城は自由に出すことができるから、しばらくは亜空間の中でじっとしてもらおう。


ふぅ……。


「終わったな」


妻達はこちらに向かって手を振った。

勝利を確信した、安堵の笑みを見せながら。

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