第六話 ギャップ萌え?


〜 惑わしの森 〜



 王様に直訴に赴き、元王太子ウィリアムの処遇を改めさせてから1週間が経った。

 その間、俺はダンジョンの拡張とDPダンジョンポイントの確保、そして戦力の増強に専念していた。


 惑わしの森は魔素に満ち満ちており、それは奥へ入るほど、北へ進むほどに濃くなっていく。


 ダンジョン以南の比較的弱い魔物は姿を減らしたが、奥地などはまだまだ魔物や魔獣が溢れかえっている。


 そのため、俺達ダンジョンの面々のレベルも、随分と上がったものだ。



 名前:マナカ・リクゴウ 種族:アークデーモン

 年齢:0歳 性別:男

 Lv:55 性向:29


 HP:1543/1543 MP:3211/3211

 STR:1842 VIT:1755

 AGI:2219 DEX:1498

 INT:3426 MND:3094

 LUK:52


 称号:【転生者】【迷宮管理人】【弄られし者フールアクター

 【拳豪】【妖怪の主】【殲滅者ジェノサイド】【罠匠】

 【交渉人】【詐欺師】


 固有スキル:【全言語翻訳】【無限収納インベントリ

 【魔法創造】Lv4【魔物創造】Lv5【百鬼夜行】Lv4


 スキル:【鑑定】Lv6【空間感知】Lv6

 【危機感知】Lv7【感情感知】Lv6【魔力感知】MAX

 【魔力制御】MAX【魔力吸収】Lv9【格闘術】Lv9

 【HP自動回復】Lv8【MP自動回復】Lv8

 【高速思考】Lv7【魔力纏い】Lv8【騎乗】Lv6

 【罠術】Lv7【話術】Lv4【建築】Lv5

 【身体操作】Lv5


 魔法:【身体強化】Lv8【念話】Lv6【飛行】Lv7

 【固有属性魔法】Lv2【固有結界魔法】Lv8

 【固有造形魔法】Lv4


 加護:【転生神の加護】



 名前:アネモネ 種族:ホムンクルス

 年齢:0歳 性別:雌雄同体(現在:女)

 Lv: 61 性向:14


 HP:1917/1917 MP:2841/2841

 STR:1211 VIT:1328

 AGI:3140 DEX:2552

 INT:2243 MND:2039

 LUK:521


 称号:【真日の従僕】【完璧な使用人パーフェクトメイド】【苦労人】

 【司令塔】


 固有スキル:【家事の心得】Lv9【明鏡止水】Lv7

 【叡智】Lv6


 スキル:【鑑定】Lv7【高速思考】Lv7【気配感知】Lv7

 【危機察知】Lv7【魔力感知】Lv7【魔力制御】Lv8

 【調合】Lv7【料理】MAX【清掃】MAX【裁縫】MAX

 【剣術】Lv4【隠密】Lv4【身体操作】Lv4


 魔法:【火魔法】Lv7【水魔法】Lv7【風魔法】Lv7

 【身体強化】Lv7【加速】Lv8【念話】Lv7



 名前:アザミ 種族:九尾の狐(固有種)

 年齢:0歳 性別:雌

 Lv:52 性向:11


 HP:1840/1840 MP:2137/2137

 STR:1652 VIT:1549

 AGI:1826 DEX:1479

 INT:1704 MND:1795

 LUK:204


 称号:【真日の従魔】【大妖怪】【真日の騎獣】【甘党】


 固有スキル:【変幻】【人化】


 スキル:【危機感知】Lv6【感情感知】Lv6

 【魔力制御】Lv7【魔力吸収】Lv6【HP自動回復】Lv4

 【MP自動回復】Lv4【魔力纏い】Lv5【威圧】Lv5

 【魅了】Lv5【舞踊】Lv6【身体操作】Lv2

 【鉄扇術】Lv4


 魔法:【身体強化】Lv5【念話】Lv5【飛行】Lv5

 【加速】Lv5【四属性魔法】Lv5【雷魔法】Lv7

 【闇魔法】Lv6【治癒魔法】Lv6



 名前:シュラ 種族:鬼人・酒呑童子

 年齢:0歳 性別:女

 Lv:49 性向:8


 HP:2468/2468 MP:1043/1043

 STR:2869 VIT:2747

 AGI:2036 DEX:1041

 INT:1023 MND:1167

 LUK:196


 称号:【真日の従魔】【大妖怪】【鬼神】【酒豪】【武闘家】


 固有スキル:【怒髪天衝】【鬼化】【呪詛】


 スキル:【危機感知】Lv5【身体操作】Lv6

 【魔力纏い】Lv5【魔力吸収】Lv4【HP自動回復】Lv6

 【威圧】Lv5【格闘術】Lv6


 魔法:【身体強化】Lv5【念話】Lv3【加速】Lv1



 いやー、育ったもんだ。


 称号も増えたり上位化したり、スキルや魔法も軒並み上がって、ダンジョン以北の森の魔物相手でも、あまり苦戦はしなくなってきた。

 まあ、奥地から最北の奴等は桁違いに強いらしいから、まだ挑戦はしていないけど。


 何だかんだで先延ばしになってたシュラのステータス確認の結果、やっぱり脳筋だということが判明して、それを口にした俺と大喧嘩になったことは余談だ。


 そういえば、新たに配下も何体か増やしたな。


 側近級を1体と、ダンジョン防衛用にも数十体。

 これらは皆、俺の固有スキルの【魔物創造】で産み出した。


 側近級以外はダンジョンの要所に配置して、そこの守護を命じている。


 で、新たな側近級の魔物なんだが……


「こちらにおいででしたか、かしら。周りの雑魚共は間引いて来やした。後はどうしやしょう?」


 茂みを掻き分け現れる、1人の偉丈夫。

 200センチは優に超える筋骨隆々な身体を、黒いシャツと白地のスーツで包み、短い黒髪を逆立てるように刈り上げ、視線で人を殺せそうな鋭い両目を、サングラスで覆っている。


 どう見ても堅気ではないこの男が、新入りの側近級配下だ。


 【天魔雄あまのさく】という、妖怪を超えた、カテゴリー分けするならば亜神となる存在をイメージして創造した魔物だ。


 本当はその親となる、【天逆毎あまのざこ】という素戔嗚尊すさのおのみことの猛気から生まれた女神を産み出したかったのだが、魔力が足りないのか神は創れないのか知らんが、失敗したのだ。


 天魔雄は天逆毎が自ら産み出した子で、後に九天の王となり、禍神や荒神を従えたという。


 その猛り荒ぶる様をイメージしながら創造したら、何故か極まった道をまっしぐらに往きそうな、その筋の男が産まれてしまったというワケだ。


「頭、どうなされたんで?」


 おっと、折角働いてくれたのに、無視して考え事はいかんね。


「ああ、なんでもないよ。それよりありがとうな【イチ】。怪我してないか?」


 名前はイチにした。

 白木拵えの長刀(長ドスともいう)を振るい、抜いては斬り斬っては捨てと、鬼神もかくやという立ち回りと、その侠客めいた口調から、有名な時代劇である座頭市を思い出したのが由来だ。


「勿体ねぇお言葉、ありがとうごぜぇやす。しかしここいらの雑魚相手じゃあ、怪我をしろって方が難しいってもんでさぁ。」


 恐ろしくも頼もしいことを言うイチ。

 実際返り血すら浴びていないのだから、脅威的だ。


 ちなみにそんなイチさんのステータスはこちら。



 名前:イチ 種族:魔人・天魔雄

 年齢:0歳 性別:男

 Lv:36 性向:2


 HP:1631/1631 MP:1439/1439

 STR:1627 VIT:2016

 AGI:1533 DEX:946

 INT:849 MND:1068

 LUK:87


 称号:【真日の従魔】【侠客】【剣豪】


 固有スキル:【神通力】【金剛】【天邪鬼】


 スキル:【気配感知】Lv4【身体操作】Lv5

 【魔力纏い】Lv4【HP自動回復】Lv3【身体硬化】Lv3

 【威圧】Lv4【剣術】Lv6【刀術】Lv7【縮地】Lv3


 魔法:【身体強化】Lv3【念話】Lv1



 これまたなかなかの脳筋ステータスっぷり。

 完全に、親分を護る若頭って感じ?


