第120話 キングガーマの捕獲②

戸惑う虎逢真をよそに俺は不敵に笑う。


「それでいい。虎逢真の攻撃で危機感を感じさせて。キングガーマを跳ねさせる。そこを俺が叩くのさ」


ユユはダボダボの法衣をバタつかせた。


「でもでもタケルゥウ! キングガーマはねーー。たくさんの人を襲って食べてるんだよぉ! 図鑑に載ってない危険なこともたくさんあるんだよぉ! だから慎重に慎重に──」


「ユユ。心配してくれてありがとう。大丈夫だ!」


俺がユユの頭を撫でてやると、彼女は真っ赤な顔になった。


「う、うん……」


俺は虎逢真に目をやる。


「お前を今から転移魔法陣に向かって投げ飛ばす。その間、水中のキングガーマから舌攻撃をされるだろう。当たれば即死。全部防ぐ必要がある。できるか?」


「なんね。そんな心配いらんちゃ。おいの一撃はキングガーマの肉を割く。肉を切らずに捕まえるんが難しいだけぜよ」


「よし。目指すは300メートル先。沼の中央、小さな小島の向かって左側だ」


「カエルなんか微塵も見えんが、その辺においの攻撃を撃てばええんじゃな!」


「そうだ、任せたぞ」


ユユは200メートル先に転移魔法陣を出現させた。


「タケルーー。作ったよーー」


「うむ。良い位置だな。虎逢真はあの魔法陣に入る直前で50メートル先に遠距離攻撃だ」


「任せちょきぃッ!」


僧侶リリーは励ましの声を上げた。


「みなさん頑張ってください!」


俺は虎逢真の背中を持ち上げて宙に投げた。

目指すは200メートル先の転移魔法陣である。



ギューーーーーーーーーーーンッ!!



「ぬぉおっ! こりゃ凄い便利な移動じゃあ!」


虎逢真は何発も現れるキングガーマの舌攻撃を全て獣罵倒ビーストスラング 威奴牙過忌いぬがすきで切り裂く。


よし。

俺も出発だ。


「スキル闘神化アレスマキナ神速」


沼の水面を高速で走る。


ダダダダダダダダダダダダダダダッ!



虎逢真は転移魔法陣の手前。


「おいの攻撃を刮目して見るぜよぉおっ!! 獣罵倒ビーストスラング 岈破乗散放かばのさんぽぉおお!!」


振り切った手からカバの顔をした波動が放たれた。カバは頭突きの姿勢で飛んで行く。小島の左側に向かう。


その手前50メートルに着弾!



ドパーーーーーーーーーーーーンッ!!



大きな水飛沫。


同時に小島の左側、水面から目を出して警戒していたキングガーマは空に飛んだ。



ドパーーーーーーンッ!!



凄まじい跳躍力。



その高さ30メートル。



「空中ならば的が絞れる」



俺は水面を蹴り飛んだ。


刹那。


空中からの舌攻撃。


ドシュッ!!


食らえば貫通。即死である。


やれやれ。

こちらも空中だからな。

移動ができないことを見越したのか。

流石はS級モンスター。


でもな。



「スキル闘神化アレスマキナ飛翔」



残念ながら俺は空を飛べるんだ。


空中で方向を変え、舌攻撃を交わす。



同時。



キングガーマはそれを狙っていたのかもしれない。


俺が避けた先を見越して毒液が俺の身体に付着した。



ベチャッ!!



「!?」



ユユは絶叫する。


「キングガーマの毒液だぁ!! タケルゥウウウウウウウ!!」


やれやれ。

女の子をあんなにも心配させるなんて、俺もまだまだだな。



「スキル闘神化アレスマキナ絶対零度」


俺に付着した毒液は瞬時に凍る。

肌に毒が浸透する前に氷となってポロポロと剥がれ落ちた。


「俺に毒液は効かん」


キングガーマの眼前に到達。


やれやれ。

手間をかけさせるな。


角度を計算して……。


「スキル闘神化アレスマキナ神 腕!」



ド  ン  ッ  !!



キングガーマの側頭部に命中。

そのまま凄まじい勢いで吹っ飛ばす。

ユユ達の立つ陸地へと飛んでいった。




ズシーーーーン……!!




キングガーマは舌を出して絶命。

しかし身体はそのままで、血は一滴も流れていない。


蛇の餌ゲットである。


俺は即座にみんなの所へと戻った。


「タケル! 無事だったぁ!!」


戻るや否やユユが俺に抱きつく。


「ちょ、ちょっと! ユユちゃん! タケルさんは私の旦那様なんですからね!!」


俺は手を広げてリリーも向かえいれる。


「アハ! タケルさーーん♡」


2人は俺の身体に顔を擦りつけた。


「少し、ヒヤヒヤさせてしまったな」


「タケルが無事なら良いけどーー。毒液が付いた時は驚いたーー。死んじゃったかと思ったーー」


「わ、私は奥さんだから信じてましたけどね! で、でも心配でした! ユユちゃんより!!」


「ユユの方が心配してたよ。リリーより」


「ちょ! ユユちゃん! 私はタケルさんの正式な奥さんなんですからね! ホラ! これ見なさいよ! ホラホラァ!」


そう言って結婚指輪を見せる。


ユユは涙目になって俺に抱きついた。


「うう……」


やれやれ。


「2人とも仲良くしてくれ。まだテラスネーク退治が残ってるんだぞ」


「ご、ごめんなさいタケルさん」


「リリーは俺の奥さんなんだから、もっと余裕を持っても良いんじゃないか?」


「そ、そうでしたね。えへへ。ごめんね。ユユちゃん」


「うう……タケルゥゥーー……」


俺は仕方なく2人の頭を優しく撫でてやるのだった。


「リリーよしよし。ユユもよしよし」


「タケルさ〜〜ん」


「タケルゥゥ……」


虎逢真は口をへの字にしていた。


「タケルはモテモテじゃのう。いや、しかし、まっこと凄いぜよ! キングガーマをあっという間に捕まえてしもうたんじゃからな!」


「みんなの協力のおかげだ」


「タケルの計画がなかったら今頃、捕まえるのに1ヶ月はかかっとたがよ!」


「お前の遠距離攻撃は見事だった。あれがなかったらキングガーマは捕まえられなかったな」


「ははは。あんなもん大したことないぜよ。タケルの華麗なる空中戦を見せられちゃあ、霞む霞む! 戦闘力はずば抜けて凄いのに仲間を褒めることを忘れないとは、タケルはほんに良え男じゃなぁ!」


「私の自慢の旦那様なんです! えへへ! タケルさぁ〜〜ん」


「おなごにもモテモテで隙がない。おいは完敗じゃあ! ワッハッハッハッ!!」


うむ。絶賛している理由はよくわからんが、虎逢真といると場が明るくなるな。


「よぉし、んなら、このキングガーマを使ってテラスネーク退治じゃあ!」


俺達は港へと向かった。

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