第107話 使える奴隷

「ギャァアアアアアアアアアアッ!!」


アブラマンダラの刑務所に衛兵達の悲鳴が響く。

攻撃してくる衛兵は全て皆殺しである。


俺は奴隷にした美食ギルドのグウネルと牢獄を通って出口に向かっていた。


「おい! お前! 凄い奴だな!! 衛兵達を皆殺しかよ! お、俺を出してくれよ!!」

「俺も! 俺も頼む! 出してくれ!!」


罪人達は檻の隙間から手を出して懇願する。


「はぁ? 自分で出ろよ」


「て、てめぇ! 地獄に堕ちやがれ! 死ね! クソ野郎!!」

「死ね死ね!」

「俺が外に出たらぶっ殺してやるからな!」


俺はそいつらの言葉を背に受けながら、手を軽く振った。それはバイバイの挨拶に似ている。


「「「「 ぐえッ!! 」」」」


罪人達の床からは神樹が生えて串刺し。

暴言を吐いた奴らは皆殺しにした。


「あ、あなたの目的はなんなのですか?」


グウネルは汗を流す。

俺は鼻で笑った。


「魔王になることだ」


「ま、魔王に……なる……?」


「俺の名はアスラ・シュラガン。お前は俺の為に生きろ。これからは大量殺戮の時代が始まるからな。ククク」


「……ゴクリ」


グウネルの唾を飲み込む音が大きく響いた。




◇◇◇◇



ーー蛇の養殖場ーー


俺はグウネルの気遣いで昼飯を食べる事になった。


大きなテーブルには蛇の料理が並ぶ。


ふふふ。やはり俺の見立てに間違いはない。この男は使える!


「私は蛇の養殖場を100ヵ所以上所有しております。主にここ、アブラマンダラの街を中心に活動しておりまして、たまたま立ち寄ったところを衛兵に呼び出させれたわけでございます」


「あ、そう。興味ねぇわ! ハグモグモグ……。でもよ。この蛇料理は美味いなぁ。なんか肉が柔らかくて油も乗ってて、たまんねーーわ!! ハグ! モグモグ!!」


「それはそうです! 最高級のポークスネークですから! アスラ様が露天で食べていたのは野良スネーク。硬い肉の野生の蛇ですからね」


「まぁ、なんでもいいんだけどさ。お前、料理に詳しいな」


「ええ、私は食を極める美食ギルドの人間ですから」


「美食ギルドってなんだ?」


「チューン大陸に本部を持つ、美味しい物を追い求めて、食材を中心に流通を行う商人のギルドでございます」


グウネルはニコニコと話す。


不思議な奴だな……。


「お前、やけに従順だな? 俺が怖くないのか?」


不敵に笑う。


「恐ろしいです。心の底から恐れていますよ」


「笑ってるぞ?」


「安心もしているのです」


「安心?」


「私はあなた様の奴隷なのでございましょう?」


「だな」


「ならば、使える奴隷は殺しません。私なら絶対に」


「お前……選んで正解だったよ」


「光栄でございます。では、こんな余興はいかがでしょうか!」


パンパン!

と手を叩く。


余興ってなんだ?


すると綺麗な女が2人、俺に優しい微笑みを浮かべながら部屋に入ってきた。


「おいおいなんだよ」


「ヒョホホホ。まさかお嫌いではないでしょう? それとも男の方がよろしかったでしょうか? 美少年、筋肉マッチョ。なんでもおっしゃってください」


綺麗な女は、胸元が空いたスリッドの入った民族衣装を着ており、俺の身体に大きな胸を密着させた。


「あ、いや。俺はノーマルなんだがよ。こういうことするとヤンディが拗ねるんだよな」


「ヤンディ? これはこれは、お妃様がおられましたか」


「いや、奴隷だぞ」


「ひょ? 奴隷の女に気を使うのですか?」


「き、気なんか使ってねぇよ」


「ヒョホホ。あなた様は変わってなさる。残虐だが、どこかお優しい」


「ふん……。そんなことより。この国の支配者はどこにいるんだ? お前か?」


「ま、まさか。私は商人ですから。この国は蛇使いアブラマンダラの支配する国でございます」


「よし、案内しろ」


「承知しました」


「でも、この蛇料理食ってからな! ハグモグモグ! うめーー!」



◇◇◇◇


ーーアブラマンダラの城ーー


蛇の石像が、そこかしこに設置された奇妙な城だった。塔の天辺、門の取っ手さえも、全て蛇の形。


「なんか、お寺みたいな臭いがするな」


「アブラマンダラは特別なお香を使って蛇を操りますからね。噂では最強の蛇、テラスネークも飼い慣らしているそうですよ」


「テラスネーク? なんだそりゃ?」


「相当大きな蛇のようです。暴れれば国を滅ぼすと言われています」


「そんなデカいならよ。倒したら蛇のステーキ食いほうだいじゃねーーか!」


「まぁ、噂ですから、本当かどうかはわかりませんが……。それより、どうやって会うのでしょうか? 城内にいる城兵の数は4万以上と言われておりますよ。ここは難攻不落の城として有名なのでございます」


「ふーーん。そんなに大きな城に見えないけどな」


「地下が広く、兵士を配置しております。ほとんどの人間がアブラマンダラの顔を知りません。おそらく地下にいるからかと……」


うーーむ。こいつの情報量は大したもんだな。

グウネルは相当使える奴だ。

とにかく気が利く。


よーーし。少しばかし主の実力を見せつけてやろうか。


「強引に会いに行くぞ」


「ええ!? よ、4万も兵士がいるのですよ? ま、まさか、お1人で……!?」


「ああ、反抗する奴は皆殺しだ」


グウネルからは笑いが消え失せ、ただダラダラと汗をかくだけだった。

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