 ただ、剣技が物凄い。

 シュラと同じく近接戦闘型だが、彼はあらゆる剣や刀を使いこなし、目にも止まらぬ一太刀で魔物が両断されるのには、正直舌を巻いたものだ。


 レベルはまだ俺達に追い付いてはいないが、その剣技でシュラともガチで手合わせできるほどだ。


「頼もしいな。そんじゃキリも良いし、ここらで休憩して弁当でも食べるか。」


 そう言って近場の岩に腰を下ろし、無限収納インベントリから2人分の弁当と水筒を取り出す。

 イチは俺の傍らの地面に直接胡座をかき、俺の手から恭しく弁当を受け取った。


あねさんの弁当、謹んでいただきやす。」


 思わず苦笑する。


 イチは、アネモネのことを『姐さん』と呼ぶ。

 ちなみにアザミとシュラは『アザミの姉御あねご』と『シュラの姉御』で、マナエのことは『お嬢』と呼んでいる。


 そうして弁当を2人で食べながら、この後の予定を確認し合う。


 現在俺は、ダンジョンから辺境領の砦に向けて、ダンジョン領域を拡大している。ダンジョン機能の【領域拡張】で、惑わしの森の土地をダンジョン領域として支配下に置いているのだ。


 王国との話し合いの通りに砦の一部までを領域で繋ぎ、転移施設を創るためだ。

 これによって、ダンジョン最深部の都市【幸福の揺籃ウィール・クレイドル】への転移による出入りが可能になる。


「しかし、頭も面白いことを考えやしたね。ダンジョンに人間を住まわせようたぁ、初めて聞いた時は頭の中が真っ白になりやしたぜ?」


 ふふん、そうだろうそうだろう。

 それについては、隣接する王国がマトモだったらって、転生直後から考えてたからな。


 王国とお互いに協力出来れば、そうそう俺達が窮地に追われることも無かろうて。


「既に街は準備出来ているし、当面の衣食住に問題は無いはずだな。後は転移施設さえ出来て、今回作った物を配れば何時でも受け入れ可能だからな。イチにもこれから、沢山働いてもらうことになると思うから、頼むな?」


 そう言って、イチに水筒からお茶を注いで渡してやる。


「勿論でごぜぇやす。このイチ、身命を賭して頭とダンジョンをお護りいたしやす!」


 なんか契りの盃を受けるみたいに水筒のコップを受け取るんですけど。


 まあいいか……気にしないようにしよう。


 今日のところは、砦の直前まで領域を拡張するに留め、後日砦の指揮官立ち会いの下で砦内部まで繋いで、転移施設を創ることになる。


 既に姫さん経由で伝達も済み、砦の人間達への周知も徹底してもらっている。


「ふぅ、美味かった。ご馳走様でした。」


 弁当を平らげ、イチからも空の器を受け取って無限収納インベントリへ仕舞う。


「よし! あと半分くらいかな? 夕方までには終わらせよう。イチも、作業中の護衛を引き続き頼むぞ。」


「へい。お任せくだせぇ。」


 俺は立ち上がり伸びをしてから、再び作業へと戻るのであった。




〜 ダンジョン【惑わしの揺籃】 六合邸 リビング 〜



 その日の夜。


 夕食を済ませ、リビングのソファで寛いでいるところに、ダンジョンコア通信が入った。


 相手はもちろん姫さん――ユーフェミア王国のフリオール王女だ。

 というか通信用のダミーコアは、まだ姫さんにしか渡してないしね。


『夜分に済まない、マナカ。急ぎ伝えたいことが有ったものでな。』


 ふむ、なんざんしょ? なんだか不機嫌そうな声音ですけど?


『先ず移民団だが、正式な数が把握できたぞ。移民する民は840名で、治安管理並びに守護として騎士兵士併せて100名、行政管理として文官を60名で決定した。』


 なるほど?

 実際の住人は840名か。で、街の管理に160名国から派遣される、と。


「1000名ぴったりに調整したのか? 多少前後しても俺は構わなかったのに。」


 実際街は余裕を持って創ってある。寧ろもうちょい来ないかなーとか思ってたりもした。


『形式に五月蝿い者が多いのだ。書類上でも切りの良い数字の方が管理し易いしな。まあそれよりも、だ。』


 姫さんの声のトーンが一段下がる。

 こっちが本題らしいな。


『またぞろ貴族達が騒ぎ出してな。代官を選任すべしと。代官に街を取り仕切らせ、つつが無い運営と迷宮の主との橋渡しをすべし、と口々に喚き、挙句勝手に立候補まで始まり話を進めているのだ。』


 ふぅん? まったく、分かり易過ぎて泣けてくるね。


「どう考えても私腹を肥やす気満々だなぁ。大方この街での利益を、自分達の都合良く王国に流す気なんだろ? そんであわよくば、俺に近付いて迷宮の恩寵に預かろうって魂胆か。」


 例えば霊薬エリクサーとかな。


『父上も我も、マークおじ様もおおむね同じ見解だ。だが王国貴族の過半数が声を上げ奏上したのだ。簡単に無碍にもできぬのでな。急ぎマナカの意見が聞きたいとのことで、連絡したのだ。』


