最悪な悪霊が誕生するまで③(終)

「クソ、間違いなくあいつだ! あの憎たらしい面は忘れるはずがない! 僕をラリアットで間接的にぶっ殺しやがったやつだ! 警察にも捕まることなく堂々と生きてやがる! 許せない!」


 怒りがふつふつと湧いてくる。


「こうなったら、僕が自ら審判を下して地獄に落としてやるぜ。Go to hell だ!」


 男が目の前までやってきた。


「あー、さっきなんでラリアットなんてしちゃったのかなぁ? なんかムカついてラリアットしちまったんだよなぁくそ。まあゴミ人間を掃除出来たってことで良しとしとくか」


は? ただ、ムカついたからラリアットしただって!? 僕の命を何だと思ってやがる! 絶対に許さないぞ!


 自分はサイコキネシス的な何かを使って近くの自動販売機を空中に浮かせた。


見てろよ、俺もお前みたいに頭をパッカーンとしてやるぞ! いや、それ以上にひどい目にしてやるぞ!


「あーあ、なんかムカつくわー。って、ええ!? なんで自動販売機が空を飛んでるんだ!?」


 そしてサイコキネシスを使って空中から屈強な男へ向けて自動販売機を落とす。


「これでも食らえ! クソやろう!」

「こっちに自動販売機が飛んできてるのか!? うっ、ぐはっ…!」


 自動販売機は見事にクリーンヒットして、そのまま屈強な男は地面に倒れて自動販売機の下敷きになってしまった。

 わざわざ空中に浮かせて重力を使って加速までさせた。


「へへへ。俺をその辺のゴミみたいに思って殺すからそうなるんだよ! 馬鹿め! はー、やることやったあとは気持ちいいね!」


 こうして自分は現世の恨みを晴らすことになった。

 だがしかし…。


「あれ? おっかしいな…。僕、全然天界に帰れないんだけど? 一体どうなっているんだ?」

「そのことなんですが…」


 脳内にテレパシーが送られてくる。


「どうしました?」

「実はまだ恨んでいる奴がいるのかもしれないですね。だから天界に戻れないのかも」

「そうなのか、僕はまだ恨んでいる奴がごまんといるのか」


 言われてみると思い当たる節がたくさんあった。

 ネットのレスバで自分の悪口を言ったやつや学校でいじめてきたやつだ。

 それにさっきのヤブ医者も許せない。というか、よくよく考えたら自分を殺したのはヤブ医者ではないか。


「もう全員許さない! こうなったらとことんやってやるぜ!」


 こうして歴史上でもっとも最悪な悪霊が誕生することになった。

 その後、恨んでいた人をすべて呪い殺して回るが天界には帰れなかった。

 なぜなら、人ではなく世界そのものに対して恨みがあったからだ。

 後に世界にとんでもない大厄災を何度も振り撒く。

 そう、人類が滅亡するまで。

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