第89話 お嫁さんギルドの加入

俺達はタケルカンパニーカザンガ支店に到着した。

シシルルアとマーリアは互いに手を取って喜んだ。


「マーリア! また会えて良かった!」


「シシルルア! 私もよ! 凄く、凄く会いたかった! あなたには話すことがたくさんあるの! お土産もあるのよ!」


2人は再会できたことに涙を流す。

微笑ましい光景にみんなは胸が熱くなった。


さて、みんなには感謝の気持ちと、無事に終わった事を伝えよう。


お金稼ぎは、ママジャン王国の損失額6千億エーンを埋めることであったが、そんな事は言えない。マーリアが知れば、俺に要らぬ気を使うからな。


感謝をされたい為にやったのではない。

俺がやりたいからやっただけの話なのだ。


それに、父親であるママジャン国王が元気になれば、マーリアは気兼ねなく旅を楽しめる。彼女にはいつも笑顔でいてもらいたいんだ。彼女の笑顔は俺の癒やしになっているからな。


俺はお金の経緯は上手く隠して、タケルカンパニーママジャン王国本店を閉鎖した事を伝えた。


リリーは俺のスッキリした顔を見て、何かを察してくれた。


「タケルさん……。問題……。解決したんですね?」


マーリアをチラリと見るとシシルルアと楽しく話している。

俺はニコリと笑った。


「ああ、終わった」


「そうですか……。良かったです。えへへ」


「リリーもみんなもありがとう! 短い間だったけど、仕事を手伝ってくれて、本当に助かったよ!!」


「私達も楽しかったです! こんなに大きなお金を動かしたことありませんでしたから!それにしても、おかしいと思ったんですよね」


「何がだ?」


「お金に執着しないタケルさんが、急に会社を起こして、大金を稼ごうとするんですから。絶対に何かあるとは思っていました」


「……何か、あるとは?」


「タケルさんのことだから……」


「?」


「お金を使って誰かを助けたんでしょう?」


「……な、なんのことだかわからんな」


「ふふふ。タケルさんらしい」


やれやれ、リリーは鋭いな。


「タケルさんの問題が解決して本当に良かったです!」


「ああ、ありがとう」


「それで……。その……。あの人はどなたですか?」


リリーはアンロンにジト目を送った。

アンロンは俺を抱きしめる。


「私、アンロン・リーエン言うね! 師匠の愛弟子ある! 最強的強さと最強的可愛いさを兼ね備えたパーフェクトプリティーガールある。師匠。このチンチクリンはなんね?」


「チ、チンチクリン!? タケルさん! なんなんですか! この人は!?」


俺はアンロンの事情を説明した。


「──といういことで、成り行きで弟子になったのだ」


キャンドル職人のアイカは俺に抱きつくアンロンが許せない。


「て、てめぇ! ちょっとタケルにくっつき過ぎじゃねぇか!? お、俺だってその……そんなにくっついちゃあ、いねぇえんだぞ! いや、別にくっつきたい訳じゃねぇけどよ。いや、本当はくっつきたいけどよ……バ、バカ! てめぇ何言わしやがんだぁッ!!」


「何にも言ってないある! 1人で盛り上がって滑稽的存在ね! お前はうるさいある。師匠と私は愛情的感覚で結ばれているある!」


「てめぇ! 愛情的だとぉ! お、俺だってなぁ! タ、タケルのことをなぁ……。……タ、タケルももっと嫌そうにしろよぉおおお!」


「慣れた」


「慣れるなぁッ!」


収集がつかなくなった場を収めたのは僧侶のリリーである。


「私達、女の子はギルドを結成していまして……」


TOG《タケル・ゼウサードお嫁さんギルド》の説明をすると、アンロンは即座に入会。俺は許可を出した。

このギルドは俺の許可無しでは入れないのだ。


アイカはプルプルと震えた。


彼女にとっては不謹慎かもしれないな。

複数の女の子が俺のことを慕う。

こんなギルド、彼女にとってはありえないだろう。俺を軽蔑するかもしれん。

とはいえ、ギルドは俺が作ったものではないからな。

こればかりはどうにもならん。

彼女とはここでお別れかもしれんな。


アイカは真っ赤な顔になって震えた。


意外な言葉が漏れる。


「は、入りたい……にゅ、入会したいよ」


彼女は目に涙を溜めた。


「で、でもよ。そ、それってタケルが許可しねぇと、は、入れないんだろ? 俺はその、みんなみたいに、か、可愛くないし、言葉使いだって職人気質だし、そ、その……結構、タケルにはキツいこと言っちまったしな……。お、俺なんかは、やっぱり入れないんだよな……」


アイカはチラリと俺を見た。

今にも涙がこぼれ落ちそうである。


やれやれ。こいつも甘えたか。


俺を手を差し伸べた。





「一緒に来るか?」





アイカは泣きながら俺に飛びついた。



「タケルーーッ!」



その涙は止まらない。



「タケルゥウウ〜〜!!」



俺は優しく頭を撫でた。


こうして、TOG《タケル・ゼウサードお嫁さんギルド》に新しいメンバーが2人増えたのだった。


「お前は2番弟子ある。1番は私ある」


「うっせぇ! お嫁さんギルドに弟子なんかねぇ! お、お嫁さんなんだよ俺はぁあ!」


やれやれ。騒がしくなったな。


俺がみんなに今後の話しをしようとすると、戦士ゴリゴスは浮かない表情を見せていた。


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