悪の研究員、見知らぬ人に人体実験をする①

 私は知らない人間に対して悪さをすることが好きなのだ。

 そして今日もとんでもなく悪そうなことを思いついた。

 さてと今日はそこら辺でお散歩をしているジジイとババアに極悪非道なことをしてやるわ。


「お、あんなところに足腰の悪いおばあさんがいるぞ! 近づいて悪さをやってやるぞ!」

「なんじゃ?」

「食らえ!」

「うわああああ!」


 おばあさんの腰に電気が落ちたような衝撃が走った。


「な、なんじゃこれは!?」

「どうだ!」

「すごく元気になったわい! 背中を伸ばせるのはものすごく気持ちいいのう!」


 なんと腰を曲げたおばあさんが背筋がピンとして急に元気になったのであった。


「ありがとのう!」

「ハハハ、悪さをすると気分がいいねぇ!」


 おばあさんは軽快なステップで家へと帰っていった。


「よし次は病院に行ってやるぞ! なぜなら病院にはなぁ、寝たきりの老人がたくさんいるんだよぉ! その寝たきり老人をすべて改造してやる!」


 早速病院に着く。


「さてと、計画の実行だぁ!」

「なんじゃ?」

「ケッケッケッ! お前をさらう!」

「うわー! 誰か助けてぇ!」

「誰も助けに来ないよぉ! なぜならステルス機能を使っているからだぁ!」


 そして病院の寝たきり老人たちをとある施設へと運んでいった。


「佐竹さーん、お身体の調子はどうですかー? って佐竹さんがいなくなってる!? 佐藤さんもいない!?」


 病院は老人達が一斉に消えてパニックになっていた。

 そして今まさに研究室で人体実験が行われようとしていた。


「お前らぁ! 拘束されているから、この私に手も足も出まい!」

「そんなぁ、やめてください!」

「私達はどのみち老い先短い老人じゃ!」

「うるさいぞ! そろそろお前らの身体を改造してやる! 食らえ!」

「うぎゃあああ!」

「私はとっても悪いことをしてやった!」


 すると寝たきりだった老人達が急に立ち上がった。


「これはなんとすごい! 全く動かなかった体が動けるようになったぞ!」

「ワシもじゃ! なんなら若い頃よりも身体がよく動く! 」

「以前より全然体が軽い! というより今まで生きてきた中で一番体が軽いかもしれない!」

「やはり悪さをすると気分がいいなぁ」

「ワシら、家に帰っていいですか?」

「さぁ帰れ帰れ! もうお前らは用済みだよ!」


 老人達は家に帰っていった。


「おい、孫」

「じいちゃん!? 寝たきりなのになんでピンピンしてんの?」

「孫よ、身体が元気になったから競争してくれ」

「おいおい、いくらなんでも陸上部現役の俺には勝てないよ? それにいくら身体がピンピンしてるとはいえ年齢から考えても俺には勝てないよ? それでも勝負する?」

「おう」


 そのおじいさんは陸上部の孫と100 M 走と1500M走をした。

 そしてぶっちぎりでおじいさんが勝ったのであった。


「ハハハ、勝ったわい!」

「ハァハァ…。こんなことありえねーだろ…。なんで陸上部のエースの俺が負けた…!? 俺、毎日たくさん陸上の練習してんのに…!」


 孫はおじいさんに負けた。悔しすぎて大泣きしてしまった。

 その後、陸上競技への自信を喪失して陸上部を辞めてしまったという。


「そうか、孫が陸上競技やめたのか。じゃあワシが代わりに陸上やってみっかな!」


 それにしても陸上部の孫よりも足が速くなるなんてすごい。

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