史上最低のライバル②(終)
「よー、久しぶりだな! 俺のライバルよ!」
「おう! あの頃のように俺が余裕で勝つぜ!」
「ところでお前ほどの男が高校3年間で全国大会に来なかったとはな。怪我でもしてたのか」
「うっ…。まあ、そんなところだな!」
「そうか、じゃあハンデを付けた方が良いかな? まだケガが完全に治ってない可能性もあるからな笑」
「バカ言え! 俺はお前何かには絶対負けねぇよ! むしろケガしてるぐらいが丁度良い!」
「そうこうなくちゃ! 早速勝負してみるか!」
「あー、そうだな!」
そして二人は色んな陸上の競技で戦ったのだった。
だが、終わってみれば自分の全勝だった。
「おい、お前。これは冗談なんだよな…?」
「はぁはぁ…。何が…?」
「どこかまだケガしてんのか…? どこが悪いんだ…? 教えてくれねぇか…?」
「俺に触るんじゃねぇ…!」
「え…?」
ライバルに触ろうとしたら払い除けられた。
ライバルは圧倒的な実力差を見せつけられて激しい焦燥感に駆られていた。
クソ…! なんで俺よりも少し弱かったこいつがこんなに強くなってるんだよ…! ふざけんなよ…!
ライバルはうつ向いて暗い顔をしていた。この時、ライバルはもう2度と実力が縮まることがないと悟った。
そして、自分はびっくりしていた。普通はここまで落ち込むだろうか?
ケガしているにしても、もうちょっとやれると思っていた。
それに自分の勝利を讃えてくれると思っていた。
そして自分はある結論に達した。真実を確めるために聞いた。
「おい、お前高校三年間で何やってたんだよ」
出来れば嘘であって欲しいと思った。
「あ? そんなこと聞いてどうするんだよ」
「お前、それケガじゃないんだろ…? なぁ…!」
「だからどうした! うるせぇ!」
どうやらこれがライバルの今の実力だったらしい。
もう昔の強くてリスペクトしていたライバルはどこにもいない。
自分はライバルに追い付きたくて必死に日々練習や特訓に明け暮れていた。
そして自分よりも更に強くなっているライバル像を想像しながら勝ちたくて死ぬほど辛い特訓をしてきた。
今のライバルの弱さに拍子抜けしてしまった。
どうやら自分はとんでもなく強くなりすぎてしまったらしい。
「ケガじゃないのにどうしてこんなに弱いんだよ! お前ふざけてんのか!」
「くっ…」
「お前、俺のライバルだろう!? だったらもっと強くなっていないとおかしいだろう!」
自分は気がついたら怒っていた。もう一度あの頃のように勝負したいという想いが強かったからだ。
想像上のライバルはこんなもんじゃなかった。
自分よりも強かったのが当たり前だった。でもこの体たらくは何なのだろうか?
「なんなんだよ、この3年間マジで何をしてやがった…?」
「お前と一緒で特訓と練習をしたんだよ」
「お前嘘付いてんじゃねぇぞ! お前が真面目にトレーニングを積んでたら、今の俺でも勝てないぐらい強いはずだろ!」
「ぐっ…」
「中学卒業した時、一緒に誓いあったよな?
お互い頑張りまくって頂点目指そうぜって! なぁ、忘れちまったのか…!? あの時の誓いは嘘だったのか…!?」
「はぁ…」
ライバルは一呼吸置いて、こう言った。
「なんだよ。頑張るとかなんとか言っちゃってよぉ。その歳になってまだそんなこと言ってるのか? ダセェな…」
ライバルはスカしてこう言ったのだった。これには自分もブチキレた。
「おい、お前何言ってやがる…。どう考えてもお前が一番ダセェだろ…!」
「は? もしかしてそれ、俺に向かって言ってるの?」
「お前以外にいないだろうがよ…! 昔のお前はこんなんじゃなかっただろう! 一体どうしちまったんだよ!」
「はぁ、もうなんかどうでもいいわ。お前うぜぇー」
「え…?」
「それよりよぉ、お前はもうこれ以上強くなるなよ。それ以上強くなってどうするんだよ。俺とライバル関係を続けたいならもう練習するな」
「お前は本当に最低だよ…。何がライバルだ、ただのクソ野郎じゃねぇか…。2度と俺の前にその面を見せるな…!」
「うっ…」
これからも切磋琢磨し合いながらお互いに高めあっていけると思っていた。
でももうライバルはすっかりクズ人間に変わっていた。
そのまま二人は疎遠になっていたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます