第114話 神樹の箒
グウネルは俺の手の平から現れたモノを凝視。汗を飛散させた。
「な、なんですか、それは!?」
「なんだお前、これを知らんのか!? 箒だよ箒!」
「ほ、ほうき……が、武器なのですか?」
「
テラスネークは俺の出現させた
相当に勘が鋭いな。
体長1キロ、顔の横幅は10メートル。
これだけ大きく育った蛇だから、経験が豊富なんだろう。危ない技はすぐに気がつくようだな。
「さぁーーて。久しぶりの箒なんだ。楽しませて、く、れ、よっ♡」
ドンッ!!
それは軽く振っただけ。
地平線まで続いた。
テラスネークは寸前で避けており、その威力に汗を垂らす。
「おっと、外したか」
グウネルは
「あ……ああ。す、す、凄……い。どこまで届いたのか、先が見えない。た、大陸が切断されてしまった……」
テラスネークは驚きを隠しきれない。
恐怖でプルプルと震える。
2メートルを超える大きな目からジワリと涙が滲み出た。
俺はニコニコと笑って
蛇の絶叫。
「シャァァァアァァアッ!!」
テラスネークは全力で移動した。
「あ! 逃げた!」
逃げる姿に
「なんだあいつ? デカいくせに速すぎるぞ。気持ち悪いな」
「何かスキルを持っているのかもしれません! 大きいのに速すぎます!」
「蛇がスキルを? まぁ、逃げ足が速いスキルなんて怖くもなんともないがな。こう避けられては面倒だ。逃がしてやるか」
「知能が高い証拠です! 絶対に勝てないと悟っているのです! アスラ様! あいつの奴隷はアリですよ! 必ず役に立ちます!」
「そうか? まぁ、そうかな? しかしアイツはアブラマンダラの呪いがあるんじゃないのか? 俺の言うこと聞くかな?」
「逃げることから察するに、呪いとはいえある程度自由が効くのでしょう。解呪は屈服させてから考えれば良いことかと」
ふーーむ。
こいつは本当に頭がいい。
物事の順序を組み立てて冷静に考える力を持っているな。
「いや、しかし交渉しようにも逃げる速度が早すぎる! クソッ!
大地から現れた無数の神樹は、次々にテラスネークの体を絡みとった。
「よぉし、動きを止めたぞ! 頭までの距離が長いから神樹反動で移動だ」
俺はグウネルを抱え、しなる神樹に背をもたれた。
神樹が跳ねる。
バィィイイイイイーーーーンッ!!
「よし、これで奴の頭部まで飛んで、奴隷交渉だ」
と、思うやいなや。
テラスネークは絡まった神樹操をバギンバギンとへし折って、空中に飛んだ。
宙にいる最中に1キロもある長い身体を、重力など無いように素早く動かす。
まるでバームクーヘンのように体を丸めて、大きな河へと潜り込んでしまった。
ドボーーーーーーーーーーーーン!!
溢れ出た河の水が大量にあたり一面に飛び散る。
大洪水である。
俺達は即座に神樹操で体を包み、大きく神樹を伸ばして、洪水から身を守った。
「な、なんだぁ? あの野郎。逃げる技だけは凄まじいな」
「惜しかったですねアスラ様。知能が高い故に殺されることを悟ったのですよ。あんなに強くて利口な蛇は奴隷にすれば相当な働きを見せたはずです」
「そうか……。うーーむ。惜しいことをしたな。潜って探してみようか?」
「お辞めになった方が無難でございます。大陸最大のカマゾン河。流れは速く、その水深は100メートル以上あると言われております。とても無理です。それに水質は濁り水で、奴が上流に行ったのか下流に行ったのか、それさえもわかりません」
「うーーん。奴は相当に頭がキレるな。おそらくそれも計算尽く。上流なら山岳地帯。下流なら海か……」
「あの蛇は臆病者。逃げれない状況に追い込めばすぐに奴隷になったでしょう」
「うむ。欲しい! あの蛇を奴隷にしよう! 海か山か……。ここは海から少し離れている。やはり海水には縁がないのだろう。上流を探すぞ!」
「素晴らしい読みでございます! 仰せのままに!」
◇◇◇◇
〜〜タケル視点〜〜
俺は、僧侶リリーを抱え、スタット大陸からスキル
「リリー寒くないか?」
「だ、大丈夫です! 気にせず進めてください!!」
ロメルトリア大陸で起こった内乱は過酷な状況。
謎の国、アスラ軍の侵攻により、各国は甚大な被害がもたらされていた。
オータク。無事ならばいいが……。
スタット大陸を出て、海の上を走り、メギド大陸へ。
港町コルポコに着いた時には日が暮れていた。
ーー港町 コルポコーー
「タケルさん! 宿屋の部屋が取れましたよ」
ーーコルポコの宿屋ーー
俺は窓越しに海を見た。
ロメルトリア大陸は遠く、ここからは見えない。
オータク。無事だろうか……。
「タケルさん。ここの宿屋の干しイカ茶は美味しいみたいですよ。食堂に飲みに行きませんか?」
「そうだな。行こ──」
ドドドドドドドドドドドドドッ!!
突然の地響き。
「タ、タケルさん!?」
窓の外を見ると、月明かりに照らされて大きな津波が町に向かってやって来ていた。
宿屋をはじめ、町中はパニック。
「リリー津波だ! ちょっと行って止めてくる」
「き、気をつけてください!」
俺は窓を開けて飛び出した。
「スキル
俺の背中には光り輝く翼が備わる。
空を飛び、一気に港へと出た。
ギューーーーーーーーーーン!
津波の高さは20メートル。
このまま行けば町の被害は甚大である。
俺はすぐさま波の中に突入した。
「スキル
波は渦を巻いて俺に操られ、大きな龍の形を模す。
すると港には、大きな黒い物体が現れた。どうやら波に隠されていたようだ。
「なんだあれは?」
黒い物体には、大きく鋭い目が2つ付いており、月明かりに照らされて黄色く光っていた。
クワァッ!!
それは、大きな口を開けて、水の形をした龍に被りついた。
バシャーーーーン!!
「おっと……。こいつ、俺が作った水の龍を敵だと思っているな」
月光に照らされた、その黒い物体は大きな蛇であった。体長は1キロ以上。顔の横幅は10メートル以上あった。
その額には紫色の印が禍々しいオーラを放つ。
やれやれ。
大きな津波はこの蛇が原因のようだな。
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