第126話 仲間

〜〜タケル視点〜〜


「タケルさん! しっかりしてくださいタケルさん!!」


夢うつつの中、リリーの声が聞こえる。



俺はどうしたんだろう?






ーーコルポコの宿ーー



ここはどこだ?


気がつくと、俺はフカフカのベッドで寝ていた。


「コルポコの宿か……」


ガチャリ。


扉が開くと、リリーがお湯の入った桶とタオルを持って部屋に入ってきた。


「あ! タケルさん! 気がついたんですね!!」


「ああ、リリー。俺はどうしたんだろう? 確か、空天秤を攻撃して……」


リリーは俺に抱きついた。


「良かったぁ! タケルさんんん!!」


「すまない。心配をかけた」


「3日間!」


「?」


「3日間も寝込んでいたんですよ!!」


何!?

そんなにも寝ていたのか……。


「そうだ! 空天秤はどうなってるんだ!?」


俺はすぐさま窓に行き空を見上げた。


上空には薄らと空天秤が見える。



「か、変わってない……」



俺の攻撃は無駄だったのか……。


「なにも覚えてないんですね」


「ああ、攻撃を当てた瞬間、激しい光りに包まれて、それきりだ」


「タケルさんの攻撃は反射したみたいです。それで、全身大火傷になったんですよ」


「そうか……」


神爆牙一心をモロに食らってしまったんだな。限界突破状態だったから大火傷程度で済んだんだ。


やはり、テラスネークの言うとおりだったな。あれは最上位の神、破壊神シバの強大な破壊エネルギー。末端の神の子である俺には壊すことができない。消滅させるには同じ最上位クラスの神じゃないと無理なのか……。



「驚いちゃいましたよ。空から真っ黒い物体が落ちてきて。それがタケルさんだったんですから」


体を見るも怪我はない。


「すぐに回復魔法をかけましたからね。怪我はないと思いますよ。でもビックリしました。無敵のタケルさんが大火傷なんて」


「シシルルアの予感は的中した訳か。リリーがいなかったら、俺は死んでいたかもしれないな」


リリーは再び俺に抱きついた。


「もう! そんな怖いこと言わないでください!!」


「心配かけた……。すまん」


「ダメ! キスしてくれないと許しません」


「……キスだけでいいのか?」


「……そ、それはご飯を食べた後です」



◇◇◇◇


ーー食堂ーー


「いやぁ! 良かったぜよぉお! まさか3日も寝込むなんてなぁ」


「心配かけてすまん」


「おいは構わんが、リリーさんとユユが大変じゃったんじゃぞぉ。もうワンワン泣いてのぉ。1日目は彼女らが脱水症状で死んでしまうかと思うたわい」


「そうか……。ユユも、すまなかった」


「ううん。ユユのことはいい。それよりタケルが元気になって良かったぁ」


「よっしゃあ! んじゃタケルが元気になったお祝いにパァーーと行こうぜよ!!」


「もぉ〜〜。虎逢真はお酒飲みたいだけぇーー」


「なんちゃあ、細いこと言うなっちゃよ! おいが奢るきに」


「いい! 今晩はユユが奢る。タケルの快気祝い」


いや、流石に13歳の女の子に奢ってもらうのは気が引ける。


「おおーー! 堅実なユユが奢るなんて珍しいっちゃねぇ! 今日は樽三杯はいけるぜよ!」


「リリーも好きなだけ飲んで食べていい。スイーツ食べ放題。太るの気にせずに無礼講」


「え? あ、はぁ……。ははは。タケルさん、どうしたらいいですか?」


「……断るのも悪いな。甘えようか」


事の経緯はユユに聞くことになった。

虎逢真は瞬く間にベロベロである。


テラスネークは海の沖に隠れて待機している。元々、人は襲わず、魚やカエルを食べているらしい。


町の民にはテラスネークを倒したことにした。呪印の話は複雑である。町を壊したことや、航海を止めた責任を問われても厄介だ。


巨獣ハンターとしての役目は無事終了。

虎逢真とユユは町人から報酬を貰いクエストクリアとなった。

ユユは律儀にも報酬の半分を俺とリリーにくれた。


「本当はユユ達の方が少なくあるべきなんだけど……。虎逢真の暴走を止めてくれたのはタケルだからね」


「いや、そんなことはない。カエルでお引き出す作戦は効果的だったし、テラスネークから呪印を追い出したのは虎逢真だからな。半分でも文句はないよ。それに、元々、報酬なんてもらうつもりは無かったからな」


「うう……。タケルは無欲すぎる」


「全くりゃあ! ラケルは良い男りゃき! 飲もう飲もう! 今夜はぱぁーーとやるがぜよぉおおお!!」


「うう……虎逢真は飲み過ぎぃーー。タケルとは大違い」




あのお尻を叩いていた謎のギルド長にもユユから上手く伝えて納得してもらった。巨獣ハントはしていないが、テラスネークは人間に無害になったので問題ないだろう。



◇◇◇◇



──次の日。


俺達は港に来ていた。


「虎逢真達ともお別れだな。大きなクエストをクリアしたんだ。しばらくは休むんだろ?」


「おおそうじゃ! まっこと大変だったぜよ! だからおいとユユは休日を満喫するっちゃよ!」


「お疲れ様です虎逢真さん! ユユちゃんもまたね!」


「あーーそれでーー。ちょっと虎逢真とも話したんだけどーー」


ユユはダボダボの法衣をバタつかせた。





俺は目を見張る。


「何、付いて来るだと!?」


「うん。だってーー。世界が大変な時にーー。休日を楽しんでる場合じゃないーー」


「そういうことじゃな! もうタケルとは同じ窯の飯を食った仲じゃあ! タケルが世界を救うんなら、おい達も協力するのは当然のことぜよ!」


「いや、しかし……。危険だぞ?」


「なんちゃあ! 水臭い!! 世界が大変なんじゃあ! タケルは世界を救うんじゃろがぁ! おいもユユも絶対に役に立つきに!!」


確かに……。

2人ともS級の冒険者。

ユユの転移魔法。虎逢真の獣罵倒ビーストスラングは絶対に役に立つ。


リリーは俺の袖を軽く引っ張った。


「タケルさん、強い仲間は多い方が絶対にいいと思います」


「そうだな……。甘えてもいいか?」


「なんちゃあぁ! 水臭い!! 虎逢真、来い! 言うてくれればそれでええんじゃ!! ワッハッハッ!!」


俺は笑った。


こんなに爽やかな笑みは久しぶりだ。



「虎逢真、ユユ! 一緒に世界を救おう!!」


「おうッ! 任しちょきぃッ!!」


「ユユ頑張るーー!!」


「タ、タケルさん! 私もいますからねぇ!!」


海の中からザパァアンとテラスネークが顔を出した。その巨体は透明で、海水だけが盛り上がる。


「お前、透明になる力を持っているのか?」


『スキル蛇神化スネクマキナ 擬態。私の姿は自然の景色と同化します』


なるほど、これで町の民から隠れたのか。

心強い仲間ができた。




「よし! みんなで行こう!!」




俺達4人はテラスネークと共にロメルトリア大陸に向かうことになった。

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