第125話 勇者グレン登場


〜〜アスラ視点〜〜



ーーアスラ城ーー


「離せこんにゃろがぁあッ! 俺様を誰だと思ってるんだぁぁあッ!!」


王の間で暴れる男は、ボロボロの服を着ていた。身体中垢だらけで真っ黒。誰だといわれても、誰もわからないだろう。


「ゴミの街ストラプスで見つけたでありんすよ」


そう言って、くノ一のビビージョは俺の肩にもたれかかった。最近参謀にした奴隷なのだが、どうも俺にくっつきたがる。


「アスラ様ぁ。こいつはあちきが見つけて来たでありんすよぉ〜〜。うふふ」


愛嬌たっぷりの顔で俺を見つめてくる。

色白で巨乳。黄色と黒の着物を着ている。あちこちに蜂を模したアクセサリーを付けていた。


得意技は暗殺。

見た目とは裏腹で、色々と使える女である。


「ビビージョ。ちょっと離れろ」


「あんもう! アスラ様ったらぁ! あちきがこんなにアピールしてるでありんすのにぃ!」


コイツが俺にくっつくとアイツがうるさいんだ。


「あーー!! ビビージョ! てめぇはアスラ様にくっ付きすぎだぁ!! ア、アスラ様もちょっとは抵抗してくださいぃい!」


はぁーー。うるさい。


賢者ヤンディが俺の左腕を抱きしめた。

同時に、くの一ビビージョが右腕に抱きつく。


「ヤンディはん、アスラ様は美人の方がええんどすえ」


「わ、私の方がぁあ! び、び、美人というのは気が引けるけど……。アスラ様のことを想っているのは誰にも負けねーーんだよ!!」


「んまぁ! じゃあどっちがアスラ様に相応しい女か決めてもらいしょか!」


ったく!

女は鬱陶しいな!


「辞めろ! お前らが揉めると話しが進まん! ちょっと黙ってろ!!」


「「 はい〜〜 」」


ボロボロの服を着た男は目を細めていた。


「てめぇ、モテモテじゃねぇか。俺に自慢したいのかよ」



俺は神樹を一本操って男の縄を切った。


「て、てめぇ! どういうつもりだ!?」


「まぁ、念のために聞いておこうか」

 

魔王を殺した奴の情報は未知数なんだ。

的確に人物を絞っていこう。



「勇者グレン。魔王を倒したのはお前か?」



グレンはケタケタと笑い出した。


「ダハハ! 誰が魔王なんか倒すかよ! お前、魔王が倒されたと思ってんのか? バッカじゃねぇの! 誰かが魔王を倒したってんならとっくに大陸中の大ニュースだっつーーの! ギャハハ!」


ビビージョは眉を上げた。


「アスラ様、コイツ殺します?」


「な!? て、てめぇ! 街では油断したけどよ! 今度は簡単にはいかねぇぞ! 俺は勇者魔法に勇者スキルが使えるんだ!!」


グレンは背負っていた大剣を抜く。


「へへへ! 聖剣ジャスティカイザー! これさえ抜ければこっちのもんだ! どっからでもかかってこい!!」


コイツ、筋金入りのアホの臭いがするな。ビビージョが相手だと殺してしまうかもしれん。


「わかったわかった。お前の相手は俺がするから好きに攻撃してこい」


「ほう、親玉のあんたは俺の実力が少しはわかっているようだな! 後悔するがいい! 死ねぇええ! ブレイブスラーーーーシュッ!!」


「神樹操」


俺は一本だけ神樹を床から生やして、グレンの顎を打った。


「ハガァッ!!」


グレンは後頭部を床に打ちつけて倒れる。


「ヒィーー! 痛いぃ! ヒィーー!!」


ビビージョは眉間にシワを寄せて身体を震わす。


「アスラ様! こんなアホに偉そうな口聞かれてたと思うと腹が立って仕方ないでありんす! ちょっとあちきにボコらせて欲しいでありんす!」


「わ、私だって耐えられない! アスラ様に舐めた口聞きやがってぇ!! 私にもボコらせてください!!」


やれやれ。


「殺すなよ」


女2人は勇者グレンをボコボコにした。


「アスラ様に舐めた口聞いてんじゃないでありんすぅ!! このダボがぁ!!」


「ぶち殺すぞ! このビチ糞野郎がぁあ!!」


「アギャアアアッ!! さーーせんしたぁ! マジさーーせんしたぁあ!!」



──10分後。


勇者グレンは身体中あざだらけになり、顔は腫れ上がっていた。


「ちょ……。調子に乗ってしまって……。も、申し訳ありませんでしたぁ」


「まぁ、殺すのは待ってやる」


「ご、ご慈悲をいただき、あ、ありがとうございますぅうう。うう……」


「魔王を倒したのがお前じゃないとすると、もうかなり濃厚になってきたんだ」


「は? なんの話でございましょうか?」


「タケル・ゼウサードだ」


「にゃにぃッ! タケルだとぉお!?」


立ち上がったグレンは、女2人にギロリと睨まれて縮こまった。


「あ、いえ、その……。取り乱してしまいました。アスラ様がなぜタケルのことを知ってるんです? あんなクソ野郎のことを?」


「いや、よくは知らん。お前が知ってることを教えろ」


「も、もしかして。懲らしめてくれるんですか!?」


「お前、タケルに恨みがあるのか?」


「もちろんです! あんのクソ野郎には痛い目を見せられました!」


「ほう、話しを聞かせろ」



──30分後。



「…………それって、全部お前が悪いんじゃないのか?」


「はぁ!? 何言ってんすかアスラ様ぁ! よく聞いてくださいよぉ! タケルの野郎はですねぇ! 街を火事にしているイフリートウルフを殲滅する力を持っていたんです! それで俺は死ぬのが嫌だったんで逃げ出したんですが、あの野郎が無理やり止めに来たんですよ! 凄い力を持ってるくせに俺に頼るんですよ!? それで腹が立ったんで仕方なしに戦闘を手伝ったんですが、メンバー全員、俺に愛想を尽かして離れていったんです! 全部タケルのせいですよぉ!!」


何度聞いてもわからんな。


「……お前、アホだろ」


「はぅううッ!!」

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