 なるほどね。こりゃあ、誰かがまた唆したな。

 きっと、再び起こるであろう王位継承争いへの布石のつもりだろう。


 先に元王太子ウィリアムの処遇を変更した影響で、連座しての粛清を逃れた元王太子派の残党。

 それらの宙に浮いた奴等や、未だ静観し中立を保っている連中を傘下に治めるべく、動き出したって感じだ。


 俺としては、第2王子以下の王子達の為人ひととなりを知った今では、そんな下らない権力争いなどして欲しくないわけで。


「うん、分かったよ姫さん。明日の昼頃に着くように、アザミを特使として行かせる。姫さんは、その頃に合わせて議会を招集できるように調整をお願いしたいんだけど、いいかな?」


 前は当日の突発だったから、散々怒られちゃったからね。ちゃんとお伺いを立てましょうとも。


『いや待て、明日は無理だ。急過ぎる。明後日にしてくれないか? それなら何とかなると思う。』


 ありゃ、明日でも早いの? しょうがないなぁ。


「OKだ。明後日の昼頃に、王城の城門に行かせる。受け入れの準備を頼むよ」


 姫さんの返事を待つ。


『分かった。父上には早速その旨伝えておく。マナカ達には重ね重ね面倒を掛けて、本当に済まない。明後日はよろしく頼む。』


 姫さん、落ち込んでるねぇ。まあ無理もないけど。


『ああ、それと。マナカ、弟達のこと、改めて礼を言わせてくれ。』


 うん? 弟達?


「弟達って言うと、ユリウスやミケーネのことか? 何かあったのか?」


 思い当たるのは、一週間前の晩餐会でのこと。

 2人の弟達がそれぞれに抱える悩みを聞き出し、姫さんに教えてやったことだ。


『ああ。ユリウスとはしっかり話し合えたと思う。傲慢な振る舞いも鳴りを潜めたし、今からお前の迷宮に行くのを楽しみにしているようだった。ミケとは家族皆で話をした。


 特に父上が直接体質に理解を示され、謝罪をされたのでな。ミケも戸惑ってはいたが、我ら家族をまた受け入れてくれたようだ。それとな?』


 姫さんの言葉は続く。


『マギーが、早く話の続きを聴かせろと騒いで敵わんのだ。つい先程までも、我がお前に連絡を取るのを待ち構えていて、部屋から追い出したほどだ。』


 あーらら……マギーよ、マジか。


「そ、そりゃあまた、大変だったな……お疲れ様です。弟達は良かったじゃないか。俺も心を痛めて姫さんを説教した甲斐があったな。」


 そんな明るい会話を二三続けて、姫さんとの通信を終えた。


 貴族達のことは兎も角として、王家の家族問題が解決に向かっているのは何よりだったな。


 そして一息着こうと、ビールに手を伸ばした、その時である。


――――殺気!?


 慌てて振り向き、身構えると。


「お兄ちゃん、って、だれ……?」


 目を据わらせ、両手を組んで仁王立ちする我が家の天使、マナエさんが居た。


「ま、マナエさん!? どどどうしたんだ、そんな怖い顔をして? ほほほら! いつも通りに、ニコニコ笑ってくれないかな……!?」


 お、恐ろしい……! いつも笑顔だから余計にギャップが!!


「お兄ちゃん、正座ッ!!!」


 は、はいいぃぃぃ!!!


 即座に床に正座し、背筋をピンと伸ばす。

 うん、冷や汗が止まらない!


 誰だよ、マギーは第2の妹だなんて言って浮かれてた馬鹿野郎は!?

 はい! 俺でしたッ!!


「お兄ちゃん!? やっぱりお兄ちゃんの外出中に、あたしが感じた嫌な予感は当たってたんだね?! さあ! 白状しなさーいッ!!」


「ちちち違うんだああぁぁ!? あれは雰囲気に飲まれてというか、圧倒されてというか――――」


「言い訳はいいから!! 詳しく話してッ!!!」


「はははははいいいいぃぃぃっ!!!???」


 今日も賑やかな六合家。

 主の俺に助け舟は渡って来ず、騒がしく夜は更けていったのだった。


 いや、誰か助けてよ!? なにみんな無視してるのよ!?


 余談だが、天魔雄のイチはお酒が飲めず、オレンジジュースを気に入ったようだった。

 うん。助けてくれてもいいのよ……!?



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