最悪な悪霊が誕生するまで②

「ええ、悲しいお知らせがあります。あなたは今死にました!」

「いや、知ってますよ! 映像を見れば誰でも分かりますよ!」

「あなたの体は完全に死んでしまったようです」

「もう言わなくていいよ! それよりも死んだ後ってどうなっちゃうの!?」

「あなたは一旦幽霊になるみたいです」

「なんで!?」

「現世に恨みを持った人間がいるでしょうからね」

「もしかして、さっきの屈強なラリアット男か!?」

「その通りです。その屈強なラリアット男を倒しに行かなければなりません」

「幽霊の姿でどうやって倒すの!? ギャーー!!! 無理無理無理!」

「はぁ…。うるさいですよ?」

「すいません…」

「呪い殺す、もしくはポルターガイスト現象で倒すんです」

「なるほど」

「そうすればあなたは晴れて幽霊を卒業できるってわけです」

「分かりました」

「それでは早速元の場所に戻っていただきます。さよならー」

「ええ!? 展開が早いって!」


 自分はまた現世へと戻っていった。


「ここはどこだろう?」


 自分は屈強なラリアットを食らった、あの場所に立っていた。


「なるほど、ここからリスタートって訳かぁ。あとなんで自分は服を着ていないんだろうか? まあ死んでるしどうでもいっか」


 自分はそのままトボトボと歩く。けれど、なぜか周りの視線が気になる。

 何かみんなが自分のことを見ている気がする。


「キャー! 全裸の男がいるわ! へんたーい!」

「え、どこにそんなやつがいるんだ?」

「お前だよ、変態!」


 目の前に警察官が立っていた。


「え、自分のことが見えてるんですか!?」

「何を言ってるんだお前? とにかく逮捕だ!」


 警察官が手錠を出す。


「はい、逮捕! 話は署で聞くよ、変態くん。 ってあれ!?」

「ん!?」


 手錠が自分の体をすり抜けた。そして次の瞬間に自分の体は透明になった。


「キャー! って、いなくなったわ!?」

「え? 俺は夢でも見てたのか!? たしかに目の前に全裸の男がいたような気がしたんだが…」

「え、どうなってんの?」


 すると、誰かが自分の脳みそにテレパシーを送る。


「あ、すいません。ステルスモードにしておくのを忘れてました」

「は?」

「でも安心してください。これでみんなの視界に映らなくなったはずですから」

「いやいや、もうダメでしょ。僕は死んだあとも恥の上塗りをしたんだぞ!? これが許されるか!」

「もう、過ぎたことは気にしなーい! 器の小さい人は嫌われますよ?」

「ぐぬぬ…。分かったよ」

「とりあえず頑張ってくださいね~」


 天使のお姉さんの声が途切れた。


「まあ、さっさとラリアット男を探すか。それにしても本当に体は透明になったんだよな? 色々試してみるか…」


 前方から人が歩いてくる。その人の目の前まで自分は近づく。


「よし、おちんちんびろ~ん!」

「キャー! 汚ならしい! それに小さい! ポークビッツじゃないの!」


 ビンタをされるもすり抜ける。そしてまた透明になる。


「え? なんで!?」

「あなたが変なことをするからですよー」


 脳内にまたテレパシーが送られる。


「ふざけてるとステルスモード解除しちゃいますからね。死んだあとも恥をかきたいのですか?」

「すいませんでした。真面目にやります」

「よろしい」


 テレパシーは途切れる。


「はぁ…。ステルスモードを解除するなんてひどいなぁ…。つか、ポークビッツはさすがに傷付くわ。もう何もかもが嫌だからさっさと仕事を片付けて転生するか」


 すると、前方からさっきのラリアット男がやってくる


「ちょっと待って。ラリアット男がきた!?」

「フンッ!」


 屈強な男は堂々と自分の前方を歩いている。

 恨みを晴らす時がきた。

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