第95話 お茶会

〜〜タケル視点に戻ります〜〜


国王がTOG《タケル・ゼウサードお嫁さんギルド》に入会してから数日が経った。


ーースタット城 城兵休憩室ーー


俺は城兵達の約束を守るため、男ばかりでお茶会をすることにした。

あの、ワーウルフ討伐の時に約束した、お茶会の話である。


「これはな。港町ザザームの塩バター茶だ」


俺はお土産用で買った、お気に入りのお茶をみんなに入れる。

城兵達は部屋一杯に広がるバターの香りにうっとりとした。


ふふふ。これぞお茶の醍醐味だ。


ロジャースはコップをガッと掴んで、塩バター茶をゴクゴクと飲んだ。


「プハーー! うめぇ! こりゃうめぇお茶だな! タケル!」


「うむ。ズズーー」


俺は塩バター茶をゆっくりと味わう。

やはりお茶は良い。

この楽しい雰囲気も最高だ。


城兵達は塩バター茶を喜んで飲んだ。

5分もすると、俺以外のみんなはお茶を飲み干した。1人の城兵が言う。


「お茶は美味かったがな。なんだか、ちと寂しいな」


寂しい?


俺はお茶を楽しみながら眉毛をピクリと上げる。


城兵はテーブルに包み紙を置いた。


「魔法使いレイーラさんのお土産でな。セツナトカゲの干物だ。お茶とよく合うんだな、これが!」

「おいおい、お茶ってか、アレだぞ。合うのは」

「やっぱり、アレか!」

「そうそう、アレアレ!」


城兵達は同調して、それぞれに持ってきた物をテーブルに置き始めた。

ロジャースはわざとらしくも棒読みで叫んだ。


「あ、お前達、これは、お酒じゃないか、ダメなんだぞ、城兵の休憩室でお酒飲んじゃ」


城兵達は首を振った。


「ロジャース。これは酒じゃねぇぞ! お茶会なんだからな!」


ロジャースはまたも棒読みで答えた。


「あ、そうかそうか。今日はお茶会だった。うっかりしていた、てへへへ」


「そうだぜロジャース! お茶会だお茶会!」


ロジャースは酒の樽を持ってテーブルに足をかけた。


「よーーし! タケル・ゼウサードが帰って来たお茶会の開始だぁーー!」


「「「「  ヒャッホーー!! 」」」」


30分もすると、みんなの顔は真っ赤になっていた。


「あの娼館の姉ちゃんはオッパイがデカくて最高なんだぜ! ギャハハ!」


俺はゆっくりと塩バター茶を味わう。


「ズズーー」


「おい、ロジャースの全裸体操が始まったぞ!」


「みなさんお待たせしました! ロジャースの全裸体操、行ってみましょう! 象〜〜さん、象〜〜さん、色んな所が伸び縮み〜〜」


「「「「 ギャハハーー! ウケるーー!! 」」」」



俺は塩バター茶を飲み切り、コップをテーブルに置いた。


「ふーー……」


城兵達は真っ裸で酒を飲みまくり猿のように踊っていた。

気がつけば、その人数は増えており、あきらかに勤務中の城兵も混じる。

みんなはろれつが回らない。


「ラケル・ゼウラ〜ド、バンザ〜〜イ」


うむ……。

まぁ、こうなるんじゃないかと思っていたんだ。


しかし、こんなことで終わってはいかん。今日は目的があるのだからな。


俺はパンパン! と手を叩いてみんなを注目させた。


「みんな、聞いてくれ! ちょっと協力して欲しいんだ!」


みんなは、これは面白そうだと、俺の周りに集まった。


「なんらよ。ラケルゥウ〜〜??」

「お前は最高の男らぁ〜〜」


やれやれ、これは口頭ではとても伝わりそうにないな。

文字に書き起こしておいて良かった。


俺は図面入りの紙をテーブルに置いて説明をし始めた。


「実はな──」


話が見えるにつれ、みんなは落ちつきを取り戻し、顔色が変わる。

話の全貌が見えると、度肝を抜かれて絶叫した。

ロジャースは震える。


「マ、マジか!? 凄すぎて酔いがぶっ飛んじまったよ! タケル・ゼウサード、お前、本当に城兵か!? スタット王国の歴史が変わるぞ……」


俺はニヤリと笑う。

城兵達は俺の話に釘付けだった。



◇◇◇◇


数日後。


〜〜僧侶リリー視点〜〜


ーーTOG《タケル・ゼウサードお嫁さんギルド》専用室ーー


「どうも最近おかしい! タケルさんの様子が変です!」


私達は、国王が用意してくれたTOG《タケル・ゼウサードお嫁さんギルド》の特別な部屋で、集まって話し合いをしていた。

私が腕を組むと、シシルルアさんも考え込んだ。


「そうね。なんだか最近おかしいわね。隠れて街に出かけているわ。それに、時折、腕を組んで考え込んでる」


うーーむ。

これは何かある。タケルさんのことだから、人助けでもやっているのだろうか?


バルバ伍長は眉を上げた。


「タケルは仲間の城兵達とお茶会をしていたからな。城兵が何かを知ってるかもしれん。そうだな……ロジャースにでも聞いてみるか」


◇◇◇◇


夕方。


バルバ伍長はTOG《タケル・ゼウサードお嫁さんギルド》の部屋の扉を勢いよく開けた。


「わかったぞ! ロジャースに聞いた! タケルは強敵と戦っているらしい!」


強敵と!?


「ロジャースは、中々口を割らなかったのだがな。給金を下げる話しを持ち出したら、あっという間に吐いたんだ!」


私は腕を組んだ。


「そうなると、タケルさんが考え込んでいるのは、苦戦している証拠ですね!」


満場一致。みなウンウンと頷く。


どうして私達に相談しなかったんだろう……?


マーリアさんは眉を八の字にして震えた。


「タケル様は私達に迷惑をかけまいと、1人で闘っているのです! 以前、窓から森の方を見て難しい顔をされていました! きっとそうです! 1人で頑張るタケル様なんて見てられません!」


「そうねマーリア。私も同じ気持ちよ。タケルが困っているなら、私達が助けてあげないと」


「アイヤーー! 師匠、水臭いある!」


「たく、タケルの野郎! 1人で頑張るなんて許せねぇぜ!」


「タケルめ。国王のワシもいるというのに相談も無しで戦うとは、ワシも一緒に戦いたいぞ」


私達はみんな同じ気持ちだった。


円陣を組み手を重ねる。


私は号令をかけた。


「TOG最高ーー! オーー!!」


「「「「「「「 オーー!! 」」」」」」」



タケルさん、待っていてください!

私達が助けに行きますからね!

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